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恵菜VSリアナ ~パート1~

『ファイアーボール!』


 まず先手を取ったのはリアナだった。グランの合図とほぼ同時に、リアナは牽制目的で最下級のファイアーボールを発動する。ファイアーボールの弾速は最下級魔法の中でも遅い方なのだが、リアナの放ったファイアーボールはなかなかの速さだった。

 しかし、いくら速いといっても、何度もユーリエと戦った事のある恵菜からすれば普通の速度だ。飛来する大きな火の塊を、恵菜は横に飛んで躱す。


『フレイムピラー!』


 恵菜が躱すのを予測していたのか、リアナはすぐさま次の魔法を発動する。フレイムピラーは中級の火属性魔法であり、発動した所から目標に向かって飛んでいくファイアーボールに対し、フレイムピラーは術者が指定した場所に直接効果が現れる地点指定型である。


 リアナの詠唱が聞こえた瞬間、恵菜は反射的にバックステップでその場を離れる。直後、先程まで恵菜がいた地点から火柱が立ち昇った。


(あ、あれ? 思ったより威力が強いような……)


 リアナが発動したフレイムピラーを見た恵菜の顔に、若干困惑の表情が混じる。恵菜の目の前に立ち昇る巨大な火柱は、普通に詠唱して発動させるフレイムピラーと遜色のない威力を持っているに見える。


(これ、直撃したら怪我じゃ済まないような――って!?)


 命中すれば一撃で勝敗が決してしまいかねない威力を持つリアナの魔法に、恵菜は冷や汗が流れる。だが、その一瞬の思考のせいで、恵菜は自分の真後ろに出現していた火の壁に気付くのが一歩遅れてしまった。

 恵菜がフレイムピラーも躱した時、リアナは追撃の手を緩めていなかった。リアナが無詠唱で発動したのは下級の火属性魔法のファイアーウォールで、通常は防御に用いられる魔法なのだが、リアナは防御目的ではなく、相手の退路を塞ぐために用いたのだ。


「もらったわよ!『ファイアーボール!』」


 恵菜の退路が塞がれたのを見て、リアナは一気に勝負を決めるかのように複数のファイアーボールを発動する。展開されたファイアーボールは逃げる隙を与えないように、あらゆる方向から恵菜に迫ってきた。


「エナさん!」


 明らかに逃げ場のない恵菜を見て、障壁の外側にいるヒルデが悲鳴のような声で恵菜の名前を叫ぶ。


 だが、リアナやヒルデが想像した結果通りにはならなかった。


 今まで魔法を使う様子を見せなかった恵菜の周囲に、何の前触れもなくアクアボールがいくつも出現する。それらは恵菜に向かってくるファイアーボール目掛けて飛んでいき、一つ残らず相殺してみせた。


「はぁ!?」


 目の前で起きた出来事に、リアナは驚きの声を上げる。恵菜が防御魔法でファイアーボールを防ぐ可能性は考慮していたが、攻撃魔法で全て撃墜するとは思っていなかったらしい。そのあまりにも予想外の結果に、今まで続いていたリアナの連続攻撃が途切れる。

 そのチャンスを逃さずに、今度は恵菜が反撃に出た。


「!」


 突然、リアナの周囲に水の壁が出現する。ファイアーウォールと同じ防御魔法のアクアウォールで、リアナと同じように恵菜も無詠唱で発動したらしい。しかし、恵菜が発動したアクアウォールは円筒形で、リアナを完全に取り囲むように展開されていた。


(上から逃げるのは……無理か)


 リアナは自分の真上を見上げ、どこか脱出できそうな場所がないか探すが、ご丁寧に真上も完全に塞がれている。他に脱出する方法があるとすれば、アクアウォールの防御力を上回る魔法で打ち破ることだ。


『フレイムランス』


 リアナもその方法を思いつき、アクアウォールよりランクが一つ上のフレイムランスを発動する。リアナの近くに出現した炎の槍は水の壁にぶつかり、蒸発した水が湯気となって周囲を覆う。


「なっ!?」


 湯気が晴れて視界を取り戻したリアナが見たのは、さっきと何ら変わりなくそそり立ったままのアクアウォールだった。これだけの威力なら大丈夫だろうと放ったフレイムランスがアクアウォールを打ち破れなかったことに、リアナは再び驚きの声を上げる。属性の相性が悪いとはいえ、中級魔法が無詠唱で発動した下級魔法に負けたのだから無理もない。余程アクアウォールに厚みがあるのだろう。


 フレイムランスで破ることができなかったとなると、それ以上の威力を持つ魔法を使うしかない。かといって、先程のフレイムランス以上の魔法をこの狭いスペースで発動すれば逆にリアナの方が危ない。現状、リアナが取れる有効な打開策はなかった。


(流石にこの状態で上級魔法でも撃たれたらまずいわね……)


 もしここで恵菜が強力な魔法をリアナに向かって発動した場合、リアナにそれを避ける術はない。防御魔法を使うか全身を魔力で覆うかすれば、多少は威力を和らげられるだろうが、威力の高さによっては気休めにしかならない。


 だが、リアナの周囲を取り囲んでいるアクアウォールはかなりの強度を誇っている。もし恵菜が強力な魔法でアクアウォールごとリアナを倒そうとすると、アクアウォールの存在が邪魔になり、リアナに魔法が到達する時にはかなり威力が減衰しているだろう。恵菜の使う魔法の程度によるが、そうなった場合リアナが何らかの防御を施せば耐える事ができるかもしれない。

 また、恵菜がアクアウォールを解除した直後に魔法を放ってくる可能性もあるが、そうなればリアナの動きを制限するものがなくなり、魔法を避けたり相殺したりすることが可能となる。出が早い魔法をカウンターで放つこともできるだろう。


 そう判断したリアナはどの状況になっても対処できるように、一先ず自分の体を魔力で覆って強化を施す。ここにアクアウォールがそのままの状態で詠唱が聞こえてきたのなら、加えて防御魔法も発動するつもりだ。また、アクアウォールがなくなった場合に備えて、リアナは此方からも仕掛けられるよう、ファイアーボールを発動していつでも放てる状態を整える。


 迎え撃つ準備が整い、リアナが何か状況の変化が起きるのを待っていると、アクアウォールが徐々に衰え始めた。

 自らの予想の一つが当たったことに、リアナはほくそ笑む。カウンターで魔法を叩き込んで恵菜に一泡吹かせてやろうと、リアナはファイアーボールを恵菜に向けて放つ準備をする。


 そして、ついにアクアウォールの所々に穴が開いて消えていく。


「……え?」


 だが、水の壁が消えたその先に恵菜の姿はなかった。


「ど、どこに……」


『アクアボール』


「――っ!?」


 恵菜の姿を探そうとしていたリアナの後ろから聞こえてきた詠唱。背後を取られたことに気付いたリアナは、慌ててその場から逃げようとするが遅かった。


「ぅぐぁ!」


 アクアボールを背後から受けたリアナは吹っ飛ばされ、うめき声を上げながら地面を転がる。


 恵菜が発動したアクアウォールの目的は、リアナの足止め以外にもう一つあった。それはリアナの視界を奪う事である。

 円筒形のアクアウォールに包まれれば、リアナの視界は三百六十度水の壁で塞がれる。また、アクアウォールは水が絶えず上へと立ち昇ることで形成されており、水飛沫も舞っている。それに壁の分厚さも相まって、水の壁の内側にいるリアナからは外側がどうなっているのか分かりづらい。そんな状態では、恵菜が真後ろに移動したところで簡単にバレはしない。


 リアナも魔力で目を強化していれば、水の壁を通して恵菜の魔力を見つける事ができたかもしれない。だが、リアナはアクアウォールが足止め以外の目的で使われているとは思わず、恵菜の作戦に気づくことができなかった。その結果、恵菜の魔法を至近距離で真後ろから食らう形になった。


恵菜は相手の視界を遮ることが得意?


次話は明日(遅くても明後日)に更新予定です。

サブタイトルを変更いたしました。(2016/02/05)

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