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パーティ仲間集合

 グランの仕事部屋を出た四人は、ギルドに隣接する訓練場へと移動するため、リアナ、恵菜、グラン、ヒルデの順に階段を下りていく。


「げっ……」


 だが、階段の途中で何かを見つけたリアナがいきなり固まり、全員がその場で立ち止まる。


「どうかしたんですか?」


 ぶつかりそうになった恵菜が様子のおかしいリアナを見て、何があったのかを確認するために、リアナの視線の先を見つめる。

 そこには、昨日リアナと共にギルドへ来ていたケインスと、新たに二人の男女の姿があった。


「ガンザに、クレリア……」


「おっ、リアナがいたぞ」


「探しても見つからないと思ったら、二階にいたのですね」


 二人の姿(特にクレリア)を見つけたリアナが、一瞬悪い事をしている所を見つかった犬のような表情になる。だが、すぐにハッとしたリアナは、ばつが悪そうにしているケインスのいる所まで走っていく。


「ちょ、ちょっとケインス! 何でバラしちゃったのよ! 二人で何とか誤魔化そうって言ってたじゃない!」


「いや、俺も何とか頑張りはしたんだが、クレリアの追及が……」


「うふふ、リアナさんの説明は少し不自然でしたからね。ケインスさんに尋ねてみれば、案の定、リアナさんが言っていなかったことが次々と出てきましたよ?」


「……リアナ、よくあの追及を耐えたな」


「そ、そこは死んでも隠し通しなさいよー!」


 遠い目をしているケインスに対し、かなり無茶な要求をするリアナ。だが、クレリアがリアナの方に笑顔を向けたことで、リアナは「ひっ!」と悲鳴のような声を上げて、顔を一瞬で引き攣らせる。


「さて……私やガンザさんに何の説明もせず、冒険者の皆さんに迷惑をかけてしまうことすら考えずに、自分勝手な行動に走ったリアナさん? 何か言いたいことがあれば聞きますよ?」


「…………」


「あらら? 黙っているということは、弁解することは何もないということですね?」


 リアナは知っている。ここで何か弁解をしようとしても、さらに自分の立場が悪くなるだけだということを。

 しかし、黙っていても立場が良くなるわけではない。


「まさかケインスさんが付いていながら、こんなことになるとは思っていませんでした。さて、リアナさん? いつも通り、覚悟はできていますね?」


 ずっと黙っているリアナを見て、説教される覚悟ができていると判断したクレリアは、リアナの近くまで歩いていく。


「……え、ええ、説教されることは分かってる。けど、それは後回しにしてもらえないかしら」


「? 何故ですか?」


 だが、今まで黙り込んでいたリアナの言葉に、クレリアは不思議そうな顔をしながら首を傾げる。


「……約束をしたから」


「約束? それは一体誰と……」


「あの子とよ」


 そう言ってリアナが指し示す方向に顔を向けるクレリア。そこには、さっきから階段の途中でリアナ達の様子を窺っている恵菜(+他二名)の姿があった。


「あの子が、リアナさんと?」


「そうよ」


 リアナの口から出た肯定の言葉。だが、クレリアはリアナの言っていることが説教から逃れるための方便だと考えたのか、訝しげな表情でリアナを見つめる。

 しかし、リアナは依然として顔を引き攣らせながらも、瞳にはしっかりとした力が宿っており、真っ直ぐとクレリアを見つめ返している。普段と違うその姿に、クレリアはリアナが嘘を言っているように思えなかった。


「……リアナさんがあの子と交わした約束は、何なのですか?」


「ごめん、ここで説明はできない」


「な、何故ですか?」


「……あの子がそれを望んでいないからよ」


 リアナと恵菜の約束が何なのか尋ねるクレリアだったが、リアナから帰ってきたのは不透明な回答だった。今がどんな状況になっているのか理解できないクレリアは、恵菜とリアナの間で視線を行ったり来たりさせる。


「無茶な話なのは分かってる。それでも、今だけはこれで納得してちょうだい」


 リアナがそのまま正直に、恵菜と勝負をすることになったと説明すれば、今度は当然その理由が何なのかに注目が集まる。そこで今までの経緯を話せば、クレリアも納得できるのかもしれないが、リアナは恵菜との約束をしっかりと守っていた。


「説教なら後でいくらでも受ける。だから、お願いクレリア」


 これがいつものリアナであれば、クレリアは問答無用でリアナを宿まで引っ張っていき、数時間にも及ぶ説教をしていただろう。だが、どういうことか頭を下げてまで頼み込むリアナの姿を見て、クレリアはいよいよどうするべきか判断に困ってしまう。


「いいじゃねえかクレリア、今だけは説教するのを勘弁してやれよ」


 そんな時、今まで二人の様子を見ていたガンザから、リアナを支援するような声が投げられた。


「ガンザさん?」


「リアナは意外と頑固なところがあるからな。こうなっちまったら俺らが何言っても聞かねえと思うぜ」


「で、ですが……」


「それに、リアナは別に説教をするのをやめてくれって言ってるわけじゃあねえ。少し先延ばしにしてくれっていうだけだ。いくらでも説教受けるって言ってるわけだし、後で目一杯叱りつけてやりゃあいいだろ、な?」


 最後はリアナに対しての言葉だったが、それに対してリアナは少し躊躇いながらも力強く頷く。説教の時間が延びるというのは嫌だが、今から説教されて勝負ができなくなるのはもっと嫌だったのだろう。


 しばらく自分の中で葛藤するように悩んでいたクレリアだったが、体の向きをリアナから恵菜の方へと変える。


「――一つ、あなたにお聞きしたいのですが」


「は、はい」


 話を振られると思っていなかった恵菜は、少し戸惑いながらもクレリアの視線を受け止める。


「あなたとリアナさんの約束、それはあなたの意思に反して、リアナさんが無理やり約束をさせたものですか?」


 もしここで、恵菜が約束を押し付けられたと答えることがあれば、クレリアは有無を言わせずにリアナを引っ張っていくだろう。クレリアの問い掛けに、一瞬だけ考え込むような素振りを見せる恵菜だったが、すぐに答えを出す。


「いえ、私の意思で決めました」


 勝負をする理由となったのは、恵菜が本当にフェンリルを追い払うだけの力を持っているのかを示すため。もし恵菜が勝負を断ったとしても、リアナが恵菜の話した事を信じなくなるというだけだ。勝負を受ける事自体に強制力はなく、恵菜は断ろうと思えばいくらでも断れたはずだ。

 それに、最終的に勝負を受ける事を決めたのは恵菜自身の意思によるものである。


 恵菜の言葉を聞いた後も、クレリアは恵菜の様子をじっと見つめていたが、諦めたようにため息をつく。


「はぁ……分かりました。今から説教をするのはやめておきましょう」


「あ、ありがとうクレリア!」


「で・す・が、後で覚悟はしておいてくださいね?」


「は、はい……」


 クレリアの迫力に、思わず顔が強張るリアナ。恵菜との勝負の後に、いつも以上の説教が待っているのは覚悟しておかなければならないだろう。


「ではリアナさん、後で宿まで来てくださいね」


「できれば早く来た方がいいと思うぜ。 遅れるとその分、クレリアが怖えぞ?」


 クレリアとガンザがそう言い残し、ギルドから出て行く。ケインスもその後を追おうとするが、扉の前で立ち止まる。


「リアナ、その約束ってのはフェンリル絡みか?」


「……言えないわ」


「……そうか」


 ケインスの問い掛けに対し、リアナは否定でも肯定でもない答え方をしたが、ケインスは何か納得したかのように、そのままギルドを出て行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「――は~……ほんと、ここで説教なんて始まったらどうしようかと思った」


 ケインス達がギルドを出て行き、その姿が見えなくなると、それまで圧し掛かっていたプレッシャーから解放されたのか、大きく息を吐きながらリアナが胸を撫で下ろす。


「あの……」


「ん? ああ、ごめん。さっきのはあたしと同じパーティの仲間よ」


「いえ、そうじゃなくて、仲間の人達に何も説明しなくてよかったんですか?」


 後ろで話を聞いていた恵菜は、リアナが後で説教されると聞き心配になったようだ。もっとも、自業自得といえばそれまでなのだが。


「いいのよ。最初から説教覚悟だったんだし。それに、あなたと約束したからね」


「リアナさん……」


「さっ、そんなことより、早く訓練場に行きましょ」


 この話は終わりだという様に、リアナは訓練場のある方へ向かってさっさと歩いていく。その後を追う様に、恵菜とグラン、ヒルデの三人も訓練場へと向かうのだった。


ヒルデさんとクレリアさん、仲良くなれそう。


次話は明後日に更新予定です。

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