最終話 魔王
「こ、ここは?」
「ヒヨリ様、お目覚めになりましたか。」
「フラン?」
「はい。フランです。」
「あれ、なんか記憶が曖昧なんだけど・・・」
「勇者との戦いからお帰りになられたヒヨリ様はそのまま意識を失われてしまったのです。おそらくは魔力切れかと思いますが。」
それもそっか。魔力量が1割を切った状態で、魔力消費の多い魔法を複数使ったわけだもんね。戻ってくるときの[テレポーテーション]で魔力が尽きちゃったんだ。
「そっか。どのくらい経ってる?」
「3日でございます。戦後処理については四天王が対応しておりますのでご安心ください。人間と魔族との共存で話が進んでおります。」
「それは良かった。」
「今後は無茶をなさらないでくださいね。ヒヨリ様がいなくなってしまうと残された我々は路頭に迷いますので。」
「そうだね。今回はごめんね。何も言わずに戦いに行っちゃって。」
「いいえ。結果としてはいい方向に向かいましたし、配下として口を出すべきではないと自覚しておりますので。」
「そこは口を出してもらいたいかな。ボクだって間違わないわけじゃない。今回はこれが最善だと思っての行動だけどね。」
「かしこまりました。ヒヨリ様が軍勢を巻き込んで攻撃したときはヒヤヒヤしましたが、まさか全員を生きて転移させていたとは・・・」
「さすがにあれだけの数を殺した相手から友好を語られても信じられないでしょ?勇者を倒しさえすれば勇者が悪だってことは人間たちも分かるだろうから勇者は殺すしかなかったけどね。」
「あの魔法は行ったどのようなものなのですか?」
「ボクの使える魔法の術式を全部絡み合わせて1つの魔法に仕立て上げたものだよ。その副次効果で5個まで好きな術式の書き込みができるようになってるんだ。」
「すさまじいですね。それで魔力切れに・・・」
「そういうこと。ほとんど魔力減ってない状態だったんだけど、残ってた魔力の9割以上使っちゃってね。魔法自体にはそこまで魔力使ってなかったんだけど、その制御に魔力を大量に消費しちゃったみたい。」
「そうなのですか。」
「ボクはもうちょっと休みたいから四天王のみんなを呼んできてよ。」
「かしこまりました。カイルは現在人間の代表者との会合に出ていますので、レイとゲルのみですがよろしいですか?」
「いや、それじゃカイルが帰ってきてからでいいよ。」
「かしこまりました。」
ってことでフランには出て行ってもらった。まだ倦怠感が残ってはいるけど、まだやるべきことがある。
「あんたさ、どこまでしつこいのかな?」
「俺の気配に気づいてやがんのかよ。」
「当然でしょ?全能の魔王様だよ?」
「軽口をたたきやがって。」
部屋の隅にボクから見ても薄い明らかに幽霊が見えてる。当然それは勇者のもの。さっさと浄化しちゃおうかな。
「で、何のような訳?」
「そんなもんお前を呪い殺すために決まってんだろうが。」
「あっそ。ボクが天使の力を持ってるの忘れちゃった?[ピュリフィケーション]」
「グァァァァァァァ」
ちゃんと浄化できたみたいだね。それにしても魔力が全快したわけでもないから魔法使うだけで疲れちゃうね。もうちょっと寝よ。
コンコン
「はーい。」
ノックの音で目覚めて中に入ってもらうと四天王全員がそろってた。
「カイルも戻ったんだね。」
「はい。人間たちとの話も付き、今後国交を結び、人間と魔族の関係を良好なものにしていくということで話が着きました。」
「それならよかった。フランにはさっき話したんだけど、今回は勝手に戦いに行っちゃってごめんね。」
「ヒヨリちゃんが無事ならそれでいいのよ。」
「俺としては軍勢のほうは譲ってほしかったがな。」
「ゲルの言う通り、とは言いませんが、今後は私どもも頼っていただけると。」
「分かってるよ。ボクは魔法の研究をしたいから政治とか外交関係は任せてもいいかな?人間も魔族も簡単にボクが創った魔法が使える世界を創りたいんだ。」
「そんなことが可能だと?」
「もちろん。試作はできてるしね。まぁ、見ててよ。」
魔王は宣言の通り、たった100年の間にこの世界の魔法を成長させ、誰しもが魔法を使える世界を作り上げた。人間と魔族が共存し、その世界の守護者として魔王が立つ。あらゆる世界を見ても異端と取れる構造がこの世界の秩序を保ち続けるのだった。




