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~事件編~

とある日の事だった。東京の少し田舎にあるお寺「院徳寺」の第19代目男性住職・雲仙上男かみおはお寺で、とある家族の法事をしていた。

この住職はとても温厚で、怒るのは嫌いな性格の人物。それに大のボランティア好きで、寄付や草むしりなどをしているため、近所からはとても優しい住職をして有名だった。


しかし、そんな彼にも裏がある。実はおよそ10年前住職に就任してから、彼はお賽銭のお金を夜中にこっそりと盗む。そう彼はお寺の金を横領していたのだ。でも彼はそのことに関して悪気はなかった。何故か、実は多額の借金を抱えており、それを返すのにこの金を横領していたのだ。

借金の理由はただ一つ、ギャンブルだ。彼は見た目ではわからないが、かなりのギャンブル依存症。多額の金を借りては、それをギャンブルに使っている。とんでもない男だった。そんな彼は何事もないように、ただ南無阿弥陀仏を唱えていた。


そんな法事が終わると、家族の方を向き


「これで、えぇ宮崎正美さんの13回忌を終わらせていただきます」


すると故人の娘が少し笑顔で


「本当にありがとうございました」


自分は当たり前のことをしているだけだ。そう思っていたが、そんなことよりも今日は一体いくらあの賽銭箱に入っているんだろうと、気になるばかりであったが、それは心の中に秘めておき、少し笑顔で


「この13年間、本当にお疲れ様でした」


頭を下げる住職。すると家族全員が座ったまま深くお辞儀をした。


そんなこともあった夜の事であった。いつもは午前0時近くになったら、お賽銭箱からお金を抜き取る、毎日それをルーティンとしていた。今日は意外と参拝客は少ない。実は一日中雨が降っており、明日まで止まない。本当に雨が大っ嫌いだ、雨が降るだけで前は参拝客が0人の日もあった。自分は何故か恵みの雨を近頃恨み始めていた。

そして今日も午前0時、いつも通り誰もいないか確認して、賽銭箱からお金を抜き出した。お金は持ってきた袋に入れて、つい何か嫌な予感がしたが、そんなことも気にせずに戻ろうとした瞬間


「見ましたよ~」


声のする方向に振り向くと、そこにはいかにも、よくドラマに出てくる取材陣のような恰好をした男性が私に近づいてきた。一瞬まずいと言う考えが体を覆った。すると男性が笑顔で


「どうも。私こういうものです」


と男性は名刺を出した。本殿の近くにあった電灯の明かりを頼りにしながら見ると、そこには「ジャーナリスト・小島巧たくみ」と書かれてあった。やはりそうか、こいつはジャーナリスト感が漂っていると、心の中で笑いながら名刺を見ていると、小島が続けて


「あなた今、お賽銭箱にあったお金。盗みましたよね」


自分は黙っていた。やはり見られたか、それもあろうことにジャーナリストに見られた。これは金を払えば何とかなるが、こんな奴に払いたくもない、そう思っていた。

すると小島は笑いながら


「自分見たんですよね。それに写真も撮ってあります」


すると小島はポケットからスマホを取り出し、写真を見せてきた。確かに自分が少し前に賽銭箱を盗む様子が、カメラに捉えられていた。

どうすればいい。でも方法は一つまだ使っていない。これを使えば大丈夫だと思い、小島に


「あのさ」


「はい?」


なんだこの不気味な笑顔は。恐怖を感じたが、そんなのどうでもいい。さっさとこいつを買収しなければと思い


「単刀直入に言う。いくらほしい?」


「は?」


少し小島が戸惑いの顔を見せた。だが自分は続けて


「どうせ君はお金に困ってるだろ。せいぜい私から払えるとすれば、1000万が限度だけどな」


すると小島が怒りの表情を見せて


「あんたおかしいよ。賽銭泥棒は立派な窃盗という犯罪なんだよ。それも神様の一番近くにいるあんたがそれをした。それでなんだ、金払うから見逃せってか。あんた狂ってるよ」


なんだこいつ俺に説教か、若者のくせにと思いながら、反論しようと思い小島に


「いいか。俺な、ここでは住職として人生全うしているんだ。お前みたいな若造に、人生ぶち壊されてたまるか。いくらほしい」


すると遂に小島はブチギレて


「ふざけるな!これは今すぐマスコミや週刊誌に送るからな。神様に今すぐでも懺悔するんだな」


そのまま去ろうとする小島。こいつの意思は固いようだ。今すぐでもマスコミや週刊誌にばらまくはずだ。これはマズいと思い、近くにあった少し太くて長い木の棒で、思い切り小島の頭を殴った。勢いが激しかったのか小島は倒れこみ、そのまま死亡していた。

自分は正気に戻り、すぐに木の棒を投げ捨てた。しかし、殺してしまっては捕まるわけにはいかない。完全犯罪を使うしかないと思い、早速実行に移した。

まず、自分の車に遺体と凶器に使った棒とスコップを乗せて、近くの山奥に行くことにした。そして隠すには良い場所に、スコップで掘り遺体を埋めた。これで恐らくこいつの死体は結構後に見つかるだろう。彼の携帯や財布は抜き取ったため、私と繋ぐのは何もない。そう思っていた。

これで雲仙上男の完全犯罪は完璧だった…


帰る途中にこんな時に限って大雨が降り始めた。だが、自分は犯行を隠した安心感からか、全くその場だと気づかなかった。その後にとんでもない出来事が起こるなんて。



~第1話終わり~

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