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14話

今、目の当たりにしてるのは私が最も忌避すべき光景だった。


「ーーー今すぐ彼を離してよ、外道が。」

その言葉と共にスタンガン程の威力のある雷の魔法を男に打った。男がレネから離れた隙にレネに近寄り魔法で私とレネに壁を作る。


「一応聞くけど、合意なの?」

聞くとレネはフルフルと横に首を振った。


すると男は逆上してきた。

「何被害者ヅラしてんだよ!散々良い様に使っておきながら俺を捨てやがって!!」


言いたいことや、考えたいことはあるはずなのに、まともに頭が働かない。それなのに感情はどんどん冷えていく感覚があった。

「へぇ。そんな理由があれば犯罪を起こしても良いんですね、知らなかったです。」



レネですら対処できなかった相手に大口叩いて後でどうなるかな?なんて考えたけど見過ごすマネだけは絶対に出来なかった。


取り敢えず、気絶するまで雷の魔法を撃っておくかと構えた時にドアの開く音がした。


「一体、これはどう言う状態なのかな?」

入ってきた人物にレネは安心した様な表情を浮かべている。

「先生!この男が僕を怪我させようとしたんです。僕、僕……怖くて…っ!」


「安心していい。この生徒は然るべき処罰を受けさそう。……さぁ、ついてきなさい。」


気がついたらとんとん拍子で物事が進んでいた。

これ、私要らなかったんじゃ?と思わずにはいられない。馬に蹴られた気分だ……え、これって。


「(アレンとレネの物語が進んでる!?)」


そうだ、これはアレンと出会うイベントだ。

レネのこの場面を見てアレンは庇うんだけど、トラウマのせいで体から動かなくなる。


その時に助けるのがレネの思い人のーーー


「(いや、さっきの人、思いっきり主要人物!)」

怒りで周りが全く見えてなかったけど良く良く思い出せばあの声はジキル・ローゼン。


レネとの関係が深い人物だけど、アレンとロイドみたいに何故カプがどうのとか言わないのかと言うと、

絡みが少ない。後の一つが


「ねぇ、あんた。」

自分の世界に入ってしまっていたら何とレネから声をかけてきた。あ、忘れてた。


「怪我はない?もし立てないんだったら手を貸すけど。」

そう言って手を出すとおずおずと手を握ってくれた。

その手はさっきの声に反して弱々しく手も震えていた。

あんまり好印象は無いけどあんな事があったんだし、怖いよね…。


「何で僕を助けたの?助けたって君には何も得はないよね?」

食堂で喋ってた口調と声のトーンも違う。

そして彼は本当に分からないと言った表情というよりは何か裏があると思っているのがバレバレな顔をしている。


感謝も無く、疑ってきているレネに好感度は急速に落ちてきている。まぁ、助けなきゃ良かったなんて思ってないけど。


「私があなたの助けたのは私が助けたかったから。貴方は私の罪滅ぼしに付き合ってくれたと思ってくれていいよ。」


そう、あの時にアレンを救えなかった私の完全なエゴだ。誰かを救ったからといってアレンが救われるわけじゃない。


「そう……。なら良い。」

そう言って彼は身なりを整えて出て行った。

最後までお礼言わなかったな……。まぁ良いけど。


いつの間にか私だけになっていた教室を出ようとした時、入ってきた人がいた。


「ジキル先生……。」


「おや、君だけですか?ケーシィさんはどちらに?」

そう言って教室を見渡すがお目当の人物がいないと確信してから問いかけてきた。


「あの子はついさっき出て行きましたよ。差し出がましいとは思いますが、あの子は今誰とも会いたくないと思うので、詮索しない方が良いかと。」

私がもしあんな目にあったら誰とも会いたくない。

アレンの時もそうだった。


しばらく考えるそぶりを見せてから彼は私に向き合った。


「ご親切にありがとうございます。……いけませんね、生徒は皆平等に接しなければならないのに被害を受けたのが身内となったら視野が狭くなってしまう。」

そうだ、確かこの人はレネの親戚だった筈。

そして、レネが素直になれない人物だ。


「……何故、今その様な事を仰るのですか?」

基本的に生徒と先生が身内であったとしても公言しないのが鉄則だ。そうじゃないと公平さに欠けるとしてたとえ家族であってもこの学園では他人のように振る舞うのが普通だ。


「今の彼は自分を殺している様に見えて見るに耐えない。大人として注意しようにもレネには嫌われているんだ。もし良かったら彼に気をかけてやってくれないか?」

そう悲しげに微笑む彼を見て私もにっこり微笑む。


「え、嫌ですけど。」

すると、そんな反応が返ってくるとは思わなかったのだろうポカンとしていた。


「私は彼にも話しましたが私自身の為に彼を助けたんです。仮に同じ事件があったら助けると思いますが、何であんな我儘坊ちゃんのお世話をしないといけないんですか?私はカウンセラーでもなんでもないんですよ。」


レネを助けたいなら自分まで助ければいい。以前から助けたいと思っていた二人だったけど、他人任せで良いとこどりとか虫が良すぎる。


私は神様でもなんでもない。ちょっとだけ未来を知っている転生者だ。この二人に関わるとボロ雑巾の様に使われるのが目に見えている。


「私、良い様に使われるのは嫌いなので。」


私だって人間だ。嫌いな人を態々よいしょする気にはならない、そう思いながら私も教室を出た。



本当は関わりを持つべき人だった。未来を変えたいなら尚更。だって彼らはーーーーー





この物語の中で唯一、結ばれない二人だったから。



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