20話 神への報復 その4
神編は次か次の次辺りで終わりかな?
翌日。アストロはなんとか意識を取り戻した神々に、早朝から寄ってたかって責められ続けていた。
デュークにコケにされ、いいようにやられた事でアストロはすでに自分に自信をなくし、意気消沈していた。だから、彼等の糾弾の叫びに対して、何も言い返さずに粛々と聴き続けていた。
あの時は復讐心が募りデュークへの報復のために勇者に出来る限りのサポートをしてやろうと考えていたが、頭が冷えてくるにつれてデュークに言われた
「次は神世を滅ぼしてやる」
という言葉に怯え、勇者を支援するというその気は今は完全に失せていた。
(けど………それでもやっぱりアイツは、デューク=アグレシオンは憎い………!どうしたら、どうしたら奴に復讐できるの………!?神世にも、私の権威にも傷が付かない復讐………!)
「やぁみんな。久し振り。元気にしていたかい?」
罵倒の嵐に耐えていたアストロの前に、その原因が現れた。とびきりの笑顔と、馴れ馴れしい言葉を添えて。しかし、アストロには勇者のあの笑顔も言葉も、なんだか嘘っぽく見えた。まるで、決して他人には見せたくない激情を覆い隠すかのような、薄っぺらい笑顔だった。
「話の途中ですまない。けど、アストロに話があるんだ。少しの間だけ、アストロを僕に貸してもらえるかな?」
「はぁ!?テメェ、騒ぎの原因がいきなり来てそんなこと言ったってテメェ、許される訳が………ちょ、待ちやがれ!どこ行きやがる!?」
「すぐに帰ってくるさ。心配は要らないよ。」
勇者は周りの制止を一切無視してアストロを何処かへと連れ去って行ってしまった。
そして、2人は現世へと転移した。誰もいない、全く命の気配の無い荒野に。
「此処にくれば暫くはバレないはずだ。少なくとも、見つかる前に僕の用事は済む筈だよ。」
「何や……何なのよ私に用って………!?」
「ふふふ、とぼけなくたっていいんだよ。聡明で優秀な君のことだ、僕の目的がなんなのかくらいもう察しがついているんだろ?」
その通りだ。時期をを考えればこの男の目的はすぐに想像がつく。
「デューク=アグレシオンとの決闘………そのための新しい力でしょう?」
「その通りさ。やっぱり流石だね、最高神様は優秀だ。僕の考えをすぐに理解してくれる。………頼めるかい?悔しいが、今の僕の力じゃあアイツには勝てない。どうしても、今よりも、もっと強い新たな力が必要なんだ………!」
困った。アーノルドに対しては負い目がある。かつて彼の前世を自らが終わらせてしまったことへの負い目が。だから、これまでさんざん従い続けて来たのだ。
だが、今回は話が違う。アーノルドに従えばこちらは大変な損害を負う。奴が示唆していた神世の滅亡も私がもし奴の言うことに従わなければ迷う事なく実行に移すだろう。
「ごめんなさい………!今回は…!今回だけはどうしてもダメなの!私があなたに肩入れしたら、神世が大変な事になるの!」
「え………!?なんだよ!?どういう事なんだよ、それ!?今までずっと助けてくれたじゃないか、なんで今になって助けられないなんていうんだよ!」
アーノルドは焦っている。デュークにやられた時、埋めがたい力の差を感じた。何故?自分はオンリーワンの最上の存在の筈なのに。何故僕がこんないいようにやられているんだ?どうして?ドウシテドウシテドウシテ!
「は、ははは……………!!!心配要らないさ、君が僕に与えた力で僕が奴を、デューク=アグレシオンを倒せばいいんだから!そうすれば君の懸念の元は無くなる!僕はもう一度最強になり、さらにその座を揺るぎないものに出来る!至れり尽くせりじゃないか!」
「けど………!あれは、もう、どんなに力があっても対抗できるような、ものじゃ………!!!」
「きゃっ………!な、何を、す……………!」
確かに、約束違反をしたって勇者が勝てば神世は滅ぼされずに済む。それに、どれだけ力を与えてもアーノルドがデュークに勝てるとは思えなかった。しかし、それを伝えようとしたらいきなり勇者に押し倒され、覆い被さられてしまった。
「黙れ………!お前は黙って僕に力を寄越せばいいんだよ………!お前は僕を殺したんだぞ!その償いなんだから、お前が僕に従うのは当然だろ!?なんで拒否するんだよ!償わないのかよ!神なんて大層なもの名乗ってるくせに自分の犯した罪を償うこともできないのかよ!?ふざけんなよ!」
もはやアーノルドには態度を取り繕う余裕もなかった。無敵だった筈なのに一度叩きのめした相手にいいようにやられ、今までずっと自分に従って来た相手にすら拒否され、もう一切の余裕もなかった。
「そうだ………、知ってるかい?勇者ってのはさ、帰りを待つ大切な人の数だけ、強くなれるんだよ。そう、具体的には………体で関係を結んだ異性の数だけ、ね。同性でも構わないそうだけどね………!」
「そ、それがなんだっていうのよ……………!?」
「相手が強ければそれだけ、僕も強くなれるんだよ………アストロ、お前はそれに最適だ………!」
「そ、それって…まさか……!!!」
「ははは!あの時からずっと、僕はお前のことを狙っていたさ!転生して赤ん坊からやり直しになったせいで成長を待たなきゃいけなくなったけどね!けど、もう既に何人かと僕は関係を結んでいる。ならもう、大丈夫さ………!」
「ちょ…!待って………!!!やめて!」
アーノルドは聞く耳を一切持たなかった。アストロの服を破り、剥き、無理やり事に及んだ。
もう抗う気もアストロには起きなかった。ズタズタにされたプライドは、もう治ることはないだろう。
「これで……これでいいんだ。ありがとう、アストロ。君の為にも、僕は勝つよ。もし、これでもダメだったら………分かってるよね?」
「うぅぅ………!なんで…なんでぇ………!!!」
ただでさえデュークにべっきりと折られた心は、アーノルドの駄目押しによって、完全に崩れ去ってしまった。
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『僕を助けろォォォォォォォ!!!!!アストロォォォォォォォ!!!!!』
「……………」
翌日。
勇者の叫びにも反応せず、ただ現世を写す門の前で無感情にアーノルドがデュークに叩きのめされる様を眺めていた。
「お、おい………もしこれで勇者が負けたらどうすんだ…というか、どうなるんだ………?」
「勇者は強化されてたし、何があったかは知らんが、奴はアストロ様が約束を破って余計なことをしたと思うだろうな………」
「お、おい………それじゃ、神世は………」
「あ、アストロ様!勇者に!勇者に新たな力を!このままでは神世が危なくなります!お願いします、絶対にデューク=アグレシオンを勝たせてはなりません!どうかご決断を!」
「……………もう、どうなってもいい…」
アストロの反応はつれないものだった。自分を支えて来たプライドを完全に折られ、アストロは廃人となっていた。
「もういい!ならばこちらで勝手にやる!もうお前は最高神でもなんでもない!ただの無能なクズだ!」
「……………」
こうして神々の力が集結して神剣が誕生、勇者の元へ送られた。
まぁ、その甲斐もなく、アーノルドは負けて死んでしまうのだが。
「あ、あああ……………!」
「終わった…!」
「くそぅ………!くそぉ!責任とれ!責任取れよこのクズ!お前のせいでこうなったんだぞ!お前のせいで神世は滅びるんだ!責任とれよぉ!」
「……………」
神剣を作り上げた者達が寄ってたかってアストロを責める。アーノルドに力を与えたことでデュークはもう一度、今度は神世を滅ぼしにやってくるだろう。そう責めた。
「あ、あれ………?ここは、どこ…?」アーノルド様は………どちらに………?」
ゴタゴタしているうちに勇者が死んでから現世で起きた騒動は集結に向かっていた。神々は誰も気にしていなかったが。そんな中、神世に勇者の愛人、
『暗殺者』コナーが送られて来た。
「お、おい………」
「ゆうしゃのなかまだ………!」
「アイツのせいで………!!!」
「おい、アストロ。あの女を消せ。お前が選んだクズの選んだ女だ。勇者の野郎、死んだ癖にまだ来やがらねぇ!だからあの女を消せ!」
「……………」
あぁ、そうだ。アーノルドのせいでこうなったんだ。憎い。奴が憎い。奴に選ばれたあの女も憎い。三下に命令されるのは気にくわないが、アイツの抹消は私の望むところでもある。やってやろうじゃないか。
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そうして、コナーは存在を抹消された。完全に消えるまでできるだけ苦しむように、過去の所業を全て思い出させ、勇者のかけた洗脳も解いた上で。
コナーの消えゆく迄の絶望の叫びで、少しではあるがプライドも回復した気がした。
この晴れやかな気持ちは、現世での騒動が落ち着き、デュークがもう一度神世にやってくるまでは続いたのだった。




