45話 急襲、魔族
他のジャンルの小説を書いてみようと思ったけど、書いているうちに自分は異世界モノが書きたかったんだということを思い出してやめた。
次も異世界モノだと思う。
「ははははははははは!!!!!!これで僕はさらに強くなった!もうお前なんか簡単にけちょんけちょんに出来るぞ!」
「何もかもが幼稚。やられっぱなしでいながら新しい力が手に入ったくらいではしゃげるとは、何処までもおめでたい奴だ。」
「この大いなる力に臆したか!?ならば神剣の錆にしてやる!光栄に思え!」
神剣を与えられたことで調子付き、さっきまでの情けない姿が嘘のように凛々しくなる。言葉などは変わらないのだが。
「ふはははは!!!!!あれを見ろ!あの神々しい剣を!アストロ神様がアーノルド君を救うために遣わしたものだぞ!やはり神は彼を見捨てていなかったようだな!あーはっはっはっはーー!」
「くっ………!けど、あれを使いこなせるとは限らないではないですか!」
「それがどうした、神が勇者を見捨てていなかったと言う事実は変わらん!」
(………妙だな。デューク殿は落ち着いている。いや、落ち着き過ぎている。まるで、元々こうなることを予期していたかのように………この神剣の降臨は予想の範囲内だと言うのか?)
「聖剣だけでなくあんなのまで………これで本当に勝てるんですか………?先輩………?」
「なんでだろうな………?なんつうか、素直にデュークを応援できねぇ………」
「分かってるよ………デュークは何も変わってねぇよ………でも………」
「俺は………変わらずにデュークを応援するよ」
「勇者様に新たな聖剣が遣わされたわ!」
「これはあの悪魔をこの剣で殺せと言うアストロ神様のメッセージなのよ!」
「神も勇者様を応援してくださっているわ!私達も負けてはいられないわよ!」
「祈りを!」「祈りを!」「祈りを!」
「大丈夫だよな………?デュークさんは俺達の復讐を果たしてくれるよな………?」
「ここで負けたら………勇者に人生を台無しにされたみんなが浮かばれないわ……!」
「もう彼が悪魔だろうとなんでもいい!俺達の復讐を成し遂げてくれるなら!」
「な、なぁ………これってどっちを応援すればいいんだ………?」
「知るかよ………お前の自由だろ………」
闇魔法の出現、神剣の降臨に観客達は様々な反応を見せる。勇者の応援が大多数、デュークの応援がその1割程、残りがどちらを応援するか迷っている者、勝っている方を応援しようとする者だ。
「これで!とどめダァァァーーーー!!!!」
「………一つ、聞いておきたいのだが。」
勇者か神剣と聖剣の二刀を以って基本剣術『恒星』を放つ。二つの切っ先がデュークに神々しい牙を剥く。そして、炸裂ーー!
炸裂音が鳴り響き、祈りを捧げ地を向いていた者達が起き上がり、結果を見る。
祈りが通じたと、自分たちの勝利だと信じて。
結果は、無残なものであった。
「浮かれてばかりいるが、新しい力が通用しないという可能性は考えないのか?」
「なん…だっ………て……………!?」
二つの剣は虚空を斬るばかりで、肝心の標的であるデュークにはその刃は届いていなかった。
デュークは邪魔だと言わんばかりにアーノルドの剣を握る腕を押し退け、自分の持っている『地獄ノ太刀』の片方を心臓に深々と突き刺していた。
「きゃはっ、ほぉぉ………ふぉぉぉ………!」
「『ぅるてぃま………ひぃる………!』」
「ほう、心臓を突き刺したというのにまだ生きていられるか。随分と頑丈にできているのだな。」
「そうだ………!僕の力はまだ、こんなものじゃないんだ!」
「足掻いたところで別に、私に一矢報いることもできんというのに。この決闘の後にも地獄は待っているのだから、さっさと諦めて降参したらどうだ?」
「だまれぇ………僕は最強なんだ、僕は勇者なんだ、勇者は絶対無敵出なくちゃいけないんだ、だから僕が負けることはたとえ何があったとしても、しても!許されはしないんだぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
「お前にその剣さえ無ければ!僕の立場は揺るがなかったのに!お前さえいなければ僕は好きな女の子達と一緒に幸せに過ごせたのに!僕の一生を、台無しにしやがってぇぇぇーーーー!!!!」
「なら、望み通りにしてやろう」
「………は?」
『地獄ノ太刀』を仕舞い、腰に下げた終世剣を鞘ごと左義手で持ち、消す。終世剣の力で形作られていた左義手と左義眼が消えていく。
「ここまでお前が醜悪な存在だったとは知らなかったよ。お前如きに終世剣は勿体無い。望み通り、私が相手してやる。」
「………!!!ははは!ははは!勝負を捨てたか、馬鹿が!終世剣がないお前なんてなーんにも怖くなんかないんだよ!その選択を後悔しながら死ね!」
「ほう」
高らかに笑うアーノルドの顔面に右手で全力のグーをお見舞いする。パンチはアーノルドの端正な顔を正面から捉え、吹き飛ばす。
いつかセネカルトがそうしたように、風の推力を乗せて。闘技場の中心から端まで紙束のように吹き飛んでいく。
「うん、いい飛距離だ。左手で殴ることができたらもっと飛ばせていたかも知れんな。」
「ぐぁぁ………ちくしょう………!なんでこうなるんだよ………!この世界は僕に都合の良い世界じゃなかったのかよ………!話が違うじゃないか………!」
「それは違うぞ。」
「はぁ………!?お前に僕の何がわかるっていうんだよ………!?」
「お前の施した洗脳とは、被洗脳者の最も大切な人間と自分の立ち位置を入れ替えるもの。皆、自分にとって大切な者には幸せになってほしいだろう。だから、お前が洗脳した女達も、お前のためにいくつもアドバイスをしていたはずだ。そうだな、例えば余り愛人を増やしすぎると愛を与えられなくなった者に恨まれたりするとかな。」
「……………!」
「図星か。で、お前はそれをどうした?自分の欲に合わないからと無視していたのだろう?」
「ぐぅぅぅ………!」
「忠告も聞かず、ただただ欲望に身を任せ女を喰らうだけ。心身を鍛えもせず、何かあれば他人に頼り自分の力では何も成し遂げられない。こんな体たらくでお前は、なんのために生まれてきたんだ?」
「だまれぇ………!」
図星を突かれ続け、なおも反論しようとする勇者の顔に蹴りを入れる。またしても吹き飛んでいくが今度は倒れずに立ち上がることができた。
「僕が最強………!僕が一番………!」
「此の期に及んでまだ言うか。なら、もうお前には引導を渡してやる。」
左義手と左義眼が再生されていく。手には『奈落ノ太刀』が握られている。手に取った『奈落ノ太刀』で勇者に狙いを定める。そして放つ。
究極剣術『一天』。
瞬く間に勇者の背後まで移動し、神速の剣撃で勇者の神剣を持つ左腕を根本から断つ。
「ギャァァァァァァ!!!!!!?腕ガァァァァ、僕の腕がぁぁぁ!!!」
悶絶する勇者。そこに背後からまた剣を突き刺す。頭蓋と脳を貫通して目をくり抜く。
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「もう終わったな。勇者としても、人としても。」
「…………殺せ」
「何故?」
「こんな屈辱を受けてまだ生き恥を晒せというのか!お前には慈悲というものがないのか!?」
「少なくとも、お前に与える慈悲は無い。お前が死を望むなら、私が殺すことは出来ん。生きて、屈辱を受け続けるが良いさ。」
「ふじゃっ」
「往生際の悪い。そんなに死にたいなら自決すればよかっただろうが。」
「…………!?」
突如、上空から現れた何者かが、倒れる勇者の頭を踏み潰して現れた。
「やぁ。初めまして、かな?この女の婚約者さん。」
「…………アリシア、ではないな。何者だ?」
「大した者じゃない、アンタと同じ、勇者に恨みを持つものさ。まぁ、私の恨みはお前達全ての人間に向けられたものだがね。」
「…………魔族か。昏睡してる間にでも憑依したか?」
「ははは、騎士に守られてるってのにどうやって入れと?私はもっと前から準備をしていたぞ。」
勇者を殺し現れたのは、アリシアに憑依した魔族だった。
「自己紹介しておこうか。私はバールバッツ=エルツィン。かつて勇者パーティに、この女に討たれた魔族の大幹部さ。」
内容紹介
「世界」
この作品の世界は「神世」「現世」「終世」の三つに分かれている。
「神世」には神とその僕が住み、「現世」には人間や亜人、妖精などが住み、「終世」には現世と神世で終わりを迎えたモノが住まう。
「現世」はいくつもの並行世界に分かれていて、「神世」と「終世」を経由することで並行して存在している別の現世に行くことができる。




