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番外1506 氏族達の開墾作業

 氏族達は良い意味で既成概念にとらわれていないというか。雑草の処理にしても腹ばいになるような姿勢で地面から少し離れた位置に浮かんで、どんどん両手を使って引き抜いていったりと、中々作業風景が特殊だ。腰をかがめるより楽そうではあるな。

 切り分けた切り株から木の根を豪快に引き抜いたり、ごっそりと土を掘り返して持ち上げ、そこから石を除いたり。

 魔力操作が得意な者が大きな(ふるい)を魔力で構築していたりして……それを真似する面々がちらほらと出始めていた。氏族の面々の魔力形成は中々に器用で水準が高いな。それなりの大きさの土の塊を一気に持ち上げ、魔力の篩に乗せて作業をしたりと結構なパワープレイではある。


「こういうのはどうかな? ここの上に篩を乗せてやれば一人で支えなくていい」

「おお。助かる……。それなら篩をもっと大型にできそうだ」


 篩を乗せる台を別の氏族が魔力で構築して篩が更に大型化したりと、作業を続けている内にリアルタイムで協力して効率的になっていく過程を見る事ができた。

 見ていて中々に感心させられるというか面白いものだ。違う氏族同士で協力して作業に当たっているのも、俺としては歓迎できる話だし。


 闘気を活用して木の根を抜くのもそうだし、氏族達の開墾作業は全体的にはスペックを活かした内容ではあるかな。


 魔力も闘気も十全に活用していて、一般的な開墾から見るとまず有り得ない程のオーバースペックで作業を進めている感じではあるが……いずれにしてもかなり効率的なのは間違いない。


「見る見るうちに開墾が進んで行っていますね」

「いやはや……すごいものです」


 開拓村の住民達も驚きに目を見開いて作業を見守っている。魔物相手の戦いを日常的にしていただけあって鍛えられているというのもあるし、魔人としての特性で身についている部分というのもあるだろう。非戦闘員といっても気質や特性を比較しての話だから、寧ろ落ち着いて進められる分こうした作業の方が得意というケースもありそうだな。


 氏族の水準の高さというのはそのまま魔人達の水準の高さでもあったからな。武闘派の面々が削られて勢力が衰えたとは言え、それは一時的な状況の話だ。

 上手く勢力として持ち直せばまた武闘派が現れるだろうし、そのままにしていたらどう変わるかは不透明だった。だから……氏族達と合流して解呪が進んだというのは将来的にも安心だ。


 こうして集まった事や解呪した事、それに新しい暮らしが、氏族達にとって喜んでもらえるものになるように、俺としても頑張りたいところである。


 そうして氏族達の開墾を見ながら雑草を肥料にしたり、木の根や石を形成し直したりといった作業も行っていく。


 肥料に関してはウィズに成分分析をして貰っているが……。うん。問題はないな。中々質の良いものができたと思う。


「品質には問題ないかと。作業が一段落して手が空いている班も出てきたようですし、畑の準備ができたところには順次肥料のすき込みをしていっても大丈夫そうですね」


 そう言うと、ハーゲン達も笑顔を見せる。


「助かります。境界公のお作りになった肥料は凄そうですね」

「発酵魔法を用いただけなので、それほど特別な効果は無いとは思いますよ。こういうものは堅実で確実な事が大事なのかなと」


 少し笑って応じると、ハーゲン達も「確かに、それは安心ですね」と応じてくれた。

 安全性第一という事で、検証もなしに変な事はできないしな。肥料を作る発酵魔法の術式も、俺の応用ではなく実際に使われている術式をそのまま利用したものだ。

 ともあれ問題はないようなのでそのまま肥料として準備の出来ている部分にすき込んで行こう。


「では、そちらも作業を進めていきます」


 フィオレットが頷いて出来上がった肥料を受け取っていく。ミシェルがすき込みの作業について指導し、氏族の面々は熱心に耳を傾けて作業を行っていくのであった。




 昼食は開拓村側が用意してくれた。森の狩りや採取で得られた食材を用意してくれていた。開墾をやってもらっているので、せめて持て成したいということだそうな。こちらも少し調味料を提供したりしている。料理自体は村民が進めてくれたのでこちらは出来上がった料理を頂くだけといった具合だ。


 香草を使った川魚の蒸し料理であるとか、野菜、山菜、キノコを使ったスープだとか。山の幸が中心の料理だが中々いい塩梅だ。


 歓待したいという想いもあるのか、歌や演奏まで披露してくれた。


 みんなでのんびりと村の集会所で食事をとり、少し休ませてもらってから、午後も開墾作業を進めていった。

 一通り開墾作業が終わったのは午後を暫く回ってからの事だ。まだ十分に日が残っているぐらいで……普通ならばもっと日数の必要な作業量ではある。


 新しく拡張された農地を囲う簡易結界については侯爵家で準備してくれているそうだ。町に連絡を入れれば人員が構築にくるとオフィーリアが教えてくれた。柵作りまではこっちでやってしまって問題ないとの事なので、木の根を再利用した木材で作ってしまったが。まあ……こちらが氏族を連れて大人数でやってきた事もあって、ゴブリンなどは周辺にいなかったからな。大人数の派遣イコール自分達への討伐かと逃げる側面もあるので、簡易結界構築までの間は問題ないだろうとも予想される。


「帰りに牧場を見たいという話をしていて、町にも立ち寄るので……結界については僕達から伝えておきましょう」

「ああ。それは助かります。開墾作業も一日足らずでこれほど進むとは思っていませんでしたので、皆喜んでいます」


 ハーゲン達が笑顔で応じて、お礼の言葉に住民達も笑顔で頷く。

 拡張した農地についても作付けの面積が一気に増えたことで、開拓村としても大分助かるとの事だ。次のシーズンには収穫量が増えるという事で、色々な面での支援になるだろう。


 そうした村民達の反応や感謝の言葉に氏族の面々も笑顔になっていた。


「俺達としては一仕事したというぐらいの心地良い疲れ具合ではあるが……闘気も魔力も無しでああした作業をするのは大変だろうな」

「作物を作るというのも大変です」

「ああ。力になれたのなら良かった」


 といった感じで、各々と感じ入ったり学んでくれた事も多かったようで、そう言って頷き合っている。こうした反応を見ていると、開墾の手伝いに来て良かったと思う。グレイス達もそんな氏族達の様子を水晶板越しに見て笑顔を見せるのであった。




 開拓村の住民達は俺達が帰る際も、総出で大きく手を振るようにして見送ってくれた。そのまま最寄りの町へと移動し、簡易結界の手配などについても話をしてから農場にも立ち寄る予定だ。それほど長居できるわけではないが、まだ日も落ちていないので見学する時間は十分に確保できそうである。


「農業と畜産業は密接に関係があってね。農耕や除草に動物の力を借りたり、麦を育てて干した麦わらを飼葉として与えたり……結構切っても切れない関係なんだ」


 牛馬は農耕だけでなく運搬や流通といった面にも力を発揮するから人の行き来にも重要な位置付けだしな。農業の副産物で餌が賄えるのならばそれに越した事はない。


 シリウス号での移動の途中でそうした話をすると氏族達は興味深そうに耳を傾けていた。


 氏族の面々もシオン達、カルセドネ、シトリアといった面々も、牧場見学を楽しみにしているようだしな。開墾作業も終わっているし、みんなでのんびりと牧場を見せてもらうとしよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] >開墾作業 てお「俺もちょっと石掘り起こしてみるか」 ザクッ!ザクッ! 「片手でツルハシの柄の端を持って土から石を掘り起こしてるぞ?」 「腕力でなくて全身の力…
[一言] テオ氏の手助けがなくても開墾で無双状態というw
[良い点] 地中に居た筈の獣が突如空中から妖精と共に現れたが、突飛な行動に慣れてる面々はスルーした
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