表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2277/2811

番外1496 レイス達の近況は

『最後の解呪か。ま、特別な節目だと気負っちまうもんだが、お前らなら普段通りにやれば大丈夫じゃないかね』


 リネットが肩を竦めて言う。


『リネットの言う通りだな。緊張せずに進めれば問題あるまい』

『確かにね。私達も祈りに参加するつもりでいるわ。当日はよろしく頼むわね』


 ゼヴィオンとルセリアージュもリネットの言葉に同意しつつ、儀式の際祈りに参加する旨を伝えてくる。


「ああ。こっちこそよろしく頼む」


 笑って応じる。

 何気に三人とも前より互いに打ち解けているような雰囲気があるかな。

 マスティエルとの戦いで共に肩を並べて戦ったというのもあるだろうし、あの事件以後もお互い素性を知っているレイスなので親しくなった、というのも有るのかも知れない。


 魔人としての特性が失われた事で性格的な部分も丸くなっているというのもあるだろう。リネットはあまり他の魔人達と打ち解けなかったらしいが、冥精達からの情報によると今は気軽な雰囲気であるらしいし。


 ゼヴィオンはゼヴィオンで、戦い以外の事にも興味を向けるようになっているらしいしな。

 先程リネットの名前を呼んでいたのも、お互いに悪い印象が無いからだろうし、実力を認めたから、というのも有るかも知れない。対マスティエル戦の時にリネットが見せた術はかなりのものだったしな。


 ルセリアージュはルセリアージュで飄々としているが、リネットやゼヴィオンと一緒にいるところは楽しそうだと、そんな情報を冥精達から貰っている。

 ルセリアージュも好ましくない相手と一緒にいるというのはしない性格だろうし。


 レイス同士や亡者達、冥精達とも気軽に交流していたりもするという事だし。

 ザルバッシュを始めとした他の魔人達もレイスとして活動中ではあるが、三人共々案外仲も悪くなさそうという話だ。


「ヴァルロス達にも最近の話を聞いたけれど、三人の近況はどうかな?」

『下層でも中層でも普通にレイスとしての仕事をしているが……中層の見回りも増えたかね』

『そうだな。冥府にやってきた亡者は冥精達の力で拠点まで誘導されてやってくるが……それを見守ったりというのも中層での仕事の内だな』

『景色が綺麗になったから、退屈しないわね。見ていると楽しい……というのは呪いが解けた影響かしら』


 当人達にも尋ねてみるとそんな返答があった。

 マスティエルが倒された影響で冥府も花が咲いたりして、景色が変わっているからな。


 冥精達が中継映像で教えてくれたが、元魔人のレイス達がそれに見とれていたりもするそうで、三人に限った変化ではないようだ。

 カードやチェスも冥府に広まっているので、その辺にも冥精と亡者の間で興じていたりするらしいし、冥府での楽しみというのも結構あるようだ。


 魔人としての呪いが解けて感覚も変わり、マスティエルの事件も解決して冥府の雰囲気も変わり……諸々良い影響が出ているように思う。

 いずれにしても冥府での暮らしに馴染んでいる、というのはいい事だな。


『近況と言えば、テオドールの子らも全員無事に生まれたという話だな』

『うむ。喜ばしい事だ』


 ヴァルロスとベリスティオが言う。


「そうだね。みんなも元気で俺も嬉しく思ってる」


 そう応じると、リネット達も頷く。


『おめでとうって柄じゃあないが、まあいい事だな』

『将来が楽しみな子らだな』

『ええ。私からもお祝いするわ』

「ああ。ありがとう」


 少し前ならこんな風に祝福や感謝の言葉を伝え合うようになる相手とは思ってもみなかったが。


「ありがとうございます」

「ん。ありがとう。私達もこの通り」


 ヴァルロス達からの言葉に、みんなも水晶板越しにお礼を伝えた、元気である姿を見せる。


『テスディロス達はどうなのだ?』

「最近の出来事か。テオドールが造ってくれた訓練施設や新しい修業が中々に面白い」

『ほほう』


 と、ゼヴィオンとテスディロスもそんな会話を交わす。この二人だと……確かに訓練や修業の話題が合いそうな印象もあるな。ゼヴィオンは趣味嗜好に寄っている感じはあるな。

 何となくゼヴィオンの場合、瞑想では修業として物足りなさそうというイメージもあるが、内容を聞くと一度は試してみるかと、そんな風に言っていた。

 そうして、和やかな雰囲気の中で冥府との連絡の時間は過ぎていったのであった。




 ヴァルロス達との連絡や近況報告も一段落だ。後は進捗状況を確認しつつ、儀式当日を無事に迎えられるように進めていけば良い。

 さてさて。進捗や近況と言えば……母子の状況も日々少しずつ変化している。オルトランド伯爵領でカミラとヴェルナーの体調を診ているロゼッタとルシールであるが、フォレスタニアでのみんなの主治医役というのも変わってはいない。


 経過観察が重要だった以前程の頻度ではないが、交代でフォレスタニアに来て診察しに来てくれるのというのは継続している。


「ルフィナ様とアイオルト様は、オリヴィア様に引き続き、かなり安定してきたのではないかと思います。エーデルワイス様はもう少し待つ必要があるかなと思いますが、やはり日数的に生後一月で通常の外出も問題ないだろうとロゼッタ様とはお話をしていますよ」


 そう伝えてくれたのは今日の診察を終えたルシールだ。生後大体一月程で普通の形で外出をして、段々と外気に慣らしていっても大丈夫、というのがルシールとロゼッタの見解である。フロートポッドに乗って風魔法で守りつつ城内を移動、ぐらいはしていたが……まあこれでは外気に慣らすというには些か過保護かな、とも思うが。


「良いですね。ありがとうございます」


 ルシールの言葉にお礼を言う。

 ルフィナとアイオルト、エーデルワイスもオリヴィアと同様に体調が安定してきたので通常の外出も通常通りに日数を待てば大丈夫だろうというルシールやロゼッタからのお墨付きでもあるな。


「我が子の成長というのは……想像していた以上に楽しいものね」

「こういうのが、親の楽しみや喜びというものかしら」


 身長や体重の推移を記録した紙に目を通しながらローズマリーが割合真面目な表情で言うと、ステファニアもうんうんと頷く。姉達の上機嫌な様子にマルレーンもにこにこだ。


 ルシールは表情を綻ばせてから言葉を続ける。


「ロメリア様とヴィオレーネ様に関しては、ラミアと獣人族の気質が強いので少し判断が難しいのですが、やはり一ヶ月を目安に待つのが良いのではないかと思っています。迷宮村から頂いた情報や、エインフェウス王国からお聞きした情報では、生まれたばかりでも人と比べて特別身体が弱いという事もありませんし、このまま経過が順調そうなら同じ期間を取れば問題もないのかな、と」

「そうね。ラミアの子は幼少期から人の子よりも身体が強かったりするから。同じ期間を待てば大丈夫なのではないかと思うわ。その分、寒さは少し苦手だから、そちらへの注意が必要だけれど」


 クラウディアが補足説明をしてくれる。


「これからもっと暖かくなってきますから、その辺も安心ですね」

「ふふ。そうね。精霊王様達の加護もあるし」


 アシュレイが笑顔を見せるとイルムヒルトもにこにこしながら応じる。


「ん。ヴィオにとっても良い季節」

「暑い季節になってもフォレスタニアは過ごしやすいというのも安心ですね」


 診察から戻って来たシーラも、そんな風にエレナと話をして笑顔になっていた。獣人族は逆に寒さに強いが暑さに弱い、という場合もあるらしいが。

 その辺は毛皮の比率によりけりなのかな。ヴィオの場合は手足だけだが、その分だけでも暑さを感じやすいし寒さに強い、というのは間違いない。オリヴィアに対する太陽光の心配もそうだが、細やかにケアしなければならない部分はあるのでその辺気を付けたいところだな。

いつも応援して頂き、誠にありがとうございます!


お陰様でコミック版境界迷宮と異界の魔術師4巻の発売日を迎える事ができました!


こうして無事刊行できますのもばう先生や関係者各位の皆様のご協力、そして読者の皆様の応援のお陰です! 改めて感謝申し上げます!


また、今回も原作者として書き下ろしを収録しておりますので、そちらも合わせて楽しんで頂けたら幸いです!


今後ともウェブ版、書籍版、コミック版共々頑張っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 暑い季節になっても気ぐるみ変えればは過ごしやすいんや
[一言] 炎熱に舞剣にリネさんと体育会系な3人組が連むだけで事件が起こりそうな予感がするのですがw そこに黒骸が加わるだけで一波乱ありそうというかw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ