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番外1438 賢者の作戦と共に

 ファンゴノイドの伝えた作戦に、セリア女王と当時のメギアストラ女王も納得していた。実行できる人員がいれば確かに、良い作戦と言えるだろう。

 魔王国にはジオグランタも力を貸しているがこの時もやはり矢面に立つわけにはいかなかったようだ。始原の精霊は力が強すぎておいそれと力を振るえない。力の行使がそのまま天変地異に繋がってしまうというか。


 ともあれそんな過去の映像ではあるが、この場にいる面々も中継映像を見ているみんなも、それに見入っているようだ。


「作戦の実行には我らも提言した身として複数人が参加したいのですがよろしいですかな?」


 イグラムの言葉にセリア女王が驚くような、少し慌てた表情を浮かべる。


「危険だわ。中型といっても海の魔物だもの。作戦が成功すれば良いけど、しくじった時に大型の魔物の乱入に巻き込まれる可能性もあるでしょう」

「問題はありません。役割的には後方からの支援になるでしょうし」

「それに……作戦だけ伝えて、自分達だけ安全なところから結果だけ聞かせてもらう、というわけにもいかないでしょう」

「いやはや、全く」


 そう言って目を細め、頷き合うファンゴノイド達である。


「それは――」


 セリア女王はまだ迷っているようであったが、当時のメギアストラ――当時は魔王ではなかったので過去と現在の区別をするなら敬称を省くのが良いだろうか――が、口を開く。


「要するにファンゴノイド達に指一本触れさせねば良いのだろう? 我とセリアで解決してしまえば良いのだ」

「メギアストラ……あなたまで」


 メギアストラはこの時、セリア女王の友人で公式的には魔王国の臣というわけではないからな。ファンゴノイド族も立場的には同様というか。魔王国と賢人の一族として協力しあい、魔王国側からも尊敬されているが、公的な立場は少し臣民とは違うものであるし。

 メギアストラには緊急時故にファンゴノイド族の里まで高速で運んで貰ったが、セリア女王としては魔王国の戦いに巻き込むのには抵抗があるのだろう。


「何。我としても海の魔物の力には興味があったのでな」


 そんな風ににやりと笑って言うメギアストラに、セリア女王は少し迷っていた様子であるが――やがて覚悟を決めたのか決意に満ちた表情になる。


「――分かったわ。私も友を守る為に気合を入れる。力を、貸してもらえたら嬉しいわ」


 そう言って拳を握り、魔力を漲らせるセリア女王に、メギアストラとファンゴノイド達は頷く。


「無論。言われなくてもそのつもりだ」

「ふっふ。心強いものですな」


 そんなやり取りを交わし、実際に動いていく事になったようだ。ファンゴノイド達が同行する場合どうやって移動するのかと思ってみていたが、ファンゴノイド達もまた空を飛ぶ事は可能なのだと言っていた。


「我らの見た目はある程度融通が利きますからな。こう――身体の形を幾分か滑空に適したものに変えて風の術で進む、という事もできます故」

「空の魔物に襲われないような術にも心当たりがありますぞ」


 という事らしい。つまりグライダーのような形にキノコ――構造体を変えて空を飛ぶとの事だ。そんな過去のファンゴノイド達の言葉に頷いている現在のファンゴノイド達である。

 ファンゴノイド達は想像以上に芸達者というか。これで様々な術式にも通じているのだから賢者、賢人と呼ばれるイメージに反して相当な実力を持った種族だと思う。知識の集積と共有ができる知恵の樹があってのものでもあるのだろうが。

 ファンゴノイド達が温和な種族だったのは良い事だな。本当に。


「ふむ。その空の飛び方に興味は湧くが……同行する人数程度ならば、全員同時に運ぶ程度、何の問題もない。背中に乗せても良いし……籠のようなものを作って、足で掴んで運んでも良いぞ。魔法を使う者達の魔力を消耗させてしまうのは得策ではないからな」


 竜であるメギアストラであれば、襲ってくるような相手もいないだろうしな。


「おお……それはお気遣い頂き恐縮です。では、お言葉に甘えさせて頂きます」

「うむ。任せておけ」


 そうして同行するファンゴノイド達は頭からすっぽりと覆う外出用のローブのようなものを纏ってきた。帽子の周りにヴェールが付いているというような、キノコの外見を隠すものだな。


「あれも魔道具ですな。最近は身体の周囲の外気を変化させる魔道具を使っておりますが目的は同じで……里の外に出た際、外気から身を守る事ができる、というものです」

「力を振るう必要がある時に、余人に能力や正体を悟らせないという意味合いもありますが」


 と、ファンゴノイド達が俺達に教えてくれる。


「なるほど……」

『日除けや虫除けにも良さそうね』


 そんな風にモニターの向こうで頷くステファニアである。

 俺から見ると平安時代の壺装束を思わせるシルエットではあるな。あれは市女笠とか虫の垂衣と言う名前だった……かな? ステファニアが言う通り、日除けや虫除けとしての機能があったはずだ。


 急ぎの旅であるし、自分達が荷物として抱えているところを凶暴な魔物に狙われては厄介とファンゴノイド達は移動の際に幻術を使う許可を求めていた。


「まあ一理ある。我の事は気にせず用いるが良い。世間で思われている程、我はあまり竜族の矜持だとかは気にしておらんのでな」


 メギアストラは笑って応じる。そうしてメギアストラは里の開けた場所まで行くと人化の術を解く。竜の姿に戻ると同時に魔力が圧力となってファンゴノイド族の里を吹き抜けていく。


「おお……。竜族はやはり凄まじいものですな……」

「セリア陛下とメギアストラ殿はお二方とも威風堂々とした魔力と言いますか。頼もしい事です」


 そんな風に感想を漏らすファンゴノイド達である。セリア女王も……先程魔力を立ち昇らせていた時の様子を見るに、魔王として選ばれるだけあって桁外れの魔力を保有しているというのは間違いない。

 ディアボロス族は個人差が大きな種族で……闘気を扱うのが得意な者、魔法を得意とする者といった具合に色々いるそうだ。メギアストラ女王は「セリアは魔界でも有数の魔術師であろうな」とそんな風に教えてくれた。

 一方でメギアストラ女王もまた、竜の中では魔法を得意とするという話ではあるが。


 そうして――ファンゴノイド達が簡易の竜籠のようなものを作り、メギアストラの背中にセリア女王と他数名、籠の中にも数名が乗り込む。


「では、行きましょうか」

「うむ」


 そうして、居残りのファンゴノイド達に見送られて、一行は幻術で姿を隠して里を飛び立つ。目指すは水中都市。そこから水路を使って現場に移動。作戦を実行に移していく、というわけだ。


 諸々の条件もあって解決までの速度をスピーディーに、というのがな。準備万端にして対処とはいかず、中々難しいところだ。


「水路を移動する事になるが……ファンゴノイド族は大丈夫なのかな?」

「問題ありません。環境に対応する系統の術は一族の間でかなり研究されております故」


 ファンゴノイド族は菌が本体だから周辺環境は重要だしな。今回外出にあたり纏っているローブもそうだが、この辺はファンゴノイドにとっての死活問題でもあるから研究が進んでいるというのはよく分かる。


「なるほど。ではこのまま現場へ向かうとしよう」

「ええ。騎士達にも既に現場待機を命じてあるわ」


 セリア女王の言葉にメギアストラは頷くと、力強く羽ばたき速度を上げていく。背中にセリア女王達を乗せたり、足で籠を掴んでいるが、全く危なげなく飛んでいるのは流石という印象だな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 市女笠に虫の垂絹の中身はキノコでしたw 昔の日本人が転生して遭遇したら……w
[良い点] 舞台の上の獣へ観客から コルリス、後ろ後ろ! っと警告飛んでいるが金だらい直撃したシーンが現代で流れていた
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