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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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166 改築に向けて

「使い勝手とかどう?」
「悪くない」

 そう答えるシーラは、粘着糸を飛ばして庭に転がっている小石に向かって糸を飛ばし、手元に引っ張ってきたりしている。スナップを効かせて放つ糸は結構な速度で対象物に命中しているが――このへんの精度はシーラの技量によるところが大きい。

 他のみんなも見てみる。イルムヒルトは庭の片隅に設けた的に、光る矢を何本も放っている。矢の消費や回収を気にせず思う存分練習できるとあって、上機嫌な様子だ。
 マルレーンも幻影を動かして操作感を確かめたりと……訓練と言うより、各々遊んでいる印象があった。

 アシュレイとセラフィナはそれぞれ魔法と角笛の威力をゴーレム相手に試し撃ちだ。アシュレイの魔法の精度はぱっと見にも向上しているし、セラフィナの放つ音波弾の威力もなかなかのものだ。
 ……アシュレイに関して言うなら、オーシャンズクイーンによる増強が入ることで水の上級魔法も扱えるかも知れないな。

「グレイスは?」
「調子が良い気がします。陽光の下で解放されていると、何時も若干身体が重いのですが、そういうところがなくて」

 ふむ。なかなか好評のようだ。
 かく言う俺も実験中だ。コートの中に2匹も潜んでいる以上、個別に名前があった方が色々便利だったりする。なので獅子にはネメア、山羊にはカペラと名付けた。
 破壊力の確認ということで、中庭に出てアイアンゴーレム相手に色々試しているが……これが中々にパワフルで頼もしい限りだ。

 循環に巻き込んで強化されたネメアはアイアンゴーレムの手足を噛み千切るほどの咬合力を持っているし、爪の鋭さもまた相当なものである。
 カペラの方は吐息がメインかと思われたが、頭突きもアイアンゴーレムを大きく吹っ飛ばすほどの威力を出してくれた。角の形がある程度自由になるのもポイントが高く、シンプルに刺突攻撃を繰り出したり、絡めて動きを封じたりと幅が広い。

 ……これだけ手足が余っていると色々な技も開発できそうだな。
 例えば――ゴーレムの首と足をネメアとカペラで押さえ、更に背中をシールドで支えて空中に持ち上げて固定。シールドで押し上げるようにして背骨にダメージを与えつつ、そこから衝撃打法や魔法を叩き込んでみる。例えるならアルゼンチンバックブリーカーの魔改造版といったところか。

「なんて凶悪なことをしているのかしら……」

 アイアンゴーレムがひしゃげ始めたところで呆れたような声を漏らしたのは、門の前に姿を見せたロゼッタだった。

「おはよう、テオドール君」
「ええ、おはようございます」

 ゴーレムを技から解放して下に降ろしておく。動物達もお帰り願う。見た目の剣呑さについてはある程度承知しているつもりだ。

「おはようございます、ロゼッタ先生」
「ええ、おはよう。アシュレイ」

 みんなと朝の挨拶をかわしてから、ロゼッタは俺に向き直る。

「さっきの技って人間相手の想定をしているの?」

 と、興味深そうに、そんなことを尋ねてきた。
 このあたりは流石と言うべきか。元々プロレス用の技を原型にしているからか、ある程度は技の性質というか用途というかに目星がつくらしい。

「いえ、少し思いついただけなので特には。オーガ相手でも無ければ途中までしかやりませんよ」

 原型がプロレス技などとは言うわけにもいかないし、そんな風に答えておくとロゼッタは苦笑した。
 多分ロゼッタも気になっていると思うので、キマイラコートの出自についても軽く触れておこう。

「この服は恩賞としてもらったものです。魔法生物が組み込まれているそうで」
「なるほどね」

 閑話休題。
 隣の空家を買うので、ロゼッタから管理者に話を通してもらっていたのだ。

「それより隣家の話はどうなったでしょうか?」
「不動産屋がやって来るということになっているわ。基本的に売却の話には乗り気みたいね。細かな部分の値段交渉の余地はありそうだけど」
「助かります」

 となれば、改築する方向で話を進めてしまって大丈夫そうだ。みんなと改築案を話し合いながら不動産屋を待ち、商談が成立したら資材の手配などを進めていけばいいだろう。

「ええと。仲介料は――」
「必要ないわ。そういったことは元々ヘンリーに頼まれているし」

 手のひらをひらひらと振って、ロゼッタは笑みを浮かべる。

「ああ、代わりと言ってはなんだけど、私にも魔法建築を見せてくれると嬉しいわ。劇場を建てているのを見られなくて残念だったのよ」
「分かりました。当日はお呼びします」

 苦笑して答える。それぐらいならお安い御用だ。
 ロゼッタにも家に上がって貰って、不動産屋を待つこととしよう。グレイスの呪具を発動させて、みんなで居間へと移動する。

「とりあえず、改築して行くことになりそうだから、みんなの要望を聞きたい」

 ということでグレイスの淹れてくれたお茶を飲みながら、今の家と隣家合わせて縮尺した模型を作り……それを元に、まずは雛型として洋館風の家を構築していく。
 2軒合わせた分の土地を使えるのだし、迷宮村の住人を受け入れることも考えると――相当広くてもいいはずだ。
 地下区画を作り……地上部分も3階まで建て増してしまうか。

「魔法建築ってこうやってやるものなの?」
「いや、独学の部分も多々あるので何とも言えませんが」
「独学――。便利ねぇ、これ」

 ロゼッタは感心したように模型を見ている。

「台所なんかは、なるべく形を残した方が良いかな?」
「そうですね。使い慣れていますから」
「じゃあ、今の台所に不満のあるところだけ直す感じで」

 グレイスが微笑んで頷く。台所には氷室を付け足しておこう。きっとラヴィーネも喜んでくれる。
 居間と主寝室は――思い入れがあるから残そう。となると魔法建築で作った物置きと防音部屋もだな。全体的なデザインを今の家に合わせる形で修正していく。

「シーラとイルムの自室は? 同じ形で残す? それとももっと広くしたり?」
「そうね。私も慣れている方が嬉しいわ」

 イルムヒルトが言って、シーラも同意するように頷いた。
 ふむ。俺達の居住空間は基本的な部分では変わらないということになるか。となれば、必要な物を付け足していく感じにしよう。
 まずは――主寝室とは別にみんなの私物を置いたりできる、それぞれの居室を作る。
 隠し部屋なんてのも魔術師の嗜みかも知れない。母さんも作っていたしな。

 浴室。俺達が使うための広いスペースの風呂と――迷宮村の住人が泊まりに来た時に大人数で入れる男湯、女湯。
 日当たりが良くなるように広めの中庭を作り、寛げるように噴水と東屋を置く。訓練するためのスペースもここ。

「この部屋は何かしら?」

 居間に付け足した一角を指して、クラウディアは首を傾げる。新しく作ったスペースで居間の床より一段高くしてある。

「そこは何ていうか――床に直接座ったりできるような場所っていうのかな? まあ、少し考えがあるんだ」
「ん……面白そうね。楽しみにしておく」

 説明しようが無かったから言葉を濁したが、要するに和室である。
 木魔法で畳のようなものを作って真ん中に炬燵を置き、と言った具合で作ってみようと思っている。食事の後で寛ぎながらゲームをやったりできるスペースだな。

 更に迷宮村の住人が寝泊まりするための設備。クラウディアが言うには転移用の石碑を作ってやれば迷宮村からの移動がコスト的に随分楽になるそうで。
 地下区画に大人数が転移可能な大部屋を作り、各階の客室へ行けるように設計していく。

 迷宮村の住人が使える大きな厨房と大食堂。各階にトイレ。来客を迎えるための応接室。

「この大きな部屋はなんですか?」
「そこは娯楽室だね」

 ビリヤードとダーツでも作ってみようかな。テーブルとソファーも置くのでトランプなどもできるし、茶を飲みながらゆっくり談話することも可能だ。
 となればカウンターを置いて、カフェのような設備も併設しておこう。
 そんなこんなで諸々相談しながら構築していき……ある程度は納得いく形のものが出来上がってきた。

「……結構な豪邸になってしまった気が……」

 東区の家という事もあって、元々敷地的には割合広かったから……2軒分の家に統合してしまうと、個人の邸宅としてはかなりのものになってしまった。

「まあ、村の人達を迎えるわけですから」
「そうだね」

 全体を見ると自宅というより旅館という感じだが目的には沿っている。後は――必要な資材を算出してやれば建築できるだろう。
 準備を進めがてら迷宮の村にも顔を出さないとな。
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