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番外439 祭祀場のお茶会

 パルテニアラの愛用していた、という杖のレプリカも祭壇に設置が完了。諸々の装飾、魔道具設置やミスリル銀線敷設やらも終わり、祭祀場の建造が完了した。カルセドネやシトリアもしっかりと魔法建築や魔道具設置等々の作業を見学できたようで。

 というわけでティエーラにも来てもらい、パルテニアラと契約をする、ということになった。


「これはティエーラ様、コルティエーラ様」


 と、パルテニアラとエレナが揃ってお辞儀をする。

 穏やかながらも強い魔力と共に祭祀場内部へ顕現してきたティエーラは、パルテニアラ達に微笑んで頷くと言った。


「こんにちは」


 横に浮かぶコルティエーラも挨拶をするかのように穏やかに発光する。


「これは――立派な祭祀場が出来上がりましたね」


 ティエーラは目を閉じたままだが、周囲の魔力を反応させて、辺り一帯の様子を把握したらしい。実際の魔力の動きはそよ風が吹いたかどうかというような微小なもので……これは魔力制御というよりは環境魔力そのものがティエーラの感覚として機能したような印象がある。このあたり、流石は星の大精霊といったところだろうか。


「契約をして迷宮が新しい区画を生成してしまう、というようなことは?」

「新区画の生成開始には条件を付けてきたから大丈夫だよ」


 スケジュールを組んであるので、それに応じてでないと迷宮核側も動かない、というわけだ。パルテニアラと相談して、魔界の門を安置するのに必要な術式等々を組み込んで環境整備をした区画を生成する。それが終わればようやく魔界の門を移設可能になるだろう。


 というわけでティエーラとパルテニアラの契約に関しては問題ない。ティエーラの前に目を閉じて膝をつくパルテニアラに、俺とクラウディアが立ち会う。サポートする形でマジックサークルを展開する。ティエーラならば迷宮核の力を借りて契約魔法を結ぶ事もできるが、クラウディアに立ち会ってもらいたい、とのことである。


「では――この場所に我が祭祀場を作る事をお認め頂きたく思います。先々の世の平穏の為に迷宮に間借りする者として管理者と代行に協力することを誓いましょう」

「迷宮管理者からこの区画を預かる領主として、領地にパルテニアラの祭祀場を設ける事を認めます」

「迷宮管理者として、この祭祀場をパルテニアラに預ける事を認めましょう」


 パルテニアラ、俺、ティエーラ。それぞれの宣言に従いクラウディアの展開する契約魔法が効力を発揮していく。そうしてマジックサークル内の俺達全員の身体の周りを煌めきが包んだところで、クラウディアが契約魔法を発動させる。


 眩い光の柱が立ち昇り――そうして祭祀場がパルテニアラの物となる。その瞬間、祭祀場内部の環境魔力が変化した。


「ああ。これは……。パルテニアラ陛下の魔力を感じます」

『次にフォレスタニアを訪問する時が楽しみです』


 エレナの言葉を受けてガブリエラが穏やかに笑う。

 そう。環境魔力そのものがパルテニアラから感じる魔力の波長に近くなった、と言えば良いのか。名実共に祭祀場として機能し始めた、というわけだ。


「早速、お祈りを捧げたく思うのですが」

「ふうむ。良く分からぬが……妾は祭壇の上にいた方がいいのか?」


 エレナの言葉に首を傾げるパルテニアラ。こう、祀られる方としても祈りを捧げられるという事に不慣れな印象があるな。


「そうですね。その方が効果的かと思いますが」

「では――」


 と、祭壇の上に立てられた杖のレプリカを握って立つパルテニアラ。エレナが祈りを捧げると、それを見ていたガブリエラもモニターの向こうでパルテニアラに祈りを行う。


「私達もしてみよう」

「うん。みんな怪我しないように、とかでもいいのかな?」

「ふふ、大丈夫ですよ」


 エレナが少し笑って答えると、カルセドネとシトリアもエレナの後ろについて目を閉じて手を組む。


「それじゃあ、私達もお祈りしていきましょう」


 カルセドネ達の様子に微笑んだグレイス達も祭壇に向かって目を閉じて手を組む。俺もみんなも……動物組や魔法生物組に至るまで祈りを捧げる。

 ぼんやりとした温かな、けれど力強さを感じさせるような魔力が活性化して、祭壇を中心に広がっていくのが感じ取れた。その魔力から受ける印象は、パルテニアラの性格的なものに近いような気がする。

 そうして暫くの間祈りを捧げて。やがてエレナの声が聞こえる。


「――良いようですね」


 そんな言葉と共に、みんなが顔を上げた。


「何だか、温かくて頼もしい感じがしましたわ」

「そうだね。パルテニアラ陛下の御威光かな?」


 オフィーリアの言葉にアルバートもそんな風に言う。


「いやはや……妾としてはこれは慣れる気がせんな……」


 と、祭壇の上から苦笑してかぶりを振りつつ降りてくるパルテニアラである。そうして俺に尋ねてくる。


「これで後は、迷宮の区画についての相談を進めていけば良いのであったか」

「そうですね。魔界の門の封印に役立ちそうな術式等がありましたら教えて頂けると助かります」

「では――そうだな。せっかく作ってもらったのだし、奥の談話室で相談といこうか。他にも何かしておくべき話もあるかも知れんからな」

「良いですね」


 というわけで、祭祀場奥の談話室に移動する。まだ家具等々がないので、ローズマリーが魔法の鞄から敷布やティーセットを出して、そこで腰を落ち着けて話をする。


「祭壇前は神秘的……。奥は……明るくて、どちらも良いですね」

「そうですね。私は、好きです、この雰囲気」

『奥のお部屋は調度品の傾向で多少雰囲気も変わりそうですね』

「こじんまりとした雰囲気だと安心できる気がします」


 グレイスが言うと、エレナとガブリエラがそんなやり取りを交わす。のんびりとした雰囲気の中でアシュレイが作った水で、マルレーンがお茶を淹れてくれる。

 モニターの向こうのガブリエラもお茶を用意して。そうして行き渡ったところで話を進めていく。


「ああ。少しだけ確認を取っておきたかったのですが。祭祀場の警備体制については、こちらで進めてしまってもよろしいですかな? 警備兵にしても女性の方が何かと安心でありましょう」


 と、ゲオルグが尋ねてくる。


「勿論。警備兵の詰所もあるし人選は任せても良いかな? 必要ならティアーズや魔法人形も常駐させられるし、必要な分だけ調整が利くしこっちで融通するから、それを念頭に置いて余裕のある体制で考えてくれれば良いと思う」


 頭数は常時足りているという状態にしておいて、後は交代で常駐してもらうような形を取る、というわけだ。


「それは有り難い。では、魔法生物の常駐を計算に入れた上で、後程警備計画について纏めた書類を提出いたします」

「ん。助かるよ」

「何の。お役に立てれば幸いです」


 この辺ゲオルグはやはり頼りになるな。では警備計画については後から確認させてもらうとして、迷宮の新区画について話を進めていこう。


「まず、迷宮のどの区画から接続するのか、ということになりますが……これに関しては深層から枝分かれさせる形で問題ないのかなと。区画の管理に関わる者――例えばティエーラやアルクス、パルテニアラ陛下に転移の権限を持たせれば理由があって出入りする際も問題がなくなります」


 迷宮深層に続く道――満月の迷宮あたりから分岐させるわけだ。

 この場合転移で向かうのが正式な手続きを経た正規のルートとなる。


 そうでない場合――つまり侵入者はフォレスタニアの地下迷宮を突破した上で更に満月の迷宮等を通らなければならなくなるというわけだ。

 そうして満月の迷宮を突破した後にある区画自体も、番人であるアルクスが防衛を行いやすいように仕上げていけばいい。


 侵入者の迎撃。魔界から危険な魔物が出てきた場合。どちらにも対応できるような形が望ましいだろう。そう言った考えを説明していく。


「アルクスの本体は空中戦を得意としていますし、ティアーズやセントールナイトへの指揮権も有しています。それを踏まえ、今までの経験上からできるだけ強固な防衛方法を考えるとするなら――浮遊要塞、というのはどうでしょう。外部、内部のどちらからの侵攻に対しても有効と思われます」


 正確には、浮遊要塞を有した区画、ということになる。有事の際だけ浮上する城塞を作る事で、対応すべき相手に確実に空中戦を強いる事が可能となる、というわけだ。

 構想を模型で説明すると、パルテニアラとアルクスは揃って感心したようにこくこくと頷いていた。


「なるほど……。空中とはいっても結界を張って自由に行き来はさせない……。必ず多勢に無勢での戦いを敵に強いる事が可能となるわけですね」

「浮遊要塞か。驚くべき事を考えるものだ。しかも制御は迷宮側にあるから奪われる心配もない、と」

「そうです。要塞内部――中枢に門を安置し、後はパルテニアラ陛下が門の封印に役立つと思われる術式を仕込んでいくわけですね」

「素晴らしい。では、それらの術式はテオドールに伝えていくとしよう」


 そう言って、パルテニアラが頷いて微笑むのであった。

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