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番外437 王子達の道行きに

 ゲオルグ達に連絡を入れて打ち合わせをし、返事を待っていると工房にアルバートとオフィーリア、護衛のタルコットとシンディーが姿を見せた。


「いやあ、工房に来ると落ち着くなあ」


 と、アルバートがそんな風に言って笑う。

 今日は結婚式に入り用な品々を手配したりと城や街のあちこちを巡って準備を進めてきたらしいが。


「そっちの状況はどう?」

「一通りは……どうにかなったかな。衣装とか食材の確認や手配とか諸々済ませたから、後は進捗を確認しておくだけだね」

「なら、細々とした事は大体終わったから進捗が順調なら安心かな」

「そうだね。ゆっくりできそうだ」


 俺も予定通り、アルバートの結婚式では演出を担当させてもらう。

 それについては概ね方向性や構想も纏まっている。流石にサプライズというわけにもいかないので大体こんな感じになる、とアルバートとオフィーリアにも見せたところ、二人には喜んで貰えたから……後は当日に合わせて、しっかりとした準備を進めておけばいいだろう。


「こっちは祭祀場も大体構想が纏まって、今建設予定地の人払いと周知を進めて貰ってる。連絡が来たら一仕事をしてこようと思ってたところなんだ」

「魔法建築か。いいところで戻ってこれたみたいだね」


 お茶の用意を進めつつ、こちらの状況も知らせるとアルバートは楽しそうに笑った。祭祀場魔法建築の見学に来る気満々のようではあるが。


「結婚式に祭祀場の建築に……後は、直近で気になるのはヘルフリート兄上の事かな?」


 とお茶が淹れられたところで、アルバートからヘルフリート王子の話題が出る。


「今日、明日あたりに動きが無いようなら軽く背中を押しに行くつもりでいるけれどね」

「確かに、自分では踏ん切りがつかない場合というのはありますわね。ヘルフリート殿下も、考えなければいけないことは多いでしょうし」


 ローズマリーの言葉を受けて、オフィーリアがそんな風に言って……顎に手をやりながら頷く。

 考えなければならない事というのは――例えば自分の立場であるとか、上手く説得するには、とか、そういった内容だろう。

 王子という立場故に慎重にならざるを得ないのは分かる。


「まあ……望まないところまでは立ち入る気もないけど、他人の意見を聞くだけとか、心に秘めている事を聞かせるだけでも決心がつく、なんてこともあるからね」


 そんな風に言うと、マルレーンもこくこくと頷いて同意してくれた。


「そのへんの事は――2人はどうなんだい?」


 と、アルバートはそう言って、視線をタルコット達に向ける。

 お茶を飲みかけていた2人は思わぬところで話題が回ってきたのか、少し咳込む。


「いや、まあ。なんと言いますか。先日バニスター家へ挨拶に伺いましたが」

「ええ、その。まあ……私達の方は大丈夫……ですよ?」


 タルコットが言うと、シンディーもやや気恥ずかしそうに言葉を続ける。アルバートやビオラ達からも「おお……」という声が漏れる。


 バニスター家。シンディーの家の事だ。準貴族――騎士爵位を持っていた家系、という話は聞いている。

 家に挨拶に行ったということは……二人の関係は良好なまま進んでいるということで。シンディーの言葉によると結果も芳しいものなのだろう。結婚まで視野に入った、というところだろうか。


「父はチェスター様からタルコット様の普段の仕事ぶりを聞いていたらしくて。初めて会った時からタルコット様に良い印象を持ってくれていたように思います」

「工房の仕事や、学舎での勉強を頑張る様にと……応援されてしまった。チェスター卿には礼を言わねばな。俺も……期待に応えられるよう研鑽を積んでいく所存だ」


 そんな風にシンディーとタルコットが言う。ああ……。それはチェスターのナイスアシストと言うべきか。

 タルコットに関してはカーディフ家の不祥事で悪評が立ってしまっていたからな。シンディーもそうだが、噂話だけで判断せず、実際の姿やその後の事をしっかりと見て判断してくれている相手だというのは安心できる話だ。


「僕の結婚式に関してはテオ君が演出してくれるけれど、タルコットとシンディーや、チェスター卿の結婚式に関しては僕として協力したいところだね」


 と、アルバートがにっこりと笑う。

 ふむ。今現在チェスターと近しい立場のアルバートがそう言うからには、そちらに関しても順調なのだろう。確かに、タルコットとシンディーよりも心配する要素は少ないが。

 演出に関しても……そうだな。アルバートは工房の主だから今回は魔道具調整等々には関わらず俺が、ということになっているが……タルコットやチェスター達はアルバートも交えて、演出用の魔道具を組む、というのが良いのではないだろうか。


「ジョサイア殿下については?」


 イルムヒルトが首を傾げる。他の王子達がこうして縁談も進んでいるのでジョサイア王子についてが気になったようだが。


「ああ。あの人は、しっかりとしたお相手がいらっしゃるよ。ドリスコル公爵家の親戚で――ジョサイア兄上の幼馴染なんだけどね。小さい頃から仲が良かったからっていうことで、お互いの意思を確認して、とんとん拍子に話が進んだそうでね」

「近年の三家のゴタゴタや、魔人との戦いもあって結婚の話も遅れたようだけど……三家の軋轢の問題も、ジョサイアは解決するために奔走もしていたものね」


 アルバートとステファニアがそんな風に教えてくれた。俺は――BFOの情報ではジョサイア王子はその女性と結婚していると知っているが。


「ジョサイアは、三家の軋轢を解決してから、と考えていたのではないかしらね。勿論王位継承に関して国内の問題を解決する手腕がある事を示す、というのもあったでしょうけれど、幼馴染が将来王妃となるのだから、先々の不安がないようにしてから、と考えたのではないかしらね。そういう点では、きっと解決の糸口となったテオドールに感謝していると思うわ」


 ローズマリーが言う。なるほど、な。

 ロイの画策した暗殺事件もあってデボニス大公との間に誤解も生じた。その相手を大切に思うならば、王城内部での不安要素はできるだけ解決してから結婚を、と思うのは当然の事だろう。


 それに、メルヴィン王に関する話をするのならば、やはり、王族だからと言ってもその枠の中でできるだけ円満な結婚になるように手を尽くしている。

 ローズマリーがヘルフリート王子の結婚については大丈夫ではないかと、予想を立てるのも、そうした経緯を見てきているからという部分はあるだろう。


 そんな話をしていると、ゲオルグからも連絡が入った。建設予定地の人払いが完了。祭祀場建築についての周知も進んでいる、とのことで。

 では……早速ではあるが、予定通り迷宮核とフォレスタニアで仕事を進めていくとしよう。




 迷宮核内部にて――フォレスタニアの状況を確認する。建設予定地付近に人がいないことを確認し――まずは結界を展開して構造変化させている間に人が迷い込む事がないよう安全確保だけ済ませてしまう。

 祭祀場の位置は城から程々に近く、ベシュメルク側に祭壇が向く方角に調整。

 街の外縁部に必要な広さの空き地を作り、更にその空き地に必要な量の建材を生成するように迷宮核に指示を出していく。


「――よし。それじゃあ、始めようか」


 そう言って迷宮核に実行を命じる。俺自身も、現地の映像を迷宮核内部から見る事が可能だ。人払いと周知、結界の展開によって、これから魔法建築が始まると聞きつけたのか、既に人だかりができていた。


 誘導はきっちりなされているようで、集まっているが秩序立っている。観衆の前で結界内部に光のフレームが走ったかと思うと、一気に広場が構築され、資材の山が姿を現す。


 おお、という歓声と拍手が広がっていた。ふむ。この後は早速現地で祭祀場の魔法建築だな。これでパルテニアラとティエーラとの契約が終わってしまえば魔界の門を置く新区画の形成にも取り掛かれるようにもなる。やる事、気に掛けるべき事は色々あるが、一つ一つ確実にこなしていくとしよう。

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