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懐かしのクラスメイトたち(1)「ピアニスト、茉莉」  作者: 石原裕


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第13話 茉莉、精魂込めた楽曲を高校のビッグ・バンド部に献贈した 

 三月最後の日曜日に、茉莉が楽器を教えに通っている施設で、今年高校を卒業して施設から巣立って行く子供たちの為に歓送会が催された。招待された茉莉は、謙一を誘って龍司と三人で出席した。共に居住する全六棟の子供達や職員が全員参加し、日頃お世話になっている篤志家や出入り関係者やボランティアの人達等多くの人々が集まった。

 簡単な施設長の挨拶で会はスタートし、参加者はケーキやサンドウィッチや菓子、寿司等に舌鼓を打って賑やかに談笑した。ジュースもお茶もコーラもどれもが美味だった。そして、棟毎に此の日の為に準備した出し物を披露し、唄ったり楽器を弾いたり、フォークダンスに興じたりして子供達は皆、生き生きと明るい笑顔を振り撒いた。

 茉莉が教えた五人の子供達は、ピアノとギターだけのバンドを組んで、茉莉が教えた楽曲を五曲も合奏した。演奏は未だ未だ稚拙ではあったが、子供達は一生懸命にピアノの鍵盤を叩きギターを爪弾いた。此のライブステージは懸命に練習に励んだその成果だったのである。茉莉は力を貰った気がして涙が零れそうになった。

五人のライブステージの最後に、今年施設を巣立っていく男女生徒が自作の歌をデュエットで熱唱した。「出発~旅立ち~」と名付けられたその曲は、十数年間一緒に過ごした仲間達や先生やお世話になった人達への感謝の思いを託した心に響く唄だった。茉莉は巣立って行く子供達のこれからに少しでも幸多からんことを衷心から祈った。

最後に来賓の一人が励ましの挨拶をした。

「今年学園を巣立つ人だけでなく、皆さんは何日か此処を出て行くことになります。その時、一番初めに感じるのは、孤独、です。でも皆さんは独りじゃありませんよ。今此処に居る皆さんは兄弟姉妹であり、施設長を初め職員の皆さんは親御さんです。みんな家族なんです。だから決して独りだとは思わないで下さい!未だ子供である皆さんには、今、私が言っていることは簡単には解からないかも知れませんが、何日か私の言葉の意味を理解してくれたら嬉しいと思います」

参加者全員で記念写真を撮って歓送会は終焉した。

 

 それから茉莉は毎日、曲作りに明け暮れ没頭した。習作ではなくひとつひとつ完成曲を目指して集中した。茉莉が最初に選んだテーマは、施設で聴いたと同じ「出発~旅立ち~」だった。誰にも出来ない、自分にしか書けない楽曲を創りたい茉莉が行き着いたのは、やはり大好きで愛して止まないジャズだった。

 茉莉は最初に、楽曲の組立を考えモティーフ、フレーズ、フィギア、リズムを選択した。

それから素材としての音を頭で拾い、曲の雰囲気を大きく変える、マーチ、ラテン、ロック、スウィング等のスタイルを構想した。リズム、メロディー、ハーモニー、夫々の役割を担う楽器の構想も忘れなかったし、その楽器の音域を考えて調性も決めた。

全体の起承転結、ダイナミクス、バランスを見、オープニング、ブリッジ、エンディングを主題に合わせて作・編曲した。それから、音階に基づいているだけでは物足りないのではないかと、わざと音階を外すことも試みた。音階を外れなければ得られないような独特の効果が有ったし楽曲に大きな変化が与えられてもいたが、これはやり過ぎると還って変になることも茉莉は理解した。最後は感覚、心の音感だと茉莉は悟った。

 半月がかりで精魂詰めた「出発~旅立ち~」を茉莉は、自分が巣立ちジャズピアニストを志す契機となった高校のビッグ・バンド部に献贈した。後輩たちはスウィング・ジャズで軽やかに大きく膨らませて演奏してくれた。茉莉と共に笑顔を弾けさせ、部のテーマ曲に選定してくれもした。


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