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追跡、こだま317号と謎のアベック  作者: 石田ヨネ
第一章 東京駅、異界からの、謎のアベック
3/20

3 琵琶湖の水止めたろか弁当

 その松本に、

「今日は、この、滋賀のほうの弁当をね、買ってみようと思ってるんだ」

 と、西京は、スマホの画面を見せる。

「あん? 何だよ? 『琵琶湖の水止めたろか弁当』ってよ?」

 松本が、顔をしかめる。

 そこには確かに、滋賀県、琵琶湖近辺の郷土料理を用いた弁当の画像があった。

 近江牛だったり、ビワマスの炊き込みご飯。エビ、アユの佃煮、焼きモロコ。

 あとは、赤こんにゃくだったり、丁字麩ちょうじふのからしあえ、豆腐田楽や漬け物など、ご当地っぽいナニカ、と――


 そんな、弁当についてはそこそこに、

「それで、話は戻ってだけど、要件ってのは何だい?」

 と、西京が、本題を松本にたずねると、

「ああ、そうだ……! 場合によっては、アンタたち、そのまま列車に乗れっかもな」

「……ん? どうゆうこと、だい?」

 と、何か気づいたように答える松本に、西京が怪訝そうな顔をする。

 松本は続けて、

「ああ、ちょっち、アンタたちに、東京駅のほうに行ってきてほしくてさ」

「東京駅で、何か調べてくる――、ってことですか?」

 とは、瑠璃光寺が聞き、

「そっ、」

 と、松本は返答しつつ、

「ちょっち、タヌキのヤツからさ、“こんな情報が”あってな」

 と、そのまま、ノートパソコンを見せようとした。


 なお、“タヌキ”とは、“妖狐”こと神楽坂文のことである。

 異界の住人だが、松本たち、人間界隈とは多少協力関係にある、ドラえもんみたいなナニカである。

 まあ、その容姿はというと、麗しくも黒のアサシンドレスをまとった、美麗の女の姿をしているという。

 なお、見た目の“妖狐要素”は、狐耳と尻尾しかない。 

 妖狐についての紹介は、そこそこに、

「キツ――、タヌキさんから、ですか?」

 と、瑠璃光寺が聞き返す。

 タヌキをキツネとするところを、逆に訂正しながら。

「ああ。とりま、これ見てみ」

 松本は答えつつ、さっさと確認してくれとノートパソコンを渡す。

 そうして、まだ残っている瓦蕎麦に手をつける。


 ――ズズッ……

 と、蕎麦の音のするそばで、西京と瑠璃光寺は確認する。

 そこには、まず、男女ふたり組の写真が映っていた。

 カラフルなロシア帽を被った、ブロンドヘアの、顔立ちの整った白人の男。

 その相方も、肌のほうは同じく白いものの、黒髪に、黒づくめの服装をした、表情の冷たそうな女、

 彼らの画像を確認して、

「う、ん? これは……、アベック、かい?」 

 と、西京が言った。

「何だよ? アベックって? 昭和か」

 松本が、確かに死後になって久しい『アベック』との言葉につっこむ。

「まあ、カップルかどうなんかは、分かんないけど……、こいつら、異界人らしくてさ」

「「異界人――?」――だって?」

 西京と、瑠璃光寺の言葉のタイミングが重なる。    


「ああ……。あの、タヌキの情報によると、何ていうんだろ? こいつらは、恐らく、雪と氷の極寒の、異世界の軍人らしくてな」

「極寒の、異世界だって?」

「まあ、タヌキのヤツが言うにはな。ちな、もしそうだとすると、何か、冷気を司ったり、操る力を持っているかも」

「霊気を、操る力ですか_」

「うん、“かも”」

 と、松本は「かも」と、あくまで推測を強調する。

 また、西京が聞く。

「それは、凍らせたり、雪を降らせたりするような力を、イメージすればいいのかい?」

「とりま、そう考えておけばいんじゃね? まあ、それが、“どの程度”の力かは、分かんないけど」

「それで、東京駅のほうに行ってほしいってのは、このアベックが、いま、東京駅にいるからってことかい?」

「そっ、そゆこと」

 松本は、「そうだ」と答えつつ、

「だから、駅弁買いに行くんだったらさ? ついでに、調べて来てよ」

「そんな、駅弁のついでにって、ねぇ……」

 と、西京は「やれやれ」と、しぶしぶ東京駅に向かうことにした。

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