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第32話 メイドさんとイチャイチャしてるのを娘にガン見されるゲーマーのおっさん。

 ジーナさんと二人。

 えっちらおっちらと雪車を引いて、ふた月ぶりに訪れた領主様のお屋敷

 というか、雪が溶けたとき用に普通の荷車も用意しておかなきゃだな。


「月が変わるまでに来なかったら、こちらから行こうと思っていたのです!」


 出迎えてくれたルミーナ嬢。

 しばらく合わないうちに背丈も胸部も少しだけ大きく――


「……なってねぇな」


「アデレード! なんとなく不愉快な波動を感じた気がするので殴っておくのです!!

 ……それはさておき、今日の荷物は籠と箱が多いのですね?」


 感の鋭い幼女様である。


「そうですね。まぁ珍しいものや特別なものではありませんが。

 うちでも野菜――」


 ……野菜?

 うん、アスパラももやしも間違いなく野菜だから間違ってはいないはず!


「……の、栽培を始めましたので。試しにいろいろ持ってきました」


「このような真冬に野菜です?

 雪の中育つものなんて山菜以外何も思い浮かばないのです。

 そしてミーナは山菜は苦手なのです……」


「大丈夫ですよ? 苦いのとか不味い野菜は俺も嫌いですから」


 だから普通に畑が耕せるようになってもピーマンは植えない!!


「てことでリアンナさん、付き添いよろしくお願いします!」


「かしこまりました」


 さすがに正面玄関で籠いっぱいの食材――いっぱいの籠の食料を広げるのは迷惑だろうからね?

 雪車を引っ張り、そのまま屋敷裏手の食料庫へ向かう。


「まずはいつも通りのお肉のウサギとオオカミ、それから卵と牛乳ですね。

 あと、ジーナさんが鶏の繁殖に成功したので、今日は若鶏のもも肉も二羽分ほど持ってきました」


「それは素晴らしいですね!

 ……ところで、そのジーナさんに先程から『親の仇』のような目で睨まれているのですが……」


「彼女、鶏肉料理が大好物なもので」


「あっ、育てた愛情とかそういうのではなかったのですね」


「ジーナは愛情を持って、毎日鶏の耳元で『おいしくなーれ』とお願いしてる!」


「鶏さんがノイローゼになるから止めてあげて?」


 期待を裏切らない肉食娘である。


「で、次がお野菜。

 こちらが『ホワイトアスパラ』――

 なんですけど、リアンナさんはご存じです?」


「いえ、聞いたことのない名前ですね。

 なんでしょう見た目は……白くて太いつくし?

 それとも細いタケノコ? のようですが」


「そう言われれば確かに似てなくもないですかね。

 淡白な味で、いろんな料理に使えますし美味しいですよ?

 で、こっちが『もやし』」


「もやし? 確かお薬の材料かなにかで聞いたことがあるような?

 何でしょうこれは……成長途中の種子のようですが……」


「見た目は確かにアレですが、炒めたり、汁物に入れたり。

 栄養価も高くて、地味に便利な野菜なのでぜひお試しを」


「なるほど、調理法もあとで教えてもらえると助かりま――えええええっ!?

 ちょっ、な、何ですかこの大量のキノコは!?」


「ああ……やっぱり、リアンナさんもお嫌いでしたか……。

 うちじゃ俺もジーナさんも食べないんですが、こっちでなら誰か食べるかもって思って持ってきたんですけど」


「いえ、好きとか嫌いとかじゃなくてですね!!

 といいますかこのキノコ、私の見たことのあるキノコと比べてもその、すごく……立派で……」


「……それは、下ネタですか?」


「違いますよ!?」


 顔を赤くしてジト目でこちらを睨むリアンナさん。

 子の人、こういう可愛い仕草をたまに出してくるんだよなぁ。

 ……あと、なぜか隣ではジーナさんが目を見開いてこっちをガン見してる。


「それにしても。大雪の中いったいどうやって、これほど大量のキノコを……。

 ……といいますかちょっと待ってください!!

 ヒカルさん! 先ほどこれらを『栽培した』って言ってましたよね!?

 えっ? まさかこれ、森で採ったんじゃなくて……ヒカルさんのキノコなのですか!?」


「……それは完全に下ネタですよね?」


「確かに今のは私の言い方が悪かったですけど違いますからね!?

 ヒカルさん、キノコの栽培って常識で考えるなら詐欺師の常套句みたいなものなのですよ!?

 それをこともなげにそんな……やはり……やはりあなたは魔術師……」


 なんだろう、リアンナさんの目がトロンとなってるんだけど?

 ……それに比例してジーナさんの目がどんどん険しくなってるんだけどさ。

 というかこの世界、魔術師とかいるんだ?

 てことは、ちょっとくらい俺が無茶をしても『魔法』だって言い張ればどうにかなるのかな?


「……キノコにはあまり詳しくはないですが、見たところ四種類ありますよね?」


「……詳しくはないけど見たことはあるんですね?」


「ヒカルさんはまた何かおかしな勘違いをしてますよね?」


 リアンナさんに呆れたように見つめられながら収穫したキノコたちを並べる俺。


「品種としては三種類なんですけどね?

 椎茸と干し椎茸、それとしめじと舞茸です」


「干し椎茸は王都の屋敷でも使っていましたね。

 そして……これがあの舞茸なのですか……!?

 一口食べれば、思わず舞い踊ってしまうという言い伝えのある……」


 そいつが食ったのは舞茸どころか普通のキノコじゃねぇだろ……。



 他にもメープルシロップの入った樽、そして頑張って作った二十組のチェスセットを雪車から下ろしてからルミーナ嬢のもとへ……向かう前にお昼ごはんの準備。

 いや毎回のことだから気にもしてなかったし、別にいいんだけどさ。

 ……俺って一応お客さんだよね?


「申し訳ありません、屋敷の者が扱ったことのない食材もありますので。

 といいますか、そもそもヒカルさんより料理の上手な者がこの屋敷にはおりませんので……」


 俺の料理はゲームの『技術』だから当たり前っちゃ当たり前なんだけどな!



「ということで、今回持ち込みました食材の試食も兼ねまして色々と作ってみました」


 そもそも全部まとめてシチューに放り込んでも何の問題も……さすがにシチューにもやしはおかしいか。


「待つのです! これ、前にもみたことのある光景なのです!!

 どうしてミーナの前にだけヒョロっとした草の根っこの焼いたやつしか無いのです!?」


 もちろんリアンナさんが「そのほうがいい反応をしてくださいますので」って言ったからだけど?

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