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屋根裏ダンジョン育ちの無名剣士、配信で正体を隠したまま無双する  作者: 剣竜
第二章 屋根裏ダンジョン編

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第四十一話 水晶迷宮でボス戦してみた

 


 轟音と共に飛び散る結晶。

 その中から現れたのは一人の少女だった。

 白銀の髪に透き通るような肌。、青い結晶でできたドレス。

 まるで童話に出てくる妖精姫のようにも見えた。

 だが…


「…」


 哲人が彼女に鑑定のスキルを使う。

 この感覚、以前の『天地反転ダンジョン』でダンジョン最深部にいたモンスター『鏡の長老』と対峙した時と似ている。

 彼女の瞳には感情がなかった。

 機械のような無機質な視線。

 少女はゆっくり口を開く。


『侵入者を確認』


 静かな声が響く。

 やはり最深部のボスモンスターだ。


 --------------------


 封印の水晶姫

 Lv:55

 スキル:封印6、反射4、超越2…


 --------------------


「封印の水晶姫、レベル55か…」


『管理領域への立ち入りを確認、排除を開始します』


「え?」


「管理領域?」


 なで子が固まり、ユキも困惑する。

 これは今までにないパターンの敵だ。

 そしてその瞬間、周囲の巨大水晶が一斉に砕けた。


「…ッ!」


 そこから現れたのは無数のクリスタルハウンド。

 クリスタルゴーレム。

 巨大な結晶の騎士。

 さきほどの迷宮内ではいなかった上位種ばかり。

 コメント欄が大混乱になる。


『おいおいおい』

『数がおかしい』

『ボス部屋じゃねーか!』

『逃げろ!!』


 だが、哲人は逃げなかった。

 むしろ一歩前に出る。

 これだけ囲まれているのだ、逃げるのは難しいだろう。


「なで子、ユキ」


「やるしかない、よね」


「うん」


 その声で二人の顔つきが変わる。

 配信者ではなく、戦いを決意した探索者の顔だ。

 気は抜けない。

 それに、覚悟も決めている。

 戻ることはできないということもわかっている。


 次の瞬間。


 クリスタルハウンドの群れが一斉に襲い掛かってきた。


「来た!」


 なで子が叫ぶ。

 哲人が駆けた。

 地面を蹴り、最前列のハウンドへ突撃する。

 以前の高レベルダンジョンで使用した天津社製の魔導銃剣で弾幕を張る。

 剣が閃く。


「はッ!」


 核を正確に切り裂いていく。

 結晶の狼たちは光となって消滅した。


「後ろからも来る!」


 ユキの矢が飛ぶ。

 二体を撃破、核だけを正確に打ち抜いていく。

 さらにその後方、クリスタルゴーレムが歩き始めた。

 一歩ごとに地面が揺れる。


『でかすぎ』

『ボスじゃん』

『普通に災害レベル』


 以前から、通常の『クレイゴーレム』とは交戦経験が何度かある。

 だが、それよりも一回りは大きい。

 封印の水晶姫は無表情のまま告げた。


『防衛機構起動、排除継続』


 彼女の背後に無数の光が生まれた。

 水晶でできた矢。

 数十本はある。


「まずい!」


 哲人が叫ぶ。

 次の瞬間、雨のように降り注いだ。


「伏せろ!」


 水晶の矢が大地を穿つ。

 ユキも転がるように回避した。

 そして…


「矢なら、風で操れる!」


 なで子の風魔法。

 風を操り矢の軌道を変える。

 複数の矢を風に乗せ、封印の水晶姫へと跳ね返す。


『ッ…!』


 予想外の攻撃に封印の水晶姫の顔が一瞬歪む。

 複数の矢を受け溜めたり跳ね返す封印の水晶姫。

 しかし、そのうちの一本。

 哲人の肩に刺さった。


「ッ…!」


『セラートに!?』

『当たった!?』


「大丈夫だ!俺はレベル100を超えてる!」


 視聴者たちに心配をかけるわけにはいかない。

 これはエンターテイメントなのだ。

 哲人は肩に刺さった矢を引き抜く。

 仮面の下の表情は険しい。

 鮮血。


「…」


 一旦呼吸を整える。

 どうってことはない。

 傷はいずれ自然治癒のスキルで時間がたてば治る。

 封印の水晶姫は強い。

 だが、そのレベルは所詮55。


「よし!」


 哲人は少女を見据えた。


「(あいつが本体だ)」


 以前の『天地反転ダンジョン』でダンジョン最深部にいたモンスター『鏡の長老』は重力リングが本体だった。

 人型だからと言って、それが本体かはわからない。

 直感だった。

 周囲の魔物は護衛。

 倒すべき敵は中央の少女。

 そう考えた。


「なで子!」


「分かってる!」


 なで子が両手を掲げる。

 巨大な魔法陣が展開された。

 普段の配信では見せない大技だ。


「動画映えしないから普段は使わないんだけどね!」


 普段は使わぬ炎の魔法攻撃。

 巨大な魔法陣に炎が集まる。

 そしてそれを急速圧縮。

 小さな火球へと変わる。


「フレア・バースト!!」


 極大火球を急速圧縮した小さな火球。

 それを勢いよく放つ。


 封印の水晶姫へ直撃…


 する直前だった。

 巨大な水晶壁が出現した。


「防壁ッ!?」


 爆炎と熱風。

 視界が真っ赤に染まる。


『入った!?』

『勝ったか!?』

『いや、防がれてる』


 動画の視聴者たちも見守っている。

 煙が晴れる。

 少女は無傷だった。


『脅威評価修正、高危険対象を認定』


 彼女の視線がなで子へ向く。

 その瞬間、少女が消えた。


「やばッ…」


 次に現れたのは、なで子の目の前。

 高速移動だった。


「速ッ…!」


 水晶の槍が振り下ろされる。

 だがその攻撃を通すわけにはいかない。

 そこに哲人が割り込んだ。

 剣で受け止め、なで子を守る。

 だが、凄まじい衝撃を完全に殺しきることはできない。


「ぐッ!」


 十数メートル吹き飛ばされる。

 そのまま地面を転がる。


『セラート!?』

『今の何だよ!!』


 驚く視聴者たち。

 それにしてもなで子のドローンは優秀だ。

 この戦いもしっかりと動画として配信出来ているのだから。


「はは…」


 そんなことを考えながら笑みを浮かべる哲人。

 と、そこに…


「手ぇ貸そうか?」


 ハンドガンを武器として持つ、別の探索者の男。

 おそらく哲人たちのすぐ後にこのダンジョンに入ってきたのだろう。


「ああ、ありがとう」


「相手さん、レベルは低いが周りのゴーレムとナイト共が邪魔くせぇな」


 そう言いながら、その男はハンドガンでクリスタルナイトを一体打ち抜く。

 核を正確に破壊。

 確かに強さは本物。

 しかし、やはりハンドガンではこれだけの敵を相手にするのは難しい…


『あ、この人』

『プロハンターの『山野辺 仁木ジンギ』だ!』


 その男の姿を見た視聴者が言った。

 プロハンターの山野辺ジンギ。

 十年前のダンジョン開拓の黎明期から活躍する人物だ。

 そのレベルは80を超えるといわれている。


「仮面の兄ちゃん、俺が支援するから突っ込めるか?」


「あ、ああ…」


 哲人はそう返事した。

 レベルだけならば哲人のほうが上。

 だが、この男からはレベルだけではない力強さを感じる。

 これが経験の差、というものか。

 ジンギも、一瞬でレベル差を把握し自分が支援に回る判断を下す。

 なかなかできることではない。


『人類個体、戦闘能力が異常…』


 封印の水晶姫は初めて感情らしきものを見せた。

 ここからが本当の勝負だ。



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