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屋根裏ダンジョン育ちの無名剣士、配信で正体を隠したまま無双する  作者: 剣竜
第二章 屋根裏ダンジョン編

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第三十八話 高レベルダンジョンを攻略してみた

 

『ごめんなさい、今テスト期間中で…』


「あ、そうか…」


『うん、ちょっと時間が…』


「わかった。終わるまで待ってるよ」


『うん』


 なで子と電話をする哲人。

 軽く雑談をした後…


「二人とも忙しいみたいだな…」


 自宅で一人で呟く哲人。

 なで子とユキに連絡を取るも、しばらくはダンジョン攻略ができないという。

 無理もない、二人は学生なのだ。

 学業が忙しく、動画配信もこの先二週間ほどは簡単な雑談配信や過去のアーカイブなどになるという。

 一方、哲人は仕事をあまり入れていない身軽なフリーター。

 時間はたっぷりある。


「まあ、仕方がないか」


 もともと哲人は一人で活動をするつもりだった。

 少しの間くらいは一人でも問題はないだろう。

 それに屋根裏ダンジョン強化のための素材も集めたい…


「よし!」


 しばらくはソロでダンジョンを攻略しよう。

 そう考え、哲人はあるものを用意していた。

 それは、いつも使っている『セラート』の装備とは全く違う装備だった。

 武器も、以前提供された案件武器ではない別の物だ。


「海外メーカー、クロノス・インダストリー社製の硬質プロテクター。天津社製の魔導銃剣…」


 いろいろな意味で、『セラート』は有名になりすぎた。

 なで子やユキたちと行動している際に、ファンの一般探索者に話しかけられることもあった。

 それに一人で失敗をして『セラート』の名前の質を落としたくない。

 しばらくの間、ソロで攻略する際はこのプロテクターと魔導銃剣。

 そしてフルフェイスマスク&ゴーグルなどを装備していくことにしよう。


「それに行きたい場所もあるしな…」


 哲人のいきたい場所。

 それは平均レベル35台の高レベルダンジョン。

 ダンジョンという割には、ただの大きな穴に高レベルの魔物がいるというだけのもの。

 シンプルすぎる故に動画映えせず、なで子やユキたちとはいくことができなかった。


「結構いい素材があるはず。ふふふ…」


 早速出発だ。

 ダンジョンは県境となっている山の中にある。

 電車とバスを乗り継ぎ、山道を歩いていく。

 少し時間がかかるが、その分人が少ない。

 人の気配もほとんどない。

 時折、遠くで鳥の鳴き声がするくらいだ。


「…いい感じだな」


 哲人は周囲を見渡しながら呟いた。

 人気がないということは探索者が少ない。

 つまり、素材の取り合いも少ないということ。

 やがて、木々の隙間からそれは見えた。


「ここか…」


 高レベル指定ダンジョン『割れの縦穴』だ。

 哲人が一歩踏み出そうとした、その時だった。


「ちょ、ちょっと待った!!」


 背後から、場違いなほど軽い声が飛んできた。

 振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。

 年の頃は二十代前半、哲人より少しだけ若い。

 装備はそこそこ整っているが、どこかチグハグ。

 軽い笑みを浮かべていた。


「いや〜助かった!人いた!」


「誰ですか?」


「俺?俺は賭稲といな『トイナ ダイチ』!あんたと同じ探索者っ!」


 軽い。

 とにかく軽い。

 そして妙に馴れ馴れしい。

 賭稲と名乗った青年は、哲人の装備をじろじろと見た後、ニヤッと笑った。


「アンタもここ狙い?いや〜でもさ、ここヤバいって聞いてる?ソロはキツいって!」


「ああ、知ってる」


「だよな!?じゃあさ…」


 ぐいっと距離を詰めてくる。


「組もうぜ!臨時パーティってやつ!」


 こういう輩は、ダンジョン攻略ではたまにいるらしい。

 哲人は遭遇したことがないが、マナーの悪いハイエナもどきの者もいるとか。

 それに素性もわからない人間と組むのには抵抗がある。

 しかし…


「俺、こう見えて役に立つって!索敵とか得意だし?」


「…」


 哲人は無言で観察する。

 装備は安物ではない。

 だが使い込まれている様子も薄い。

 つまり経験は浅いが、金はあるタイプか。


「ほら!報酬とか分配でいいしさ!半分…いや、7:3でもいい!」


 交渉まで雑だ。

 だが、哲人は少し考えた。


「…レベルは?」


「レベル?ヨンゴー、45さ!」


「45…!?」


 それを聞き、驚く哲人。

 レベル45、なで子やユキよりも20近く上だ。

 レベルだけならば、以前の叢雲ダンジョンで共闘した『アイアン・フォートレス』や『三条会』のメンバーたちに並ぶ。

 嘘を言っているようにも見えないし、つく意味もない。

 もしかしたら、意外と強いのか…?


「…わかった、いいよ」


「え、いいの!?」


「けど、死んでも知らないぞ」


 その一言に、賭稲は一瞬だけ表情を固めた。

 だがすぐに親指を立てて笑う。


「わかった!自己責任ってやつね!」


 軽い調子で言いながら、賭稲は隣に並んだ。


「で、アンタ名前は?」


「…名乗るほどじゃないよ」


「え〜!?ミステリアス!」


 騒がしい。

 まあ今日は『セラート』としてきたわけではない。

 名乗る必要もない。

 哲人はそれ以上何も言わず、ダンジョンの縁へと歩み寄った。

 底の見えない暗闇。

 冷たい風が、下から吹き上げてくる。


「うわ…マジで深いなこれ…」


 賭稲のさっきまでの軽さが、ほんの少しだけ揺らぐ。

 哲人は彼に悟られぬよう、鑑定のスキルを賭稲につかう。


 --------------------


 賭稲といな 大地だいち

 Lv:45

 スキル:幸運7、料理6、身体強化2、高速2…


 --------------------


 レベルは確かに45だ。

 やはり嘘ではない。

 スキルも必要なものはそろっている。

 それと気になるスキルがあった。


「(幸運…?)」


 見たことないスキルだが、効果は何となく察することができた。

 そしてロープを取り出し、固定具を岩に打ち込む。


「降りるぞ」


「え、ちょ、心の準備が…」


 その言葉を無視して、哲人は躊躇なく暗闇へと身を滑らせた。

 それとともに慌てた声が上から響く。

 数秒後…


「うわああああああああああ!!」


 情けない悲鳴とともに、賭稲もまた縦穴へと降りてきた。

 暗闇の中、二人の影がゆっくりと深淵へ沈んでいく。

 ロープを伝い、どれくらい降りただろうか。

 途中から、光は完全に消えていた。

 ヘッドライトとゴーグル越しの暗視補助だけが頼りになる。


「…着いた」


 哲人のブーツが、硬い地面を踏む。

 砂が固まったような地面。

 数秒遅れて、賭稲が半ば落ちるように着地した。


「…声、抑えたほうがいい」


「え?あ、はい…」


 さっきまでの軽さがなくなっている。

 だが、それでも完全に黙るほどではないあたりが、この男の性格だろう。

 周囲は広い空洞だった。

 当然だが天井は見えない、存在しない。

 地面は黒く乾いた岩盤。

 そして…


「…いるな」


 低く唸るような気配。

 次の瞬間、暗闇の奥でそいつらが動いた。

 全身が岩のような外殻に覆われた獣型の魔物。


「ロックハウンド…!」


 賭稲が小声で呟く。


 --------------------


 ロックハウンド

 Lv:35

 スキル:群体行動


 --------------------


「2体…いや、3体か…!」


「待て」


 哲人は短く言うと、魔導銃剣を構えた。

 カチリ、と内部機構が回転する音。

 ロックハウンドが一斉に飛びかかる。


「うわッ!来た!!」


 賭稲が一歩引き、サーベルを構える。

 しかしその前に魔導銃剣を撃つ哲人。

 先頭の一体の頭部が弾け、岩片のように砕け散る。


「…え?」


 賭稲の間の抜けた声。

 間髪入れずに哲人が踏み込む。

 残る二体のロックハウンドが、左右から挟み込むように迫る。

 だが…


「はッ」


 魔導銃剣の刃が硬質な外殻ごと、ロックハウンドを正確に切り裂いた。

 鈍い音とともに内部を断ち切られたロックハウンドが崩れ落ちた。


「…は?」


 賭稲は呆然と立ち尽くしていた。


「え、ちょ、何それ…今の…」


 哲人は何も答えず、魔物の残骸に近づく。

 手早く素材を回収していく。


「外殻、魔石…質は悪くないな」


「いやいやいやいや!」


 ようやく我に返った賭稲が駆け寄る。


「強すぎでしょ!?何あれ!?普通あんな一瞬で終わる!?」


「…まあ、あんなものだ」


「あんた、レベルどれくらいあるんだよ…」


「結構高いぞ」


 声は抑えているが、興奮は隠せていない賭稲。

 二人はさらに奥へと進んでいく。


 どれほど進んだだろうか…


 ロックハウンドだけではない。

 巨大な甲殻虫、影のように揺らぐ魔物、地面から突き出す触手。

 そのどれもが、平均レベル35帯に相応しい強敵だった。


「…すげぇ…」


 賭稲は呟く。

 哲人はほとんど一人でそれらを処理していた。

 無駄のない動き。

 危険な間合いに入る前に仕留める判断力。


「(なんだこの人…マジで何者…?)」


 最初の軽口はもう出てこない。

 代わりにあるのは純粋な恐怖と、少しの尊敬。

 一方の哲人も、賭稲のスキル『幸運7』の効果を実感していた。


「(貴重な素材がたくさん入手できたな)」


 賭稲のスキル『幸運7』の効果はその名の通り、ダンジョン内で『幸運』になる効果。

 貴重な素材も手に入るし、戦闘も有利に働く。

 慣れない武器でもうまく戦えているのは、単に哲人のレベルでごり押ししているだけではない。

 彼の幸運7のスキルのおかげでもある。

 そして…


「…ストップ」


 哲人が手を上げる。

 足を止める賭稲。

 前方に広い空間が開けていた。

 今までとは明らかに違う空洞。


「これは…」


 賭稲が呟く。

 地面には無数の傷跡がある。

 壁には抉れた痕が。

 あきらかに、先ほどとは空気が違う。

 重く張り詰めている。


「…いる」


 哲人が小さく呟いた。

 それとともに、賭稲の背筋に冷たいものが走る。

 軽い気持ちで来たはずのダンジョン。

 臨時で組んだだけの相手だったはず。

 だが今、明確な死の気配を感じた。


「なあ…」


 賭稲が震える声で言う。


「これ…マジでヤバいやつじゃ…」


 哲人は、ゆっくりと魔導銃剣を構える。

 暗闇の奥で、何かが動いた。

 もう、引き返せない。


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今後ともよろしくお願いします。

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