兄と妹
「ふぅ・・・」
ルーガリは会議がひと段落して完全武装の黒い鎧と剣と盾を背負って一人でアリシアに訓練場へと向かっていた。
理由は妹のセフィリアに手合わせをお願いされたから。
(・・・セフィリアも物凄い勢いで成長しているな。俺で相手になるのか疑問だが、それでも兄として壁になってやらんとな。)
そう思いながら訓練場に到着し中へ入る。
中ではセフィリアが白メインで和系軽装備と愛刀の白露を腰に着けて目を閉じて座り瞑想をしていた。
「・・・。」
「・・・。」
ルーガリは何も言わずただ見とれていた。
最愛の妹が美しく、そして強い剣士として育っている事に。
「こうして二人きりで会うのは久しぶりですね、お兄様。」
目を開けてルーガリを見つめる。
「ああ。久しいな。元気だったか?。」
「勿論です。お兄様も元気そうで何よりです。」
「まぁローミナが完全に管理してくれてるな。」
「仲が良くて良いことです。ローミナならお兄様を安心して預けられる。」
ニコニコと笑いながらその場を立つ。
「やるのか?。」
「ええ。じゃないとこの先の選択が出来ませんので。」
そう言って構えるセフィリア。
「そうか。なら遠慮はいならないぞ。」
ルーガリは剣と盾持ち構える。
そして睨み合いが始まる。
互いに動かず様子を伺っている。
ルーガリはセフィリアの戦い方に違和感がある事に気が付いているので様子見。
セフィリアはルーガリの隙を伺っているだけだが動かないので攻撃が出来ずにいる。
しかし先に動いたのはルーガリだった。
盾を構えて走り出し一気に距離を詰めようとした。
「甘いです。」
攻撃範囲に入った為、セフィリアの音速すら超える抜刀攻撃が開始される。
一発一発致命傷になりやすい箇所へ飛んでくるが確実に防ぐルーガリ。
「速いが対処は楽だぞ。」
そう言って懐まで一気に詰め斬りかかる。
「分かってますよ。」
そう言って斬り合いは発生する。
セフィリアは抜刀攻撃を挟みながら手数で攻め、受け流しで守りながら戦っている。
ルーガリは確実に防ぎながら隙を見て攻撃をしている。
「流石に前に比べると一撃の重さと速さが増しているな。」
「ありがたい事です。」
しかしセフィリアには決定打となる攻撃が一切無いので次第に追い詰められていく。
抜刀で一撃必殺が狙える首、肘や膝などの装甲の薄い関節部分を重点的攻撃をするが、
首は盾で完全に防がれ、関節部分は最低限しか通らない。
一方ルーガリは受け流しに対して攻撃を控えてパリィを狙えるかタイミングを伺っている。
そして一瞬の抜刀攻撃をタイミングよくパリィで攻撃を弾く。
「!?。」
態勢を崩してそのまま盾で思いっきり地面に叩きつけられ首に剣を突き付けられる。
「・・・参りました。」
「ああ。」
そう言ってセフィリアから離れ手を差し伸べる。
セフィリアはそれを掴み立ち上がる。
「セフィリアも随分と強くなったな。」
「ありがとうございます。ですが今回で改めて実感しました。このままではお兄様には勝てないと。」
「なぁ・・・。」
「何でしょうか?。」
「お兄様って・・・。」
「お兄ちゃんの方がいいですか?。」
「そうしてくれ。お兄様は違和感しかない。あと敬語もいらないぞ?。」
クスクスと笑いながら、
「いえ。これは上の者に対しての最低限のマナーって物です。二人っきりの時はお兄ちゃんと呼びますが人前ではお兄様と呼びますね。」
ニコっと笑いながら言う。
「では私は失礼しますね。夜遅くにありがとうございました。」
「ああ。」
そう言って訓練所から出ていく。
その後ろ姿をただただ見送るルーガリ。
「本当に強くなったな・・・。」
「だろ?。」
「・・・。」
ゼラがいきなり現れたが驚きもせず呆れる。
「まぁ助かったよ。」
「礼などいらん。これはセフィリアの為だ。」
事前にゼラから話を聞かされていたルーガリ。
ここ最近のセフィリアは戦いに対して悩み続けている事。
強くはなったが弱点を明白化した事による抜刀術の信用が落ちる事に信じきれないでいた事。
「お前に聞いた時は抜刀術が俺に対して有効的な攻撃じゃないと説明したよな。」
「そうだな。ルーガリだけじゃなくガンガオに対しても有効ではないな。」
「本当にそうなのか?。」
「・・・。」
ルーガリは戦って気が付いた事があった。
「抜刀術は確かに俺みたいな守りが高い相手には有効的ではないのは分かった。しかしそれはセフィリアがまだ最上級職だからじゃないのか?。俺と対等のユニーク職でレベルが同じであればセフィリアの方が強いと思うのだが?。」
ルーガリは職差による能力差によって勝てたと思っている。
「まぁそう思うよな。」
ゼラは苦笑いしながら言う。
「実際は確かにこのまま育って戦えばな。」
「だろうな。」
「だがなそれはお前の装備がそのままの場合だ。」
「というと?。」
「実際お前の装備って最上位装備でしかも強化が済んでいない。一方のセフィリアが握っているのはユニーク武器で俺が強化し終えた最強の武器でこれなんだよ。」
「なるほど。俺が装備の質が上がればまた同じ戦いになるとお前は言うんだな。」
「そう。だから育ち切ったセフィリアと育ち切ったルーガリで戦えば結局はセフィリアが不利だ。だから特化は諦めて貰いたかった。まぁ本人がこの道を貫きたいと言うなら俺は止めないがな。」
「お前はいつもそうだよな。意見は尊重するがお前が描いている事も言って自分とお前の意見を照らし合わせてから答えを言わせる。」
「まぁしたい事を止めたいとは思わないからな。したい事をして失敗したなら俺が後でサポートするだけだ。」
そう言ってアイテムボックスから武器と防具一式をルーガリに渡す。
色は白銀色のフルプレート。
兜は軽装風の物となっており視野が確保されている。
剣は黒に刃の部分は赤黒い。
盾も前使っていた物より大きく赤黒くまるでドラゴンの素材を使ったような盾。
「これは?。」
「俺がお前の為に作った防具だ。ちなみに今の着けている武防具一式より5周りぐらい強くしたもんだ。」
「・・・。良いのか?。」
「まぁ着けてみてくれよ。」
「ああ。」
そう言って今着けている鎧を脱ぎ、新しく貰った防具を装備し剣と盾を握る。
「・・・。」
無言のまま走ったり、屈伸したり、構えて素振りを開始する。
暫く経ってルーガリが言った。
「軽すぎないか?。それでいて関節部分の動き方が自然すぎる。」
「軽くはないぞ?。それ一応前の装備よりは軽いがそれでも3分の2程の重さだし。関節部分は企業秘密だ。ってな訳だ。手合わせ願おうか。」
「なんとなくそうなると思っていた。」
ゼラはティルフィングを構える。
「いつもお主は楽しそうじゃのう・・・。」
ティルフィングは呆れながらもどこか嬉しそうであった。
「それがお前の武器か。」
「まぁ・・・な!!。」
一瞬でルーガリの懐に潜り込み突く。
「!?。」
しかし意識せずに盾を持っている左腕が腕が動き防ぐ。
「流石自動防御。」
「お前・・・。前の呪いの盾を・・・。」
「いや。呪いは使ってない。ちゃんとした誰でも使える盾ってよりその防具一式の性能。この間セフィリア達が見つけて討伐した白銀亀って奴の防具。一式装備すれば自動防御、反応速度向上の能力が付与されられる超強い防具。」
「白銀亀ってシロガネタートルか。目撃情報が少ない上に王都すら半壊する強さを持ってるはずだが・・・。そうか・・・。セフィリアがそこまで強くなっていたのか・・・。」
「まぁ実際加工する上で甲羅は硬すぎて普通の加工が不可能って言われたからな。俺が無理矢理作ったがどうやら問題なさそうだな。」
楽しそうに笑い突撃してくるゼラに自動的に動く防御とその余裕から次の攻撃を予測しながら攻撃を置くように振るルーガリ。
「あ~。なんかこの感じPvPを思い出すなぁ~。」
笑いながらも確実に避けながら攻めるゼラ。
その後フェイントで自動防御すら段々と機能しなくなっていた。
「っち・・・。やはりお前が相手だと自動防御が頼りにならんな!!。」
ルーガリも楽しくなってきたのか自動防御を頼りにするのではなくあくまでアシストとして使うようになりフェイントに対抗する。
「やっぱりお前は強いよルーガリ!!。」
「お前こそ!!。」
金属同士がぶつかり合う騒音と衝撃によって建物が震え出す。
「アハハハ!!。」
「フハハハ!!。」
(ダメだ個奴ら・・・。)
ティルフィングがそう思いつつも振られ続ける。
「アウェイクカイザー!!」
ルーガリがそう唱えた後、灰色のオーラを身に纏った。
効果は一定時間全能力2倍、最終ダメージ2倍、被ダメージ半減、反射速度上昇。
「ガンガオにも使った事がない技だ。喜べよゼラ!!。」
「喜んでるさ!!。オールブースト!!。」
そこからの戦いは互いが消えたりする速度で突っ込んだり、斬り合いが発生する。
「ぬぅ・・・。これでも余裕についてこれるか・・・。やはりお前は凄いな。」
「いやいや。お前のも相当だぞ?。その強さはやばい。初めてだ。こっちに来てからここまで強い奴とやり合えるなんて思ってなかったからな。」
「そう言いながら余裕をもって攻めているじゃないか。」
「まぁそれでもまだ上には上が居るからな!!。」
片手で振っていたのを両手で握り振るゼラ。
戦い方が変化しルーガリの反応が遅れる。
「重い・・・。」
「どうした?。まだこんなもんじゃないだろ?。」
「分かってはいるさ・・・。だが上手く扱えない物を・・・。」
「俺なら受け止めてやるから問題ない。解放しろ。これはお前の強さの解放も兼ねているんだからな。」
「・・・。分かった。どうなっても知らんぞ。」
そう言ってゼラから一旦距離をとる。
「すぅ・・・はぁ・・・。」
深呼吸をし集中する。
「我に眠りし最古の帝王よ。今、我に力を与えよ。」
ルーガリの周囲に灰色の魔力が集まってくる。
「来たれ、初代帝王エゼリオ。」
そして雷がルーガリを飲み込む。
土煙が立ち上がり見えなくなる。
ゼラはただただどうなるか剣を構え見つめるだけ。
「懐かしい魔力を感じるな。」
ティルフィングが語る。
「そうなのか?。」
「ああ。主以外に唯一我を握る事が出来た人間。忘れもせんよ。」
いきなり風が吹き荒れ土煙が晴れる。
そこにはルーガリと見知らぬ少女が立っていた。
「・・・。ルー。お主なぜ私を呼んだのだ?。」
「簡単な話だ。全力を出したいと思ったからだ。」
「ふ~ん。」
そしてゼラの方を見る。
「初めましてだな小僧。私はエゼリオ。今から約1000年前の初代帝王だ。」
「どうも。俺はゼラだ!?。」
自己紹介途中に一瞬で懐に潜り込まれ殴られる。
それをティルフィングで防いでダメージは発生しなかった。
「ほう。物凄い反応速度だな。ルーが本気を出したいのも理解が出来る。」
「今のをゼラは防ぐのか・・・。」
「落ち込むな。ほら体を貸せ。今日で本格的に力の解放を覚えろよ?。」
ルーガリの体に入る。
そして灰色のオーラが一段と強く纏わりついている。
「ほう。装備が新しい物だな。これ良い物だな。」
ルーガリの口調がエゼリオになっている。
「それにしても様子見だけか?。」
何もしてこないゼラの方へ向き言う。
「いや。ただ単に準備が終わるのを待ってただけだ。」
「随分と余裕だな。その余裕いつまでもつかな!!。」




