その5 狙撃兵
「どうしてそんな事を言うのよ?」ホーリーはロクの言葉に慌てた。
「2班とも敵と接触してないんだ。おかしいよ。わざと敵に泳がされている。そんな感じがする・・・」とロク。
「なら今からでも呼び戻したら?」
「ダブルらは可能だが、バズーらは地下なら無理だな?」
「まあ、あたいはここに居るよりは暴れたほうがいいけどね・・・キキは何て言ってる?」
そこに陽とキキが戻ってくる。
「あの・・・何か?」二人の顔を伺う陽。
「ここをお前に任す。24時間で戻らなければ、ここを撤退し、キャンプをここより20キロ下げるんだ!」
「はあ・・・」陽は一瞬戸惑いホーリーを見る。
「聞いての通りよ!残りの8人を連れて下がって!」
「もし、前の隊がここを目指して帰ってきたら?」
「その時は、戻って拾ってやってくれよ、陽?」
「わかりましたが・・・」不服そうな陽。
「前の隊には、イブやカイ、レッドがいた・・・」
ロクは改まってキキらに向き合う。
「そうね・・・」うつむくキキ。
「そいつらがどうなったのか、知るのも俺たちの役目だろ?ホーリー?」
「そうだな・・・わかった行こう!」
「キキもいいか?」とロク。
「言ったら聞かないのがあんたでしょ?」とキキ。
「なら決まりだ!じゃあここを頼むぞ、陽?」
「は、はい・・・」
バズー班。真っ暗なトンネルを隊は前進していた。疲れなのか乾きなのか、何人かは口を開けている者が多くなってきていた。
「ブイ、ここでどの辺だ?」とバズー。
「入口から10キロは歩いたはず・・・」
「ちゃんと測っておけよ!」と愚痴るバズー。
「しかし・・・中は暑いな。水筒の水が無くなるぜ!」とライ。
「無駄に水を飲むなよ!」とバズー。
「しかしどこまで続くんだ?」と不安なキーン。
暗闇の先を見つめるバズーたち。
ダブル班。日が高くなり、隊は廃墟の瓦礫の山を隠れる様に、志村口に向かっていた。
「ダブル?夜まで待った方がいいんじゃないか?」と歩行中のモスキート。
「ああ、そうだな。この辺は敵兵が多すぎる。隠れる瓦礫も少ないな?」
「気づいたか?12名のバズー班を追いかけてる足跡が1つ。」
残が一つの足跡を見つけ報告に来た。
「追われてるのか?バズーら?」
「こう多いとな・・・気づかれないのも変だと感じてた・・・」
「どうする?ダブル?」とモスキート。
「無線は届かないか?」と残。
「先方隊の奴らもうトンネルに入ってるだろ?ここからでは届かないぞ!」
その時、ダブルのすぐ側に居た若い兵の足に銃弾が撃ち込まれる。兵は足を押さえ倒れ込んだ。すぐ身を伏せるダブルたち。
「どこからだ!?」銃声の方向を確認するダブル。
「6時の方向!撃たれた後に音が来た。距離500ってとこだ!」と残が叫ぶ。
ダブルが若い兵を見ると、右足脛を押さえ苦しんでいる。大量の血が飛び散っている。
「待ってろ。今助けてやる!」
「は、はい・・・」
若い兵は、這い蹲り移動をしようと試みる。しかし、2発目の銃弾が彼を襲った。若い兵は右肩を撃ち抜かれ、自力で起き上がることも不可能となっていた。
「ダブル、援護しろ!?俺が助ける!」とモスキート。
「駄目だ!これは敵の罠だ!」とダブル。
「このままでは、出血が多くて奴は・・・」
「駄目だ!まだ動くな!」
ダブルは隠れながら若い兵に声を掛けた。
「おい、そこから6時の方向は何が見える?」
「4階建ての高い廃墟があります・・・」
「残!迂回してあのビルに廻りこめないか?」
「廃墟が少ない!身を隠せない!」と残。
「こんな時、キーンかバズーが居てくれたら・・・残?遠回りでいい。あの廃墟に回り込んでくれ!」
「わかった・・・」
バズー班はトンネルを進むこと14キロ程歩いていた。現神保町付近。するとトンネルは天井から崩れ落ちた、コンクリートの瓦礫で塞がっている。人ひとり通れない。
「行き止まりか!?」立ち止まるバズーたち。
「いや、上の方はそうでもない。人ひとりくらいなら通り抜け出来るぞ!」とブイがライトを天井に当てた。
「駄目だ。あの感じではいつ崩れるか分かんないぞ。」とライ。
ライトを照らし全員が見上げる天井部分は、いつ崩れ落ちるか分からない状態であった。
「戻ろう、バズー?危険過ぎる・・・」とキーン。
「ブイ、短波無線を!」
「味方が聞いてればいいが、敵にも居場所を知られてしまう。いいのか?」
「マニュアル通りで頼む!」
「わかった・・・」ブイが背中の無線機を準備し始めた。
そんな時、キーンがトンネル内の異変に気づいた。
「聞こえるか・・・な、なんだこの音・・・?」
「ん・・・?」バズーも耳を澄ます。
「エンジン音!?SCだ!」
「隊を戦闘隊形に展開する!」バズー。
隊がトンネル内で展開する中、ブイは無線を操作を続ける。
「答えてくれ・・・P4・・・」
ダブル班、志村口まで2キロの地点。
「間違いない!こいつ狙撃のプロだ・・・しかもバズーたちを追っていた奴だ!」とダブル。
「奴が弱ってきてる。助けるぞ!?」若い兵を気遣うモスキート。
「駄目だ!今出れば撃たれるぞ!」
「奴を見殺しには出来ない!」
ダブルらは撃たれた若い兵の様子を見るが、明らかに先程より息が荒くなって来ていた。
「自分で止血は出来ないか?」とダブル。
「やってみます!」
ダブルは、持っていた車の下部の爆弾を探す為の鏡を持ち出すと、瓦礫の端へそっと迫り出し、4階建ての建物の様子を伺った。するとその鏡は瓦礫の端を出した瞬間に3発目の銃弾に狙撃された。
「くっ、野郎・・・」
「やるな・・・覗くなよと!お前の好みのタイプじゃないか?」まだ余裕のモスキート。
「ふっ・・・らしいな・・・ボディーに自信がないんだろ!?」苦笑いのダブル。
「ダブル!援護しろ!」モスキートはそこを立ち上がろうする。
「無茶だ。かなりの腕前だぞ。出れば確実に撃たれる!」
「一か八かさ・・・」
そう言うとモスキートは、若い兵に向かって走り出した。
「モスキート!」
モスキートは若い兵に近づくと、瓦礫の影に運ぼうと彼の足を持ち始めた。ダブルは狙いも分からないまま、4階建ての建物に機関銃を乱射した。その時だった。モスキートの右足首に一発の銃弾が貫通する。声を上げその場に倒れるモスキート。
「モスキートっ!!」
モスキートは若い兵の側で蹲っていた。ダブルは2人のそばにいるもう一人の兵に声を掛けた。
「おい?そこからモスキートを連れ出せるか?」
「無理です。2メーターはあります!」
「足だけだ!心配するな!」足を押さえるモスキート。
「そこにいて動くな!動くとまた撃たれる!」とダブル。
「わ、わかった・・・」
すると4発目の銃声が聞こえた。銃弾は最初に撃たれた若い兵を貫通。若い兵はピクリとも動かなくなった。
「くそっ!代わりが出来たから用済みだとよ!」とダブル。
「そうらしいな・・・」モスキートは苦笑い。
「野郎・・・こっちを弄びやがって・・・残?聞こえるか?まだか!?」無線を飛ばすダブル。
『今、奴の右に回った。しかし、ここからでは奴を確認出来ない!野郎、いい物件を選んでやがるぞ!』
「場所といい、配置といい・・・こいつキレるな・・・?」とダブル。
「後方に砂煙!バイク隊多数!」後方の誰かが叫んだ。
「くっ・・・囲まれたか・・・?逃げ道なしか・・・?」ダブルはひとり焦っていた。