その4 後方の司令官
その頃バズーの班は、現板橋区志村付近にある通称「志村口」に到着していた。
当時P4は、施設の上の瓦礫を整備する事を止め、核戦争前の地下鉄だった所をSC用の道として整備していた。整備するにはあまりのもの瓦礫の量。また線路だった鉄の再利用もその理由と言われている。
P4は瓦礫の要塞の道を選択したのだ。その際、北のP5、P6からの搬入の役割をしていたのがこの「志村口」にあたる。旧都営三田線が地下鉄から地上に上がる際のトンネルで、この他にも日比谷線の中目黒口、千代田線の代々木口など当時は5個の搬入口があったと言われている。しかし、近年になるとジプシャン軍の攻撃が激しくなり、極秘の搬入口を除いては全てP4自ら爆破し、封鎖してしまったのである。
バズーとキーンたちは、その志村口入口前に立っていた。
「中から微かだが風が来るな。」
キーンはポケットからジッポライターを取り出すと、入口付近で火を付けていた。
「やはり、封鎖はされてないな・・・ブイ、ライ。赤外線スコープ装備だ!」とバズー。
「ほい来た!」
「隊は逆V字隊形。進むぞ!ライは地雷見落とすなよ!」
「はいよ!」
「キーン。後方は任せる。」
「了解。二百メートル後でいいか?」とキーン。
「任せる。ならみんな行くぜ!」
バズーの手馴れた掛け声が、志村口の中に響き渡った。バズー班は、真っ暗なトンネルを進み始める。ブイとライは左右の先頭を赤外線スコープを掛け歩き出していた。バズーは中央の一番後方。更にキーンはその後方を後ろ向きに歩いていた。
「足跡が8名。まだ新しい。これはポリスのもの・・・だが進行方向だけだ・・・帰りはない・・・」とブイ。
「2期生のもんか?」とライ。
「恐らく・・・」
「2期生もここを・・・」
隊はゆっくりと歩いて行く。既に入り口の明かりは遠く、トンネル内は明かりらしい明かりはなくなってきた。
「全員の赤外線スコープ着装!」とバズー。
すると隊の全員が暗視用のメガネを着装した。足音も立てずに歩く隊は、トンネルの中では隊員らの呼吸の音しか聞こえなくなってきた。トンネルの壁には銃弾の跡が目立つようになり、途中には炎上したSCが2,3台見える。
「ここで戦闘があったのか?」
「SCは両方ともポリスのものだ。この様子ではもう数年経っているな。」とブイ。
「各員、そのまま前進だ。」
バズー隊はトンネルの先へと突き進む。
その頃、2班のダブル隊はようやくP4の瓦礫の街に辿り着いていた。東の空は少し明るくなっていた。
「バズーらは、やはり志村口に向かったな。」と残。
「SCは通れないと聞くが・・・人は通行可能なのか?」とダブル。
「おかしいと思わないか?ここに来るまで、お出迎えもない。」
「敵も余裕がないんだろ。行くぞ。」
ダブルの隊が更に奥に入ろうとしていた。しかしそのダブルの隊を付け狙う影があった。
P4ジプシャン軍北方面キャンプ。そこは、ある瓦礫のビル内に設けられた、基地という言葉には程遠いものだった。そこには30台の戦闘用バイクが置かれ、20名近い兵士がいる。カードゲーム耽る者や海草酒を仲間と飲み酔っ払っている者もいた。そこへある兵士がバイクでやって来ては、一番奥の兵に歩み寄って行く。
「大広様」
その奥にいたのは、後の“荒野の死神”と呼ばれる、大広だった。
「どうしたのですか?」
「援軍の第二部隊と思われます。この者らも志村口に向かっております。」
「タケシ様からは手を出すなと言われてます。このまま監視をお願い出来ますか?」
「了解しました。」
「それと誰かタケシ様に使いを出してください。細かく報告を・・・」
「はい。」
「志村口・・・あそこは封鎖されたのでは?なぜあそこを・・・?」
P4方面ジプシャン軍指令室。タケシのいる部屋に石森が入ってくる。
「タケシ様。北の大広から使いが・・・」と石森。
「なんだ?」とタケシは振り向いた。
「昨日の敵の偵察隊です。第二次部隊を発見した様子です。」
「手は出してないようだな。」
「はい、一次部隊は志村口に入った様子です。」
「前回もあそこだったな?何かあるのか?」
「以前調べた際は、途中で行き止まりになっているはずですが・・・」
「隊を送り、もう一度調べるべきだな。」
「はい。」
「それと、前回の3人の四天王の首はどうした?」
「はい、昨日寛子様の使いの者に運ばせております。」
「来るぞ!もう一人・・・」
「はあ?」
「いつも通り、女は生かして捕まえるんだ。女は口を割る。どうせ奴らは、女も戦場に出して来るアホばかりだ。そこを突け!四天王のもう一人は必ず来る・・・」
「わかりました。大広に伝いえます。我が隊からも人員を出します。」
ロクたちがいるキャンプ。キキが無線機を手にしている。ロクとホーリーはそばでその様子を見ている。
「わかった・・・そう伝える。」とキキ。
「どうした?」
「ダブル班も志村口に向かうと。」
「あそこは、封鎖されたって・・・」
「バズーの考えはSCは無理だけど、歩行なら行けるんじゃないかと・・・」
「問題はどうやってP4とコンタクトを取るかね?」
「さあな?今回の目的は第一陣の捜索だ。P4は関係ない。」
「もし取り付いたらどうするの?」
「P4の援軍にまわるさ。ただ今回そんな余裕はないだろ。」
「大丈夫かしら?」
「俺らも出るか?キキ準備をしてくれ。」
「今回はうちの班は新人が多い。無理よ。」とホーリー。
「行くのはこの3人だけだ。」
「そう来ると思った・・・」とホーリー。
「なに、入口までだよ。偵察偵察。」
「ただね・・・指揮官は、前線に行くもんじゃないわ。」
「いつから、俺が指揮官だ?この隊はバズーが・・・」
「わかってるわ。ただそのバズーがあなたをここに残した意味も考えてよ。」
「ホーリー・・・」
「今回の総大将は事実上はあんたよ!総大将がわざわざ敵のど真ん中に行くの?」
「俺たちに上も下もないよ。仲間を助けに行くのに命令もくそもない。」
「ロク・・・あんた・・・」
「ホーリー?ロクが行くって言うなら、私たちは行くだけでしょ?」とキキ。
「あんたたち・・・もう馬鹿ばっかなんだから・・・」
「なら用意を始めるわよ・・・陽?陽はいて?」
キキはその部屋を出て行った。
「これは敵の罠だ。このままだと隊は全滅する。」
「ま、まさか・・・」




