その1 拘束のロク
暗い部屋の中、ロクが膝を抱え座り込んでいた。部屋は狭く、まるで牢屋の作り。ロクは一人下を向きながら床に座り込んでいる。そこへドアを開ける音が聞こえてきた。中に入って来たのは、機関銃を構えた兵が2名と女医の高田だった。兵はドア付近に一人、ロクの側に一人、高田はロクに近づき上着を腹の部分からめくり上る。
「もう出血してないわね・・・?」と高田。
「はい・・・痛みもありません・・・」虚ろな顔のロク。
「さすが・・・と言いたい所だけど、普通なら死んでるわよ!」
「すいません・・・」座りながらペコリと頭を下げるロク。
「午後から取調べね?それまで点滴よ。いい?」
「はい・・・」
高田は備え付けの点滴を変えていくと、すぐ部屋を出て行った。最後に兵も出るとロクはまた一人になった。暗い部屋はまた静かになった。ロクは備え付けのベットに横たわることもなく床に座り込んでいた。
地下3階の取調室。ロクは後ろに手錠をはめられイスに座っている。ロクの後ろには銃を構えた兵が一人。そこにダブルが入って来る。
「よお!」とダブル
「おお・・・」苦笑いのロク。
「ロク、具合はどうだ!?」
「俺はいい・・・キーンと死龍は?」
「キーンはもうリハビリを始めた。またバイクに乗るってよ!死龍は・・・」
ダブルは言葉を詰まらせた。
「死龍は!?どうしたんだ!?」顔色を変えるロク。
「まだ、目が覚めない・・・腕、内臓、頭・・・正直命があったのは奇跡だと医者が言ってる・・・」
「俺のせいだ・・・」うつ向くロクにダブルが声を掛ける。
「ロク・・・」
「俺が戦闘配備中に逃がしたから・・・」
「・・・それと桑田だが・・・」ダブルは話を変えた。
「!」更に顔色を変えるロク。
「昨日、埋葬した・・・」
「そうか・・・すまん、面倒を掛けた・・・」
ロクは治療を受けながら取調べを受ける毎日だった。取調べはほぼ毎日ダブルが担当している。ロクがいる独房は、治療も出来る設備に鳴っている部屋だが、ドア一つしかない狭い病室だった。ロクはベットに横たわらず、床に毎日座り込んでいた。一人膝小僧を抱えると、目を瞑っていた。
それは今から3年前・・・P6指令室に、久弥と弘士の姿がある。
「2期生からの連絡が絶って約1ヶ月です・・・」と弘士。
「P4は未だ、援軍を求めている・・・」と当時司令の久弥。
「こちらから兵を出すといっても・・・3期、4期のもっと若い連中ばかりですよ?彼らでまともな救援など・・・」
「弘士、3期のバズーを呼べ!」
「は、はい!」慌てて席を立つ若き参謀時代の弘士。
P6台会議室。久弥と弘士、バズーの3人だけがいる。
「P4へ出撃ですか?」とバズー
「うむ・・・」久弥が髭を触る。
「2期の連中は?」
「連絡がない・・・」重い声の弘士。
「前回はイブや中心に3期からも、何人か出しているはず・・・連絡がないって・・・タンクたちに何かあったんじゃあ・・・?」不安がるバズー。
「それを現地に確認しに行って欲しいのじゃ・・・」と久弥。
「簡単に言ってくれますね?行きますよ!どこへでも・・・それで隊の編成は?」
「三班編成の36名・・・人員は任すよ・・・」
「少ない編成ですね・・・分かりました。それで出発は?」
「明日の朝にはここを・・・」
「き、急ですね・・・?」目を細めるバズー。
「P4も苦しいと見てる・・・急いで欲しい!」と久弥。
「はあ・・・」
P6の大会議室。3期生の10名が集められていた。バズー、キーン、ダブル、ロク、キキ、ホーリー、残、ライ、モスキート、ブイの10名。みな歳は15から18くらいの者ばかりだった。その内、女性隊員はキキとホーリーの2名。
「明日、06時30分に出発する。いいな?」とバズー。
「SCはどうするんだ?」
彼はモスキート。作戦戦略担当。隊の中では一番小柄からそう言われている。
「P4はSCは無理だ!」
「・・・と言うと?」
彼はブイ。無線、通信、機械のプロ。名前の由来はボルテージからなる。
「途中まで、トラックで行く。それから歩きだ。」
「歩くって、どの位だ?距離によって持っていく装備も変わってくる?」
彼は残。爆破のプロ。彼が仕掛けると何も残らないというのが名前の由来。
「約25キロという話だ。」
「SCがないと辛いな・・・装備、食料・・・どれだけあると思ってるんだ?」
彼はライ。地雷専門屋。名前の由来は地雷のライ。
「乗り捨てて、わざわざ敵にやっちまうのか?もったいない・・・それと各班、4期、5期からのチョイスは各班長にお任せする。以上だが他になにかあるか?なければ明日早いのでこれで解散する。」
「了解!!」各々会議室を出ていく。
出発当日、北ゲート付近には36名の兵士が集まっていた。
「なんで、ロクのとこに女性ばっかり集まるんだよ!しかもまあこんなにたくさん武器いるか・・・?アサルトライフルにスナイパー用のライフル?こんないるかよ?おお!グレネードランチャーまである!?P4ごと吹き飛ばす気かよ!?バズーのバズーカで十分だろ!?誰が使うんだよ!?」
ダブルはロクの班に、女性が多い事にバズーに噛み付き不平を言い出す。それを聞いていたホーリーがダブルの側に近寄る。
「そいつはあたいよ!あらダブルさん?あんたの班じゃおちおち寝られやしないわ。いつ襲われるか分からないもん。そうでしょキキ?」とホーリー。
「う、うん・・・」と困惑のキキ。
「お前みたいなデカ女!襲うわけないだろ!しかもロクだって男じゃねぇか?ロクはいいのか!?」とダブル。
「風呂も入らないあんたより、ロク班長の方がまだ安心だわ!」鼻でダブルを笑うホーリー。
「ロクもいつもおいしい所を・・・臭うかよ?しょうがないだろ?こう雨が降らないんじゃよ!!そんなに臭うかよ!?」とダブル。
皆が出発準備の中、そこへ当時12歳の桑田がやって来る。
「ダブルさん!?ロクさんは?」となつみ。
「なんだなつみ?ここは軍事施設だぞ!なぜここに?」
「今日から、ポリスメカニックです!及び指令室のオペです!!」
桑田は胸のIDを自慢げに見せびらかす。
「スゲェ・・・そ、そうか・・・今日からか指令室配属か?・・・おい!ロク?」
すると、ドライバ-と打ち合わせをしていたロクが、皆の前にやって来た。
「どうしたんだ?・・・な、なつみか?なんでここにいるんだ?」
「今日から、地下勤務ですよ!忘れたんですか?」
「そうか、今日からだったか・・・」
「P4ですよね?約束のお土産お願いしますね!」と小声のなつみ。
「遠足じゃねぇし・・・」
「それと種がいいです。」
「種?」
「植物ならなんでも・・・P4に保管してるとか、南には植物があるって聞いてますよ。」
「ダブル?それほんとか?」ダブルの顔を伺うロク。
「デマデマ・・・あるのはまだ俺らが口にしたことのない豚と牛の缶詰だよ!」
「ダブルさん!ゆ、夢がないなぁ・・・」呆れるなつみ。
「わかった、種だな?」
「はい!お願いします!」
「それと・・・これをお前にやるよ。」
ロクは腰のホルダーから白い拳銃を手渡した。
「ワイルド・マーガレット!?ロクさんの特注品じゃないですか!?」
「俺には、もう小さい。反動が少ない分、なつみでも平気なはずだ。砂埃や雨にも強い。お前が持ってろ!」
「いいんですか!?」銃を手渡され喜ぶなつみ。
「大事にしろよ!」
「はい!!」
「おいロク!そろそろ行くぜ!」とバズー。
バズーが各員に声を掛けた。
「さーて、行きますか?」なつみを見るロク。
「気をつけてください・・・」となつみ。
「ああ・・・」
まだあどけない笑顔でロクを見送るなつみがいた。
『この時・・・まだなつみは生きていた・・・』
現在、ロクの暗い独房。ロクは下を向いたまま床に座っていた。
「なつみ・・・」
独房の天井を見上げ、ロクは昔を思い出していた。




