その12 神の降り立つ街
第88エレベーター地上付近。キーンは一人の兵の肩につかまりながら移動していた。すると、キーンの目にタケシが地上に置き去りにしたストラトス3台が目に入る。
「ちょっと待て・・・」
キーンは兵を待たして、足を引きずりながらストラトスに近寄った。
「これが奴らのSCか・・・?」
キーンはストラトスの内部を伺った。すると、キーンはドアを開け中を覗いた時だった。中からピーピーという音が聞こえてくる。
「ん?」
キーンは急に顔色が変わった。
「み、みんなぁ!さ、下げれぇー!」
その瞬間、キーンの開けたストラトスは爆発を起こした。隣にあった2台のストラトスも同時に爆発する。キーンはもちろん、その近くにいたポリス兵4、5人も巻き添いになり、爆風に吹き飛ばされていた。
P6指令室。
「地上EV88付近で爆発確認!!」と柳沢。
「松井!キーンを呼べ!」弘士が指示を出す。
「はい!」
「我妻!館内の敵兵はどうした?」
「地下3階、Gブロック!ロクさん、バズーさんとダブルさんが追っています。」
「キーンさんの応答なし!」と松井。
「近くに兵はいないのか!?確認させろ!」
「了解!」
地下3階特別保護室。直美家族が保護されてる部屋だった。部屋の前には、ロクの部下シンが機関銃を持ち立哨している。そこにライダースーツを着た関根がやって来た。
「どうしたんですか?関根さん?そんな格好で?」とシン。
すると関根は、不意を付いてシンに発砲した。シンは撃たれ後方に倒れピクリともしない。部屋の中では、銃声に驚いたのか直美と勝也、雨音が身を寄せ合った。関根はシンの首から、部屋のIDを引き契るとカードで部屋のロックを解除した。部屋の中に入る関根。
「直美ね?」
「あ、あなたは?」
「すぐ来てちょうだい!」
「どういう事よ!?それに今の銃声!?弟たちは!?」
「あなただけよ。急いで敵が来る!」
「は、はい・・・すぐ戻りますよね?」
「急いで!」
「はい・・・」
直美は、勝也と雨音に言い聞かせるように話しかける。
「お姉ちゃん、すぐ戻るからここに居てね。」
「嫌だよ!ここにいてよ!」と雨音
「あなたが出たらここはロックするわ!早く!」関根が直美に叫ぶ。
「いい?待っててね!」
「嫌だよ!」と勝也
「勝也!雨音を守るんだよ!いい?」
直美は関根に言われるまま、部屋の外に出る。直美はシンが倒れているのを見つけると、少し不安になった。
「彼は?・・・死んでるの?」
「敵が侵入してるの!訳は後で話す。」
「意味が分からないです!?」
「あなた母親は?」
「いないです。幼い時に死んだって・・・」
「逢わせるわ!母親にね!」
「えっ?」
「逢いたくないの?」
「母は死んだと・・・?説明して下さい。」
「とにかく来て!」
関根は直美の腕を強引に引っ張った。
タケシらは人気のないポリスの地下の廊下を走っていた。時折後方を振り返っては、後方に発砲している。10人いた兵も既に6人になっている。
「車庫までもう少しです!」とヒデ。
「真・四天王・・・そもそも何なんですか?」と石森。
「あの親父が、最も恐れたもんだ!」走りながらタケシが語り始める。
「タケシ様の父上が?」
「死ぬ前に、親父はこう言った・・・P6を最後に攻撃しろと・・・あの時、それが何を意味していたのか俺も姉貴も分からなかった。」
「・・・」渋い表情のヒデ。
「核兵器が効かない街・・・ジプシーたちはこの街をこう呼んだ・・・神の降り立つ街だと・・・」
「神の街・・・」
「いつの間にかここはそう言われたんだ。この街には4人の神が住み、ここを守っていると・・・」
「それが真・四天王・・・?」
「神などいるわけがない!それを確かめたかった!そうする事で、親父を超えたかった・・・」
「タケシさま・・・」
「しかしあの女は言った。この地下に眠ると・・・いるんだ。本当にここに・・・」
「私も以前、聞いた事があります。本当の四天王は地下に眠っていると・・・」
「それを確かめたかったが・・・」
「ここです!」
ヒデはある部屋の入口で止まった。その時、薄暗い廊下に銃声が響く。タケシら6人は持っていた拳銃を撃ち落とされる。ヒデは慌てて拳銃を拾おうとした時だった。
「動くな!」
後ろを振り返ると、左手に拳銃、右手にバズーカを持ったバズーが立っている。
「バズーか・・・?」ヒデは懐かしい顔につい言葉が漏れた。
「動くなよ・・・廊下ごと吹き飛ばされたいか?」
「くっ・・・」
焦るタケシに対し、石森は余裕の顔を見せタケシたちの前に出る。
「タケシ様・・・ここは私が・・・」
「石森・・・」
「早坂さん、ヒデ・・・タケシ様を頼むぞ!」
石森はバズーを睨んだままのタケシに振り向く事はなかった。
「ああ・・・」タケシは石森の決意を察する。
「こいつは、俺が片付ける・・・」
「この状況で・・・言うね?それに見たツラだ・・・ヒデ?サンドウルフのヒデか?」
「久しぶりだな・・・バズー。」
「お前知り合い多いなぁ・・・?」と苦笑いのタケシ。
「まあ・・・」
すると、石森はバズーに一歩一歩近づいて行った。
「おいおい!」
バズーは肩にバズーカを構える。
「こんな狭いとこで撃てば、お前も死ぬぞ!」
「なに!?」
「俺は素手で人を殺したこともあるんだぜ・・・」
そう言うと石森はバズー目掛けて走り出した。バズーは慌ててバズーカーを石森に向けた。
「遅いぞ!」
石森はバズーのバズーカを押さえるとバズーを壁に押し付けた。
「タケシ様!今です!」
「ああ・・・行くぞ!」
タケシら5人は、自らの銃を拾うと2人を後に車庫内に入って行くが、ヒデは自らの拳銃を拾うとバズーに銃口を向けた。
「邪魔するんじゃねぇ!ヒデ!」
「なに!?」
「人の楽しみを横取りするな!!」
「正気か!?」
「いいからタケシ様と行け!!」
ヒデは石森の気迫に負け、銃口を下ろしタケシの後を追った。
「随分余裕じゃねぇか!」とバズー。
「その拳銃で6発使ったら、拳銃の弾は空だ・・・」
「ふん!バレていたか・・・」
石森もバズーも身長は2メートル近く。筋骨隆々。ややバズーが細く見える。2人はバズーカを中にして揉め合っていた。
「バズーカを持っているという事は、お前がバズーカと格闘のプロの四天王かい?」
「あっ!?さあな!てめぇで確かめろ!」
揉め合った直後、バズーカは廊下に放り出された。石森の拳銃も遠い。やや間合いを置く二人。
「俺はジプシャン軍第一SC隊副リーダーの石森・・・」
「俺は、P6機動部隊隊長バズー・・・」
「四天王・・・か・・・?」
「あのストラトスのドライバーか?」
2人は向き合い薄笑みを浮かべている。すると石森の方からファイティングポーズをゆっくり作ると、バズーもゆっくりポーズを作る。
「ワクワクするな?たまにはこういう趣向もいいだろ?」と石森。
「そうだな・・・」
「行くぜ!小僧」
「来いよ!おっさん!」
2人の間合いが少しづつ縮まっていく。
「楽しもうぜ!」と石森。
「ああ!」
2人は、ほぼ同時に拳を繰り出した。