その11 第一級戦闘配備
タケシは桑田の左腕では物足りず、今度は肩を撃たれて身動きが取れない右腕を足で踏みつけた。
「後・・・指は5本だ!」とタケシ。
「ふふふ・・・や、やってみろ・・・」
桑田はタケシを睨みながらも、目からは涙が流し強がってみせた。
「おいおい・・・こいつは吐かないぜ・・・」
ヒデはその様子を直視することが出来ず、関根に小声で話しかけた。
「あんたがスパイだったとはね・・・?」
「あんたこそ、いつからタケシ隊に?」と関根。
「ヒジリって女を捜しているんだが・・・知らないか?」
「その子なら地下6階よ!」
「何っ!?やはりここか・・・ここを連れ出したいんだが?この状況で無理な相談か?」
「無理ね、地下には入れないわよ!あんたもそのくらいは知ってるでしょ?」ヒデを睨む関根。
「どうすれば入れる?」甘い声で関根に問うヒデ。
「そうね・・・」
タケシが桑田の右腕に銃口を向けた時だった。館内の警報が突然甲高く鳴り響く。
「何だ!?」タケシは上を向いた。
「第一級戦闘配備!残念ね。もうこれより先の地下施設には入れないわよ!」
「なんだと!どういう事だ!?女!?」と早坂。
「その子のIDカードと暗証番号だけでは入れない。あと5分でここは完全封鎖する。」
「なら、こいつは用済みだな?」
タケシが桑田に銃を構える。
「殺さないでって言ったでしょ!?その子がいなければここを逃げれないわ。それより、地下に入るなら急ぎなさい!」
「どういう事だ?今入れないと・・・!?」
「下から兵が上がって来るはず・・・そこを襲いなさい。この先に非常出口がある。この警報から5分で完全閉鎖される。その扉の先、真・四天王は地下17階よ・・・」
「地下17階・・・そんなにここは深いのか?」とタケシ。
「あんた・・・なぜそんな事まで・・・」なつみが苦しみながら関根に問う。
「この子は、用が済んだら私が始末するわ・・・いいわね?」
関根は桑田のIDを強引に引き千切るとタケシに渡した。
「ここから上はこれで開くはずよ。逃げる際は、ここのSCを使いなさい!さあ急いで!」車のキーらしき物をタケシに投げる関根。
「くっ!・・・急ぐぞ!」ひとり納得が出来ないタケシ。
タケシや石森ら10名は外の様子を伺いながら、倉庫から出て行く。関根はその様子を見ながら、拳銃を桑田の頭に向ける。脅える桑田。
「ごめんね、なつみ・・・」
「くっ・・・・・・」
目を瞑る桑田。関根が桑田の頭に向け拳銃の引き金を引く。
タケシらがポリスの廊下を走っている。すると今いた倉庫付近から3発の銃声が聞こえる。一度振り返るタケシ。
「噂通り、冷酷な女だな・・・急ぐぞ!」
ロクは地下3階の廊下を走っていた。後方からバズーが走ってくる。
「敵は?」とバズー。
「どこにもいない・・・だがこの警報だ。これより下には行けんだろ!手分けして捜すぞ!」
「ああ!」左右に別れて廊下を走る二人。
タケシら10名。ヒデが道先案内をして先頭を走っている。
「あそこです!」
ヒデが1つの扉を指差した。タケシの兵がその扉に近づくと、何人かのポリス兵が出てくる。
「敵だ!」
4、5人のポリス兵が扉から出てくる。ポリス兵とタケシらの兵が狭い廊下で銃撃戦になってしまう。
「急げ!間もなく完全ロックになるぞ!」
「突破するんだ!」激しい銃撃戦で立ち往生するタケシたち。
しかしタケシは先頭に立ってポリス兵を撃ち殺していく。タケシの手の者も3名程撃たれて動かなくなっていた。全てのポリス兵が倒れるのを確認すると、タケシはすぐ扉に近づいたが、扉は閉まってしまう。扉に手を掛けるがビクともしない。
「遅かったか・・・封鎖されました!」
「くそがっ!」
タケシは厚い鉄の扉を叩いた。
「爆薬があります。扉を吹き飛ばします。」と石森。
「無理だ!核シェルターにあたる。核でもこの扉を破れないはず・・・」ヒデが石森を制止する。
「これまでだな・・・仕方ない・・・撤退する!」
「タケシ様・・・この下に何があるというのですか?」
「この下に眠る・・・全ポリスの頂点・・・あの親父が恐れた奴だ・・・それを確かめたかったが・・・」
「頂点・・・?」
ロクは廊下を警戒しながら歩いていると、廊下に血痕後を見つける。ロクは再度銃を構え直すと、その倉庫内にゆっくり入った。
『誰かいる・・・』
ロクはゆっくり倉庫内を歩き出すと、そこに血だらけの桑田を見つける。
「な、なつみ!?」
ロクは周りを警戒しながら桑田を抱きかかえた。
「なつみ!しっかりしろ!」
ロクは何度も桑田を揺さぶった。すると目を開ける桑田。
「ロ、ロクさん・・・?」
「しっかりしろ!お前・・・」
ロクは改めて桑田の様子を伺った。右肩を撃たれた形跡はあるが、応急処置をしている。左脇下には止血処置。その先を見てみると、手の甲辺りに包帯が巻かれていた。なぜか短いのに気がついた。
「お前・・・左指は?」
「タケシに・・・殺られました・・・えへ・・・」気丈に笑ってみせるなつみ。
「えへ、じゃないよ!なんで地下3階にいる?なんで指令室を出たんだ!?」
「自分の疑いは、自分で晴らしたくて・・・」
そう言うと桑田は、堪えていた涙を流し始めた。
「ば、ばかだな・・・それは俺らの仕事だろうが・・・」
桑田はコクリとうなずいた。ロクは桑田をマントの上から抱き締めた。
「それでタケシたちは?」
「地下17階に行くって・・・」
「地下17階って?」
「ロクさん・・・真・四天王ってなんですか?」
「真・四天王?なんだそれ?」
「奴ら、それに逢いに行くって・・・」
「心配するな。第一級戦闘配備だ。いくら奴らでもこの下には入れないはず・・・」
「はい・・・」
「俺はこれから奴らを追う。もう少ししたら医務室行け。関根さんに見て貰うんだ。」
「スパイ・・・せ、関根さんでした・・・」
「関根さんが・・・?」
「でも、この手当てをしてくれて、タケシから守ってくれたのも関根さんなんです。」
「はぁ?どういう事だ?」
今から、数分前。関根が桑田の左腕脇を縛っている。桑田は気を失っていたのか目を覚ました。
「・・・痛たたた・・・」
「起きたか?」
「なぜ・・・なぜです・・・?」
「指の事は、私を責めないで。まあ、あんたが暗証番号を言うとは思わなかったけど、昔からロクと同じで強情よね?」
関根は近くにあった棒で、更に左腕を絞り上げた。
「くくっ・・・!」激痛でか顔が歪むなつみ。
「右肩は、急所を外したわ。応急処置はした。命に別状はない。左手は脇から止血したけど、長時間放置しないで医務室に行きなさい。私の助手に見てもらいなさい。ただ敵兵がいるから静かになったらここを出て。」
「あなたの目的は・・・?」
「それは言えない。ただ・・・もうあなたに会うことはないわ。みんなにもね・・・」
「関根さん・・・」
「そんな目で見ないでよ・・・でもここにいた12年、楽しかったわよ!」
「なぜ、私を助けたんですか?」
「あなたを殺したら、ロクになにされるか・・・」
「関根さん・・・」
「いい?10分はここに隠れていなさい。タケシには殺した事になってるから。見つかったら今度こそ殺される。味方が来たら助けを呼びなさい。廊下に血痕を残しておく。すぐに見つけてくれるわ。10分以上止血は出来ないわ。じゃあね。」
関根は急ぎ拳銃を構え、倉庫を出て行った。
「そうか・・・関根さんが・・・」
「見つけても撃たないで下さい!」
「撃てるわけないだろ?しかし、どうしてあの人がスパイなんだ?地下には入れないはずだ?」
「よく事情はわかりません・・・」
「敵は何名だった?」
「約10人です。この先の緊急非常口に向いました。」
「わかった!」ロクは腹を押さえながら立ち上がる。
「そう言えば・・・お腹の怪我は?」心配そうななつみ。
「なんとか・・・する!」
「出た出た・・・気を付けて下さい。ヒデという男もその中にいましたから・・・」
「ヒデが・・・わかった!必ずお前の仇は取るよ。」
「はい!」
「ああ!拳銃・・・無くすなよ!」
そう言うとロクは、桑田にワイルドマーガレットを右手に握らせた。
「あ、ありがとうございます・・・」
「ここは動くな!いいな!」
ロクは倉庫を出て行った。ロクは倉庫を出るとすぐ蹲った。ロクは顔をしかめると、自らのマントを開いた。すると腹の出血がさっきより多なっていたのだ。
「くっ・・・痛み止め注射はあと1本・・・」




