表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四天王  作者: 原善
第四章 住所のないラブレター
83/209

その10 真・四天王

 第88エレベーター地下3階附室。拳銃を握りしめ、黒皮のライダースーツに狙いを付ける桑田。その者の顔を確認した桑田の握り手が震えだした。

「どうして・・・どうしてあなたが・・・?」


 桑田が拳銃を構えていた先にいた人物・・・それはジプシー医療室勤務の関根女医だった。

「これが私の仕事なの。ここのスパイがね・・・」

「どうして?あなたは地下3階から下には入れないはず?それなのに・・・?」

「ポリス史上、完璧な要塞だけど、所詮人が作ったものよ。弱点はある。IDの偽装、電気シャフト、簡単に地下に行けるわよ。まあスパイは私だけじゃないしね。P6だけで何人いることやら?」

「ずっと・・・ずっと騙していたんですね?酷い・・・」

「お前らを騙したつもりはない。」

「そんな・・・」


 するとエレベーターの方から“ドン”という音が聞こえる。桑田は慌ててエレベーターの方に銃を向ける。更に次の瞬間、エレベーターの天井部分が落ちてくる。すると砂漠用迷彩服を着たタケシが飛び降りてくる。

「敵!?」


 タケシは関根と桑田をすぐ察すると、ポリスの軍服を着た桑田のほうに銃口を向けた。



「タケシ?」


 関根はタケシの行動をいち早く気づき、桑田に向かって発砲した。

「うっ!」


 関根の銃弾は、桑田の右肩に命中。桑田は拳銃を離し後ろに吹き飛んでしまった。肩口を押さえ蹲る桑田。そこへ桑田の拳銃を足で払いのけ、タケシが銃口を向けたまま桑田に近づいて来る。その様子を見て、慌てて関根が叫んだ。

「その子は撃たないで!!」

 関根の声で、タケシは制止した。関根を見るタケシ。


「瑠南花か!?」とタケシ。

「そうよ。その子を殺したら、この下には行けないわ!」

「くっ・・・」

「なぜ地下なの!?こっちは、特命なの。迷惑よ!」

「家族を人質に取られてるんだろ?開放してやるよ。」

「その言葉に、二言はないよね?」

「ああ。」

「ふう・・・」溜息をつく関根。


 すると、またエレベーターの天井から石森が降りてくる。

「タケシさま!」

「来たか・・・」


「まず・・・兵たちにこの子に手を出すなと命令して。」と関根。

「誰ですか?こいつ?」と石森。

「瑠南花だ・・・わかった。兵に伝えよう・・・」

「この女が・・・?スパイ?」


「で?何が目的なの?」と関根。

「本当の四天王に会わせろ!」

「本当の四天王?」

「真・四天王さ・・・」とタケシ。


 桑田は肩を押さえながら2人の会話を聞いていた。

「本当の・・・四天王・・・?」


 すると、次にエレベーターシャフトを降りて来たのはヒデだった。ヒデは関根を見つけると、顔をしかめた。

「随分と懐かしい顔がいるのね?」

「なぜあんたがここに?」とヒデ。



 P6指令室。

「我妻!地下から出せる兵は、全員地下3階に集合!」

「了解!」

「兵を出したら、地下3階より下は封鎖する!」

「ま、待ってください。地下3には桑田や、曽根参謀、そして親父さんまで・・・」

「仕方あるまい・・・これ以上戦火を広げれない・・・」

「くっ・・・」

「なつみ・・・」と松井。



 第88エレベーター地上付近。近辺にいたポリス兵は、どんどんこのエリアを囲み始めている。エレベーター付近を守っていたタケシの別働隊も、残すは丸田とタカが乗る装甲車だけになっていた。

「丸田!約束の15分だ!逃げるぞ!このままではこっちがやばい!」とタカ。

「分かった!敵が増えるばかりだ、逃げるぞ!」



 装甲車は道を封鎖していたポリスのSCを蹴散らすと、北ゲートに向かって走り出した。

「逃がすか!」とダブル。

「待て!兵の数が合わない・・・」


 そこへロクのインカムに無線が入る。ダブルも耳に手を当てる。

「こちら黒豹!」

『松井です。ロクさん、今どちらに?』

「地上のEVエーブイ88だ。」

『敵の一部がポリス内に侵入!別エレベーターで地下3に戻って下さい。』

「奴ら、ワイヤーで地下に・・・わかった。今降りる。」

「こいつら・・・囮だったか・・・」とダブル。

「エレベーターって言われても・・・」

「EV87からまわったら遠回りだ。」

「奴らが通ったんだ。俺らも行くぞ!」

「ワイヤーでか?お、俺は階段で・・・」

「いいから!行くぞ!」

 ロクは逃げ腰のダブルの首根っこを捕まえると無理やり第88エレベーターに連れて行く。



 タケシらは、地下3階の第88エレベーター附室近くの、人気のない倉庫のような所に潜んでいた。負傷した桑田、後から合流したヒデや早坂たちもいる。

「なつみ、暗証番号を言いなさい。」

「絶対に言わないわ!」


 関根が桑田に詰め寄るが、それを見ていたタケシが痺れを切らし、2人に割り込んだ。

「吐かなければ殺す!」


 タケシは桑田の口に拳銃を突っ込むと、そう凄んでみせた。桑田はしゃべれなくなり、泣きながら顔を横に振った。

「仕方ない・・・」

「止めて!殺さないって約束でしょ?まだこの子は利用するから・・・」

「殺さないさ・・・ただ・・・」


 タケシは桑田の左腕を押さえていた右肩から引き離し、足で左腕を踏みつけた。

「女!これでも吐かないか!?」


 すると桑田は、タケシに唾を吐きかけた。タケシの顔色が変わった。

「そうかい・・・」


 そう言うとタケシは桑田の左手に発砲した。桑田の左親指が吹っ飛ぶ。

「ぎゃぁー!」


 声にならない断末魔の叫びをあげる桑田。

「指はあと9本ある・・・さあどうする?」

「なつみ!しゃべりなさい、暗証番号を!・・・ちょっと!殺さないでよね!」

「殺さないって・・・なあ?」


 タケシは再び発砲した。次は左の人指し指に命中した。

「ぐぁー!」

「どうした?あと8本・・・」

「ちょっと!舌でも噛まれたらどうするの!?」

「死なねぇよ!見ろこいつの顔!隙さえ見せれば噛み付いて来る顔だ!」


 桑田は指2本を落とされても、タケシの顔を睨み付けていた。

「ぜ・・・絶対に・・・言うもんか・・・」

「そうか、じゃあしょうがないな・・・」


 タケシは桑田の左手の残り3本の指を一気に銃で吹き飛ばした。

「ぐわぁぁぁー!」



 第88エレベーター地上部分。ロクとダブルが下に降りようとしていた。

「無理無理!」

「なら先に行くぜ。」


 そこにバズーに肩を借り歩いてきたキーンら兵4、5名がやって来る。

「おい!お前ら!」

「バズー?どうしたキーン!?」

「情けない、足をやられちまって・・・」とキーン。

「言わんこちゃねぇ!先行くぞ!ダブル!」

「ああ・・・」

「・・・」


 ロクはワイヤーを掴んで下に降りていく。

「敵は?」とバズー。

「一部ポリス内に侵入しているとよ!」とダブル。

「数は?」

「分からん。SCの数からして、そう多くないはず。」

「なら追おう!行くぞ!」とキーン

「お前はここまでだ。おい誰かキーンを下に運べ!」とダブル。

「しかし・・・」

「歩けない奴を連れて行けるか!」

「よし行くぞ!」とバズー

「俺・・・階段で行くよ・・・」とダブル。

「お前な!ガキの頃からの高所恐怖を克服しろよ。」


 バズーはそう言うと、ダブルのマントを掴みワイヤーのとこまで放り出した。慌てたダブルは必死にワイヤーを掴む。それを確認すると、バズーはダブルを掴んだ手を離した。

「バズー!!お、お前ー!覚えてろー!」


 ダブルはバズーに叫びながら暗闇のエレベーターシャフトに消えていった。

「ふふふ。さてキーン!行ってくるぜ。」 

「ああ・・・」



 ロクは既に第88エレベーター地下3階附室にいた。拳銃の銃口を上に向け、少しづつ警戒しながら前に進んでいる。すると薄暗い附室の床に白い拳銃を見つける。桑田の拳銃“ワイルドマーガレット”だった。ロクは急ぎ拳銃を拾い上げる。

「な、なつみの銃か・・・?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ