その19 サンドウルフ
05:10 浜から離れるつつあるレヴィア2番艦ブリッチ。弘士の命令は早口になっている。
「潜行する!この場を脱出するぞ!」と弘士。
「了解!」と佐々木艦長。
「しかし妙だな?松島は砲撃すらしてこない・・・」弘士は首を傾げた。
潜行モードだった為か既にブリッチまでの階段は密閉されていた。すると弘士が座っていた席の後ろに、ハンドル式の緊急非難口があり、まさにそのハンドルが音を立てながら勝手に回り始めた。するとその穴の蓋は開かれ下からロクが這い上がってきた。
「いやーこの穴狭い。バズーなら通れないですね・・・」
「御無事で・・・ロクさん・・・」
艦長の佐々木が穴から出るロクに手を貸した。その様子を見ていた弘士が叫ぶ。
「遅いぞロク!まずは報告だ!」
「はい!戻りました!」
「艦を上陸するなんて作戦にはなかった・・・」ロクに敢えて目線を合わせずボヤく弘士。
「終わり良ければ、全て良し・・・でしょ?」愛嬌で事を済まそうとしているロク。
「まあ、作戦は無事に終わったが・・・」
「湾を抜けるまでは・・・ですよ・・・」
「そうだが・・・松島はこちらに攻撃すらしてこなかったぞ?」
「まさか海からなんて誰も思わなかった・・・でしょ?」
「ふう・・・そうだな・・・」
「他の3人は?」とロク。
佐々木が弘士とロクの会話に割って入った。
「無事帰られていますよ!あの三人です!」
「そうかやったな。ああ、司令・・・ヒデに逢いましたよ。」
「ん?」
「サンドウルフのヒデ・・・」
「懐かしい名だな?それで?」
一度ロクに向けられた目線だったが、弘士は再び前を向き直した。
「逃げられちゃいました~」再び愛嬌で事を済まそうとしているロク。
「簡単に言ってくれますねぇ・・・お前がいて取り逃がすとはな・・・奴はなぁ・・・!」
「分かってます・・・最近、装甲車に乗って攻撃をしてたのはヒデですよ!」真剣に弘士を見つめるロク。
「そうか・・」
「奴がミュウですね・・・?」ロクは顎に手を置いて遠くを見つめた。
「なぜ、奴がミュウだと?」
「うーん、わかりません。ただ、必ず奴はまた来ます!」
「そうか・・・」
松島基地に続く道。ヒデと丸田が歩いていた。
「2歳下?じゃあ、あいつまだ17のガキじゃないか?」
「IQは174、SCの運転はトップ、拳銃は虫の触覚すら打ち落とせる。当時にしたら、とんでもない化け物だったさ・・・」
「虫の触覚!?そりゃ、化け物だな・・・良く聞く覚醒って奴か?」
「ガキで覚醒はしない・・・そういう奴だ。上の連中は面白くないんだよな・・・ガキの頃から死ぬ思いで訓練してきたのに、あんなガキに四天王の座を取られんじゃないかとビクつき始めた・・・俺らもよくアイツを裏に呼んではみんなで殴り付けた。しかし・・・いつもアイツの目だ・・・」
「目?」
「なんとも言えない嫌な目でこちらを睨むんだよな。年下のくせにさ・・・結局おれらはいつの間にかあいつに追い越された。何もかも全てな・・・」
「年下に嫉妬か?お前らしくないな?」
「それ以上だな!訓練で死ぬ奴もいたんだ!それなのにだ・・・そんなガキに四天王の座は渡せなかった!・・・俺はとうとう14の時、P6から脱走した。追って来たのは12歳の奴だった。初めて人を撃った。それが奴だ・・・」
「あいつをか!?それでいて、なぜ奴はお前を撃たなかった?」と丸田。
「俺は人質を連れていたからさ・・・」自分の親指を噛むヒデ。
すると後ろから20台近くのSCが走ってくる。ヒデと丸田は敵と思い、道端に身を屈めた。するとその中には3台のストラトスが含まれていた。
「なんだ仲間じゃないか!」
丸田は慌てて道に飛び出し手を振る。だがSC隊は走り去ってしまった。
「おーい!なんだ乗せて行けよ!」飛び上がりながら怒る丸田。
間もなく日が東の海から昇ろうとしていた。タケシのSC隊は松島基地に到着しようとしていた。すると右の海岸から一人の女がフラりと出てきた。隊はその女に気づく事なく走り過ぎていた。すると嶋のストラトスが、その女を跳ねてしまう。
「おい!嶋!今なんか跳ねたんじゃないか?」とタケシ。
『さあ?気づきませんでしたよ・・・?』
「ふっ・・・そうだな・・・」ニヤリとするタケシ。
このポリスの奇襲でジプシャンは最前線の浜田基地と手樽基地を失い、タケシは自らのSC隊120台を失い、軍全部でのSCは160台、死傷者は280名にも及ぶ。
レヴィア4隻は、一時P7に向かって帰還していた。朝日が海上に昇り始めている。
ポリスVSジプシャン・・・本当の戦いが今、始まろうとしていた。
第二章 【松島奇襲作戦に賭けろ!】 完
第三章 予告
遂にその姿を現してきた、ポリス最大の謎「ミュウ」・・・・
「四天王」はこのミュウを中心に新たなる展開に・・・
弘士「ミュウ確保だ!」
ロク「誰があの子の父親なんだ?」
聖「あの子の父親は・・・」
直美「弟を兵士なんかにさせないわ!!」
タケシ「誰を敵にしたのか、教えてやらないといけないな・・・」
ヒデ「なぜあいつは死なないといけなかったんだ!」
死龍「ロクとは恋人だった・・・」
桑田「えっ?」驚き死龍の顔を見上げる桑田。
久弥「こいつをレヴィアに取り付ける!」
【ポリス最大の秘密兵器・・・】
バズー「一発射撃砲はどうでしょう?」
ダブル・キーン「えっ!?」呆れる二人。
死龍「お前が知ってるロクは、ロクじゃない・・・お前は本当のロクの姿を知らない・・・」桑田を突き放す死龍。
弘士「何かの歯車が狂い始めている・・」
ロク「な、なんだ・・・前の死龍と別人じゃないか・・・」
“若者が作る未来とは?”
ダブル「俺たちが未来を守らなければ誰が未来を守るんだよ。なあ?」
キーン「うんうん。」
“激化するジプシャンとの戦闘の中、狂乱する死龍・・・果たしてミュウとは?
そしてポリスの潜入しているスパイは誰なのか?”
ポリスの塀の上。夕焼けを眺めるロクと桑田。
ロク「なあ桑田?」
桑田「はい?」
ロク「俺たちはあと何回あんな夕焼けを見て死んで行くんだろうな・・・」
桑田「はぁい?」呆れる桑田。
“明日は見えるのかー?”
死龍「教えて下さい・・・」
久弥に銃口を向ける死龍。
久弥「死龍・・・」目を細める久弥。
死龍「私の・・・残された時間を・・・」
“今、ロクと死龍の過去が遂に明かされる!!”
次回 四天王 第三章 【死龍覚醒】