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四天王  作者: 原善
第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!
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その17 疾風(しっぷう)のロク

04:50  ジャガーは崩壊した橋に向かって走り出した。ロクがブレーキを外した瞬間にはロクが運転席で仰け反るくらいの反動だった。短い距離だったがジャガーはぐんぐんスピードを上げる。ロクはブースターのスイッチに手を掛けた。

「行くぞぉぉー!」


 ロクは、ジャンプ寸前でブースターのスイッチを最高にした。空気の流動音が今まで以上に響き、ジャガーは勢いよく橋を飛び出した。夜明け前の海の上をジャガーは飛んでいるように見えていた。車体は少しブレたが、ブースターの力もあって、反対側の壊れた橋に飛び移った。着地時、わずかに右に着地しあわや海に落下してしまうかにも見えたが、ロクはうまく車をコントロールし、車体を橋の中心に戻しその橋を渡り切った。

「お、お前・・・いい子!」



04:51  ストラトスのタケシ。

「飛んだよ・・・」車内で呆れるタケシ。



04:52  浜田基地内。キーンとダブルが、基地内で銃撃戦をしている。ダブルは機関銃を、キーンは拳銃で応戦している。

「バズーの野郎!肝心なとこで来やしねぇ・・・」ボヤくダブル。

「おい!ダブル!?手榴弾もうないぞ!」

「くそが・・・」


 そこに、相手側にミサイルのような物が二人の後ろから発射された。 二人が応戦していた敵数名はこの爆発によって全員吹き飛んだ。すると二人の前にバズーカを持ったバズーが現れる。仁王立ちしたバズーだった。

「何こんな所でもたついてんだよ!お前ら!?」余裕すらあるバズー。

「遅いんだよ!」怒るダブル。

「基地突入は、お前の担当だろ?」同じくキーン。

「アシカムでお前らに追いつけるかよ!」渋い表情になるバズー。

 戦闘中だがダブルとキーンに笑みがこぼれる。


「さて、急ぐぞ!どっちだダブル?」とキーン。

「奥だ!急ごう!」

 3人は浜田基地の奥の部屋に突入した。するとダブルのインカムに無線が入る。

『レヴィア1番艦三島です!』

「おお、どうした?」

『ロクさんを追ってた部隊があと4分でそちらへ戻ります!』

「4分?」

『数は約18台!砲撃まではまだ時間がありますが・・・』

「わかった3分でする。」

『了解!』


 無線が切れると、顔を見合わせる3人。

「ここに敵が戻ってくる。急ぐぞ!」とダブル。


  3人は指令室の部屋の前に来ると、音を潜めた。ドアに近寄り、ドアに耳を当てるキーン。中にはまだ数名の兵が居る様子で、無線で助けを呼んでいた。

「ここは俺が・・・」


 キーンは背中のライフルを取り出し、ライフルの銃先を剣に切り替えた。するとキーンは静かにドアを開け中へ突入する。キーンは慌てた兵らをその剣型ライフルで2名の兵を切りつけた。

「拳銃使えよ・・・」

 ダブルは後方で援護しながらも、半ば諦め顔でその様子見ていた。

「弾がもったいない・・・だろ?」周りを警戒しながらも坦々と語るキーン。

「敵兵に敬意を払えよ・・・切られる身になれ!」

「銃でも同じだろ?大丈夫、ちゃんと即死させてるよ・・・」

「はいはい・・・」呆れるダブル。



04:53  松島基地内。ヒデと丸田が装甲車に乗り込もうとしている。何人かのヒデの仲間が装甲車の周りに集まっている。女子供の姿もある。皆、不安げな顔で二人の傍にいた。

「何?タケシが?」とヒデ。

「敵から砲撃を受けてるらしい。」

「ミキもいないのよ!」

「取り合えず、丸田と様子を見に行く。みんなはここにいてくれ。」

「ここは安心だからな!」と丸田。

 ヒデと丸田の乗った装甲車は松島基地のゲートから出て行く。



04:53  浜田基地内。ダブルが必死でパソコンをいじっている。部屋の外ではバズーとキーンが銃撃戦をしている。キーンが一度ダブルの様子を見に来る。

「まだか!?ダブル?弾も尽きるぞ!」とキーン。

「もうすぐだ・・・古いんだよ!ここの機器!」

「何やってんだ!?あと2分だぞ!」

「膨大な量だ・・・あと1分・・・バズー!?外の敵SC隊を引き付けておいてくれ!」


「分かった。ここを頼むキーン!」その場から立ち去るバズー。

「了解!急げダブル!味方の砲撃が来るぞ!」とキーン。

「くそっ、ようやく見せ場が来たのによ!」機械相手に焦るダブル。



04:54  ロクのジャガー。

「渡ったのはいいが、敵基地を見学する訳もいかないし・・・」

 ロクはレヴィアに無線を飛ばした。

「こちら黒豹。レヴィア2番艦聞こえるか?」

『無事かロク?』

 無線の声は弘士だった。

「危うく吹き飛ぶ所でしたけどね・・・」

『松島基地に向かってんのか?』

「酒場があんだろ?ちょっと覗きたいんだよな・・・」

『・・・お前な!』呆れる弘士。

「嘘!嘘!この先に砂浜がある。そこにレヴィアで迎えに来てくれたら・・・嬉しいよね?」ちょっと甘え気味のロク。

『はぁ?』

「あっ・・・いや・・・正直に話すとエアーブースターを使い過ぎバッテリーがなく・・・」

『ふっ・・・最初からそう言え!』

「閉じ込めた敵SC隊は?」

『6割ってとこか?後は崖を登られ上手く逃げられたよ!』

「上等!じゃあ、お迎えよろしく!」

『浅瀬じゃなきゃな!夜明け前だし作戦中だ!上陸出来ないなら泳いで帰れよ!』

「り、了解・・・」顔が引き吊るロク。



04:54  レヴィア1番艦ブリッチ。

「1分前だ。砲撃を再開するぞ多聞!」

『了解!』

「三島無線は?」

「ありません。」

「よし!砲撃用意!」



04:54  浜田基地内。

「出来た・・・コピー完了!キーン!残り時間は?」

「30秒!」

「余裕じゃん!行くぜ!」

 二人は急ぎ基地内を脱出する。



04:55  レヴィア1番艦ブリッチ。

「アシカム確認!脱出した様子です!」

「よし!ありったけを喰らわせてやる!上部ミサイル、主砲!発射5秒前・・・4・・・3・・・2・・・1・・・てぇっー!」

 再び、浜田基地を砲撃し始めるレヴィア1番艦。今回は甲板から真上に伸びる20発程のミサイルも発射された。



04:55  浜田基地近く。ダブルとキーンは自らのSCに乗り込むと素早く基地を後にする。

「バズー!当たるなよ!頃合を見て逃げるぞ!!」

『おお!』

 ダブルとキーンのSCが基地を離れた瞬間、後ろの浜田基地がミサイルや主砲の攻撃に遭い爆発を起こした。

「こちら、山猫。作戦終了!」



04:56  松島基地まで約2キロの海岸線。ロクのジャガーは海岸線の道を走っていた。東の海は、だいぶ明るくなり、ロクの肉眼でもレヴィアを確認が出来るくらいだった。

「来たか?しかし松島には常駐隊がいるはず・・・なぜ船を攻撃しない?」

 すると、ロクが海岸の方ばかり気にしていた所に、正面からヒデらの乗る装甲車が突然現れる。

「うおっ!またこいつか・・・」


 面を喰らったのはロクの方だけではなかった。ヒデの装甲車もロクを見て慌ててハンドルを切った。

「奴だ!雷獣だ!なんでここに居るんだよ?」

 ヒデらが運転する装甲車はすぐUターンすると、すぐジャガーを追いまわした。


「こういう奴を砲撃してくれよ!」ボヤくロク。


 ロクは一度、ハンドルを左に切ると、崖を海岸に添って平行に走り出し、装甲車の左側を走った。

「丸田!奴は崖の上だ!」

「分かってる!」

 丸田が装甲車の上部の機銃を手にした瞬間、ロクのジャガーは崖から滑り落ち、装甲車の横側に体当たりを掛けた。

「うおっ!」

 重心の重いジャガーの体当たりで車高の高い装甲車はハンドルを取られ海辺に横転してしまった。二回転ほど横転して動かなくなった装甲車。すると運転席のヒデは辛うじて意識があり、上となってしまった運転席を開け、装甲車から出ようとしていた。


「痛たた・・・丸田?無事か!?」

 すると装甲車の後部座席から、声が聞こえる。

「ああ・・・なんとかな・・・奴はどこ行った?」丸田も頭を押さえて前部座席の方へ這って来る。

「さあな・・・?エンジン音は聞こえんぞ・・・」

 ヒデが装甲車から出ようと、試みたその時だった・・・ヒデが手を当てた装甲車の側部に誰かが立っているのが分かった。ヒデは恐る恐る上を見上げると、そこには拳銃を自分に向け構え、ポンチョコートを着た男が立っていたのだ。ハットとスカーフで顔を覆い、ポンチョコートの下には白い軍服を纏っていた。まさしくロクの姿だった。


「お前が・・・雷獣か?」

「雷獣・・・?お前らが勝手に付けた名前らしいな?ヒデ?」

ロクは改めて拳銃で狙いを付けてみせる。ヒデは自分の名前を呼ばれギョッとした。

「なぜ俺の名を知っている・・・?」

「おいおい・・・忘れられると辛いな・・・?」

 ロクは口元のスカーフを胸元まで下げると、改めてヒデに顔を見せつけた。夜明け前の薄暗い海岸線、顔の確認が出来る程だった。


「お、お前・・・疾風しっぷうのロク・・・」


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