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四天王  作者: 原善
第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!
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その4 囮作戦

 武器を持たないジプシーをポリスは攻撃してはならない。


 ポリスが創立して25年以上。ポリスが作ったいくつかの法の一つだ。ロクはもちろん、ガキの頃から徹底的に叩き込まれた一つだった。


 しかし、この法のせいで何人ものプロジェクトソルジャーが若い命を亡くしている。この法を逆手に取り、武器を隠しポリスを襲うジプシーが増えていたのも事実なのだ。ロクにとっては嫌な法の一つになっていた。


「また、厄介な物を・・・」

 ロクは頭を抱えた。そこに桜井が助けに入った。

「我々につかず、ジプシャンにつく者らです。多少の犠牲は仕方ないと思いますが!」

「お前たちは、知ってて攻撃をしろと言うのか?女子供でもか!?」

「仕方がないと思います!」桜井は更に反論した。

「何だと!桜井!それが出来るなら、苦労はしてないぞ!」曽根が怒鳴る。


「あえて、ジプシーを置けばこちらが攻撃出来ないのを知っている・・・賢いな・・・」ロクは下を向いて呟いた。


「ロク・・・敵を褒めるなよ!」と曽根。

「それでもするのか?」弘士が再びロクに問う。


 黙ったロクを見て司令が追い討ちをかけた。

「ふぅ・・・」

「それでもするのかと司令が聞いている。ロク!?」曽根が畳み込んできた。

「それはお手上げですね・・・今回は・・・」諦め顔のロク。

「ロクさん・・・」

「桜井!みんな・・・この案、練り直そう!」

「はあ・・・」


「司令、会議は“一度”解散して下さい。」

「馬鹿馬鹿しい!!」

 曽根は真っ先に席を立った。

「なら会議は一度解散する。」

 弘士が告げると、会議室からは参謀たちが早々と出て行く。



20:04  P6指令室。桑田の席の周りにロクと桜井、キーン、ダブルの4人が集まっていた。

「レヴィアは実際25名で動かせます。問題は砲撃手です。これだけは訓練兵じゃあ・・・」桜井が熱弁を振るっていた。

「訓練はしてるんだろ?」

「しかし、当たらなければ話になりません!」  

「やってもらうしかない・・・」

「レヴィアは問題ない・・・あとはジプシーだな・・・桑田?」

「は、はい・・・これでいいですか?」


 桑田が松島湾の地図をスクリーンに投影した。

「浜田と手樽は問題ない。松島だけなんだ問題は・・・」

「一気に全部狙いじゃなくてもいいんじゃないか?」

「おそらく主力は松島基地だ。タケシも恐らくここにいる。50台を3基地に配置する奴の用心深さが出ている。まして軍に所属しないものらを基地側に置くなんて・・・ここを叩かなければ、この作戦をする意味がないんだ!」

「浜田と手樽で100台、8割を叩いたとして80台でもいいと思うが・・・」とバズー。

「それじゃ、ロクが納得しないとよ。今のロクは松島しか見えてない・・・」とダブル。

 皆、スクリーンを見たまま動かない。


「突っ込んでみるか・・・?」


「どこにだ!?馬鹿を言うなロク!松島の前に浜田の50台のSC。それに松島の50台。常駐のSCも入れれば150はある。とても正気とは思えん。犬死にするのが見えるよ。無謀にも程があるぞ!?」キーンは反対した。

「なんとかする!」

「出た出た・・・」

 桑田はロクのいつもの言葉に小声で返していた。


「ところで桑田、これってなんだ?」

 ロクは地図の海岸線に不自然な部分を見つける。自然の地形ではなく、コの字になっている。

「さあ?柳沢さんこれってなんでしょう?」

「それは・・・ああジプシャンが作った橋ですよ。」

「橋?」

「はい、浜田から松島までは狭い1本道です。山側は急な崖。海岸線の海に近い所は、満潮になると海水で道が無くなってしまう所にジプシャンが橋を建てたんですよ。ここと、ここと、ここの3箇所に・・・橋とは言え、ボロい桟橋です。ガードレールもないんですから。」

「ふーん。橋か・・・しかも満潮時?・・・俺らが作戦をするのも満潮だよな?」

「そうですね。」

「じゃあ、この時間って奴ら橋を使うんじゃん!?」

「そういう事ですね。」と柳沢。

「基地から誘い出して、ここに孤立させるのはどう?」


「孤立?」

「どうやってここに誘うんだ?」

 ダブルとキーンが険しい顔でロクに問い詰めた。

「うーん・・・」悩むロク。

「・・・考えておけよ!」一応突っ込むダブル。

「そういや、聖が言ってた。ロクは敵から“砂漠の雷獣”って呼ばれて恐れられているそうだ。」


 その言葉に桑田はいち早く反応した。

「ライジュウ?」

「それを利用するんだよ!」とダブル。

「えっ・・・?」


 会議の流れはロクからダブルへと変わる

「今回、タケシが攻めて来たのが妙に気になっていた・・・ひょとして先日の・・・」

「ロクとの戦闘か・・・」とキーン。

「今回、実はこの襲撃はロクが原因かもよ・・・タケシのプライドをズタズタに切り裂いたか?または向こうはロクを高く評価しているかだ。」

「確かに一理ある!」とキーン。

「おいおい、勝手に推測するなよ・・・」慌てるロク。

「なら試して見るか?雷獣さん?」ダブルはロクを挑発してみせた。

「あらら・・・」

 ダブルがロクに不敵な笑いをする。



20:20  久弥の乗ったレヴィア4番艦がP6の南付近に到着していた。久弥はブリッチからP6の街を見るが、まだ燃えているのか所々赤く炎で照らされている所が点々とある。


「だいぶやられたようだな・・・」


 久弥の横には、若い水谷艦長がいた。

「被害は西の住居地区ですね・・・」

「子供や老人の被害が多いと聞いたが・・・2番艦、3番艦とは別の所に停泊する。」




20:30  P6大会議室。再び集められたP6の幹部たち。しかし今回は、高橋とバズーの姿はない。

「今度は何だロク!?忙しいんだ!街の復旧作業を優先にしてくれ!」曽根が口を開く。

「先程のBプランです!」

「同じ事だ!レヴィアを動かす海兵がいないんじゃなっ!」


会議はロクに変わってダブルがメインで進められた。

「レヴィアは25名いれば運航出来ます。砲撃手は訓練兵がする・・・」

「レヴィアの件はなんとかなるはずだ・・・問題は基地そばのジプシーたちだ。そこを説明しろ!」曽根が皆を急かした。


「はい・・・最悪でも成果は浜田と手樽だけでいいと思います。」

「そうだな。成果は3分の2はあげられる。で?松島基地は?」

「浜田基地砲撃前、浜田基地経由で松島基地に我軍のSCを突入させます!」

「浜田と松島に?それで?」と弘士。

「敵はロクに一目置いているでしょう・・・そこで、ロクに囮になってもらいます!」


「おとり・・・だと?」

「これを見て下さい。浜田と松島の間に3つの橋があります。満潮時にジプシャンが使用する橋です。敵が松島基地より出てきたら、浜田寄りの橋を砲撃し、後方の橋も砲撃します。つまり、この1キロほどの海岸線に敵SCを孤立させます。ここの崖は急でラリータイプ以外は潮が引くまでは、ここから出れないのです。松島基地を攻撃する事なく、敵の主力を叩けます!」


「・・・もし敵が松島基地から出てこなかったら?」と曽根。

「そうだな。もし出てこなかったらどうする?隊は両基地の部隊に挟まれ壊滅するだろう!逃げ道がないんだからな!」

 呆れ顔の弘士と曽根が、ダブルを問い詰めた時だった。急に黙っていたロクが万を期して、席を立ち上がった。


「奴らは必ず出てきます。なぜなら・・・囮は私一人だけだからです!」


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