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四天王  作者: 原善
第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!
33/209

その2 こだわり

17:33 地下3階検視室。

直美は黙っていた。ロクは大場の言葉に嘘がある事を見抜いていた。自分が命を危険にさらしてまで、脱走など有り得ないと感じていた。直美は一度ロクの顔を見るが、再び父の遺体を見つめた。


「今は話せない・・・時が来たらじゃ駄目かな?」

「構わないが・・・」

「ごめん・・・あの・・・」直美は何かを言い掛けた。

「いいんだ・・・ちびっ子らはどうする?」

「私が話すわ・・・」

「そうか。しばらくは地下3階で過ごしてもらうぞ・・・」

「なぜ私たちも?」

「脱走兵は家族も銃殺、ジプシャンの掟だったはずだ。」

「そうだよね・・・忘れてた・・・」

「君らも狙われる可能性もある。護衛は俺の手の者にさせる。部屋も特殊な所だ。しばらくは我慢してくれ・・・」

「わかったわ・・・」



17:55  P6指令室。弘士が慌ただしく指揮を取っていた。

「夜になっても復旧作業は続行!救出作業はどうだ?」

「被爆したところを中心に、確認作業になっています!」と我妻。

「手の回らない所は海兵を回す。負傷者は?」と弘士。

「増える一方です。子供、年老いが多いようです。」と柳沢。

「素直にシェルターに入っていれば・・・」

「司令。黒豹の山口からです!」

「中央に映せ!」


 中央のスクリーンに黒豹隊の山口の姿が映し出された。

『こちら黒豹。山口!』

「どうした?」

『敵のSCですが、浜田、松島、手樽の三基地に分かれています。各50くらいでしょうか?』

「三基地にか・・・?」

『宴会などを催しています。もう今夜は襲っては来ないと思われますが・・・』

「山口・・・勝手に判断するな!」

『す、すいません・・・』

「わかった。そのまま偵察だ!」

『了解!』

映像無線が切れる。

「おい柳沢?松島湾の地図を出してくれ!」と弘士。

「了解!」

「三隊に分かれたと言うのか?タケシと言う奴・・・用心深い奴だ・・・」


 中央スクリーンには松島湾の地図が映し出される。弘士はそれをじっと見つめていた。



18:15  外は既に暗く、ロクは南側ゲート近くの塀の上に立って街の中を見ていた。

「こんなんじゃP5も持たない・・・時間の問題だ!どうすれば・・・?」


 そこに息を切らした桑田が登ってくる。

「捜しましたよ。やっぱりここだ・・・」

「どうした?桑田?」

「どうしたも、こうしたも・・・山口さんから連絡があり敵の本隊が海岸の三基地にいるとの事!」

「海岸の基地に・・・」

「一度地下に戻って下さいと司令が・・・」


 ロクはポリスの反対側を見る。海側にはレヴィアが3隻、陸上に停泊している。桑田の言葉が耳に入らず、ロクはその向こうの海を見ていた。

「なぜ敵は海岸線の基地に・・・?」独り言を呟くロク。

「もしもし?ロクさん!?」

「海から・・・レヴィアで・・・海岸を・・・?」


 ロクは何を思ったのか急に走り出し、なつみを置いて塀の階段を降りていく。

「もう、どこへ行くんですか?」ロクの背中に叫ぶなつみ。

「レヴィアだ!大場の家族を地下3階の特別室に保護している。後は頼む・・・」

「は、はい・・・って・・・もう、命令無視ばっか!」



18:20  レヴィア1番艦ブリッチ。ロクが急いでブリッチに上がって来る。ブリッチには桜井他3名の兵がいた。

「桜井!聞きたいことがある!?」

「な、なんでしょう?」突然ロクが現れ驚く桜井たち。

「松島湾の水深はどのくらいある?」

「深い所で30メートルでしょうか?それが何か??」

「こいつで湾内に入れないか?」

「レヴィアでですか?以前から作戦としてはありましたが・・・入口の島々の狭い所には敵の機雷があり無理なんです。」

「機雷?機雷って水の上だろ?潜って湾に入るんだよ。」

「こいつ高さが12メートルです。機雷が集中してる所って湾の真ん中にある桂島近辺なんですよね。その辺って水深が12から13メートルなんですよ・・・」

「機雷か・・・レヴィアじゃ無理か・・・?」

「この艦橋がなければ余裕なんですけどね。」

「少しづつ進んで、手で退けたらどうだ?」

「かなり機敏なタイプですぐ爆発するようです・・・元々はポリスの物らしいですね・・・で?ロクさんはどうして湾からの攻撃をお考えですか?」


「あの本隊をP5に行かせるわけにはいかない・・・それとこの海岸に基地が多いのは向こうの本部に近いからだ・・・ここを叩けばジプシャンは動揺するはず・・・P5に向いている敵の目をこっちに向かせる事が出来る!」

「しかし湾からは無理ですよ。ここ二十年、誰も突破してないそうですからね・・・」

「そうか、とはいえ陸からレヴィアでは、勘付かれる。こいつ陸上じゃ足が遅いだろ?」

「そ、そうですが・・・」


「満潮ならどうですか?」

 そこに口を挟んだのは、レヴィアレーダー員の国友だった。


「満潮?」

「はい・・・近いとこですと・・・明日の夜明け前、04時24分に満潮になり海水が少し上がりますが・・・」国友が自分のメモを取り出してはロクに報告する。

「無理だ!それでも余裕は50センチ程だろ・・・?波次第ではこのブリッチ部分にぶつかるぞ。しかもこの辺には奴らテトラポットを無造作に沈めていると言う・・・レヴィアの存在を知られてから、奴らその対策は十年以上・・・海岸の一部も上陸出来ないようにしてる箇所がたくさんあり・・・」と桜井。


「厳しいね・・・ジプシャンも考えるなぁ・・・しかし、絶対に突破で出来ないというのを、突破してこそ奇襲・・・」とロクが顔をしかめる。

「た、確かにそうですが・・・」

「事前に砲撃して除去しておく・・・というのは?」通信兵の三島も口を挟んだ。

「次回の作戦には有効だけどな・・・奇襲にはならん・・・敵に猶予を与えてしまう・・・」


「どうしても海からみたいですね?ロクさんは・・・?」と桜井。

「俺はそれしか能がなくてな・・・ん?桜井?敵の機雷ってただ海上に浮いてるだけか?」

「そうですが?何か?」

「船のエアーブースターって水中でも可動できるのか?」

「もちろん可能です。急浮上や方向転換に使ってます。ただし水中です・・・新しい空気が取り入れないので空気の量に限りがありますが・・・」

「エアーブースター・・・・・・上等だ!!敵に気づかれず湾に入れる!」

「えっ?」

「桜井!一緒に来てくれ!」

「はあ?どちらに?」

「上の参謀どもを説得したい!」

「構いませんが・・・国友、三島、後を頼む!」桜井が席を立った。


 レヴィアの左側面が開き、ロクと桜井を乗せたジャガーがP6の西ゲートに向かった。



18:40  P6地下3階ジプシー特別保護施設。直美兄妹がいる部屋に桑田がIDカードを使って入って来る。

「直美さん!無事でしたか・・・?」

「ああ・・・ええ・・・」戸惑う直美。

「その・・・今回は・・・」

「いいの・・・」

「しばらくは、狭いですが辛抱して下さい。」

「平気よ。昔から穴倉育ちだから・・・」

「雨音も平気よ!」幼い雨音もなつみに声を掛ける。

「みんな強いね・・・」


 桑田は雨音の返事に少し涙ぐんでいた。

「なんかあったらすぐ呼んで下さいね?」

「ありがとう・・・」直美も目に涙を溜めていた。



18:53  P6指令室。ロクと桜井が入ってくる。ロクは入るなり弘士にこう叫んだ。

「司令!緊急招集会議をお願いします。」

「なんだ?ロク、いきなり!?」司令の傍にいた曽根がロクの態度に激怒する。


「松島を・・・敵の基地を奇襲します!」

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