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四天王  作者: 原善
第八章 さらば・・・ロク
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その6 共存共栄

ロクは濡れた荒野に顔を付けたまま動かない。よく見ると、ロクの拳銃は遠くに弾かれている。弘士は恐る恐るロクに近づくが、ロクは眠るようにして横たわっている。弘士は銃声の音の方向を向くと、ある者が瓦礫の上に腹這いで銃を構えていた。這ってここまで来たのだろうか、道や瓦礫の上にはたくさんの血痕が付着している。


「陽か!?」驚いて陽に近寄る弘士。

全身傷だらけ、所々火傷を負った陽がそこにいた。

「・・・ったく・・・お、男って生き物は・・・勝手な奴ばかりだよ・・・」

弘士に笑顔で話しかけると、陽も力尽きその場で意識を失った。


雨が激しくなっていく。弘士はその場で立ち尽くしていた。



地下の病室。ロクがベットから飛び起きた。すぐ側には左手を肩から吊り、全身に包帯を巻いた陽が椅子で転た寝している。

「陽!」

ロクの言葉に慌てて起きる陽。

「わっ!・・・も~う!びっくりさせるなよ!」ロクの声に起きる陽。

「っていうか・・・お前、生きてたんかい!?」

「わ、悪いかよ!?」剥きになる陽。

「い、いや・・・で?ここはどこだよ?」惚けるロク。


「地下六の病室よ!24時間も寝てらしゃったみたいですね?」

「そうか・・・でも、なんでお前がここに?」

「司令から言われたんです。また変な気を起こさないよう、見張れって!こっちも病人なんですけどね・・・」

「監視役かよ・・・?」

「そういう事!」平然と答える陽。


「街はどうなった?」

「津波、倒壊、敵の大砲のせいで結構亡くなったのよ!軍事施設は東ブロックが壊滅だし・・・それから・・・」

「そうか・・・たくさん死んだんだな?」

「そういう事です!・・・って、あんた人の心配してる場合?」

「え?」

「え?じゃなくて・・・あんた自分で死のうと思ったのよ!拳銃で撃ち落としてなかったら、死んでたじゃないの!何であんな真似するのさ!?」

「あっ!ああ・・・」陽の怒濤の言葉責めに唖然とするロク。ロクは初めて我に返った。

「もう!ほんと男って生き物は・・・何なのよ!?」キレる陽。

「す、すまん・・・」恐縮するロク。


「司令から聞いたわ。私たちの生い立ち・・・同じミュウなんだから一人にしないでよね!」と陽。

「どれ一つ受け入れられなくてな・・・」

「だからって死ぬなんて・・・」悲しい顔になる陽。

「そうだな・・・」ロクはいつもの表情に戻っていた。


「敵艦の残骸、ブリッジ部分からエロチビの遺体が見つかった・・・ソードライフルで切られていた・・・なんでよ?」

「ああ・・・それは・・・」

「言いたくなかったら言わなくてもいいけどさ!あんた前からそうだけど、何でもかんでも一人で背負いすぎだよ!」

「すまん・・・」

「もう!いい!謝ってばっか!もう死んだりしないよね?」

「ああ・・・たぶん・・・」

「たーぶーんー?そんな答えじゃ24時間監視よ!」

「しない、うんしない・・・うんうん・・・」陽の勢いに目を丸くするロク。

「もう!約束だからね!」そう言うと陽は病室から出ていった。頭を掻くロク。すると再び陽が病室を覗いて首だけ現れた。


「な、なんだよ・・・?」慌てるロク。

「感謝してよね・・・?生きてた事!」目を細めてロクを睨む陽。

「へいへい・・・」渋い顔のロク。

「・・・ったく男って生き物は・・・こっちも重体なのに・・・これで命救ったの二度目だし・・・ほんと男って・・・」廊下の外まで聞こえる陽の愚痴。

「敵わんなアイツには・・・」

病室に残されたロクは、陽が去ったドアの方をいつまでも見ていた。



P6の待ちの中心部。食料の配布にジプシーが長蛇の列を作って並んでいる。待ちの瓦礫から遺体として運ばれるもの。それに寄り添い泣き崩れる者。親とはぐれたのか路上で泣いている子供たち。放心状態で立ち尽くす老人。

そんな中、ポリス兵士たちが黙々と瓦礫の撤去や負傷者の手当てを行っていた。



ロクの病室。ノックの音が聞こえ高田女医が入って来る。

「ロク?」と高田。

「先生・・・」

「ごめん・・・ミュウの事、隠してて・・・上から口止めされててね・・・」

「謝ってもらってもどうにもなりませんよ・・・」冷たい言い方で返すロク。

「そうね・・・そう!司令が呼んでるんだけど来れる?」

「はぁ・・・?」



弘士が横たわる病室。高田とロクが入って来る。

「司令?」弘士の姿に驚くロク。

「来たか?・・・情けないがこの様だ・・・」

弘士は鼻からチューブを差し、点滴を受けている。


「これは・・・やっぱりあの・・・?」

「ミュウの覚醒を阻止するホルモンを投与・・・でもミュウは押さえれてるようだけど、司令の体が薬に勝てなかった・・・残念だけど司令はもう指揮は取れないわよ!」と高田。

「そ、そうですか・・・以前から体調を崩されたのもこれだったんですね?ああ、何か私に話があったのでは?」とロク。

「うん・・・高田から聞いた・・・じいちゃんとの会話・・・もう死ぬなんて考えないでくれ?」

「は、はい・・・」ロクは弘士の顔がまともに見れない。


「それと今後の事だ・・・ジプシャンの主力は倒した・・・しかしまだ北やP4にや本部周辺には残存部隊がいる・・・俺はもうこの体だ。俺の代わりにポリスの指揮を取ってはくれないか?」

ベットの上だったが、弘士の言葉には力があった。

「お、俺がP6の指揮を・・・?」

「こんな事を俺がお前に頼むのは筋違いかもしれん・・・しかし既にP6は事実上崩壊してるのも同じだ・・・」

「ミュウの俺がポリスをですか・・・?他の方々が納得するとはとても思えませんが・・・特に曽根参謀が・・・」躊躇するロク。

「お前がミュウと知っているのはこの三人と陽だけだよ。」と弘士。

「また・・・隠すんですか?ミュウを?」

「ミュウのお前にしか頼めん事だ・・・これからのポリスとどう共存共栄していくかもだ・・・」

「共存共栄?」

「そうだ!」


「・・・考えさせて下さい・・・俺はまだなつみの事であんたを許した訳ではありません・・・」下を向いたまま再び弘士の顔が見れないロク。

「そうか・・・そうだな・・・」

「すいません・・・」

「いや・・・いいんだ・・・俺もきっとそうしていたはずだ!」

「まだ頭の中がぐじゃぐじゃしていて・・・」

「そうだな・・・」

「それと・・・」躊躇いながら弘士に問うロク。

「ん?」


「司令は私の父親がこのポリスに居るとおっしゃいました・・・?」

「うん・・・誰がロクの父親か、俺も正直わからんのだ・・・」

「え?」

「数年前にじいちゃんから聞いただけでな・・・名前までは聞かなかった・・・じいちゃんが死んだ今では、もう分からないのが現状だ。高田は把握してるか?」


「記録には父方はポリス、母方がジプシーというくらいで何も・・・?母親は既に出産前から吐血が酷く、ここに預けられていた。そして死去というくらいで詳細までは・・・」と高田。

「それで母は!?」ロクが高田に問う。

「あなたを産む直前に死んだと記録されてたわ・・・」

「そうですか・・・」落胆するロク。

「何か分かったら報告する。」

「はあ・・・失礼します・・・」ロクは二人を後に病室から出て行った。



ロクはキーンの墓の前にいた。たくさん並ぶ十字架の列にたくさんの人が見られ、あちこちで埋葬されている。悲しみに暮れる声が風になってロクの耳に届いていた。ロクが周りを見渡すと白い十字架の数が以前よりも増えているのに気づく。そんな中、ロクはある墓の前で、一人の女性を見つける。

「ルナか・・・?」

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