頼れる仲間
もうすっかり夕方だ。
ナホとショウは無事目的地に辿り着いた。そこは学校からもショウの家からも遠い、山奥にある宿のような建物だった。
「なんだここ、宿?」
「まあそんな感じね」
ナホはショウの肩を借りながら歩いていく
「私達魔法使いの拠点と思ってもらえばいい。私含めて、4人の魔法使いが住んでいるわ」
と話していると、ウィッチハットを被った如何にも魔法使いのような少女と出会った。
「あ、ナホおかえり〜ってどうしたその足の傷!?あと誰!?」
呆れたように言った
「言ったでしょう…新しい魔法使いがいるようだから様子を見てくるって…足の傷はちょっとしくじっただけよ」
ショウは思った。様子見にくるだけなのにわざわざ転校までするの?と
少女はジロジロとショウを見つめる
「う〜ん、本当に彼は魔法使いなのか?」
「ええ。現に私が生きているのも、彼が魔法使いである証拠になるわね」
少女は納得した様子で言った
「私の名前はアトリだ!アトリ先生、と呼んでもらいたい!師匠と呼んでもよいぞ!」
「アトリさん…」
正直、ナホは呆れていた。
「それで、彼をここに連れてきたのには何か理由があって?」
「ええ、彼は命を狙われているのよ。魔法使いとして強力だからね。それに…」
ナホはショウの方を見て笑う
「私達のチームに入ってくれたら心強い」
アトリは一瞬驚いた顔になったが、すぐに笑った
「そうか、ナホがそこまで言うとはな。分かった。じゃあ早速…」
咳払いをしてショウに言った
「ようこそ、私達のチームへ!今日から君は仲間だ!」
ショウは思った。俺、まだなんも言ってなくない?チームって何?なんも知らされてないし…と
「ここが君の部屋だ!必要な物があれば言ってくれ!」
「ありがとうございます、アトリさん」
「アトリ先生だ!」
アトリは笑って去っていった。
しばらく部屋を見渡していた。机、ベッド、台所、その他色々、生活に必要な物は揃っていた。ショウはベッドに寝転んで、色々と考えた。
(俺がいたからクラスのみんなが殺された…というより、なんで俺は命を狙われているんだ?魔法なんて、使った事無かっただろ…)
ショウの目から涙が溢れる。もう限界のようだった。ナホやアトリの前では我慢していたが、ショウはずっと泣くのを堪えていた。
(なんでこんな事に…)
そのまま、ショウは眠ってしまった。
ショウが目を覚ますと、空は真っ暗だった。時計を見てみる。深夜1時だ。
(最悪な時間に目が覚めたな…)
もう一度眠ろうとしたが、もう眠れない。
(散歩でもしてこようかな)
外に出て、その辺を適当に歩いていた。
(木だな、木しかない。山奥だから当然かな)
少し歩いた所に、看板と一本道があった。看板には「↑街」と書かれていた。
ショウは行く気にならなかった。街はもう危険だ。いつどこで命を狙われているのか分からない。
自分の部屋の部屋に戻っていると、ある人影が見えた。
「誰だ?」
アトリの声だった。
「ああ、ショウくんか。どうした眠れないのか?」
「うっかり夕方から寝てしまって、もう眠くないから散歩してたんですよね」
アトリは眠そうだった。ショウはそれを察し、早めにこの場を去ろうとした。
「散歩してたら疲れたのでもう一回寝ますね。おやすみなさい」
「待ちたまえ、ショウくん。」
と呼び止められ、ショウは足を止める。
「少し話でもしようじゃないか」
少し離れたところに1つのベンチがあった。そこにアトリとショウは座り、夜空を見上げながらゆっくり話し出す。
「あの、アトリさん…」
「アトリ先生だぞ」
どうしても先生と呼んでほしいらしい
「どうして俺をこのチームに入れたんですか?」
「…」
「最初から、分かってましたよね。魔法使いだったとしても、俺が魔法を使えない事は」
ショウは気づいていた。この人は俺が魔法を使えない事を知って、命を狙われている事を知って、夜遅くまで見回りをしていた事を。
「…違うな」
とアトリはフッと笑う
「正直君が魔法を使えない事は分かっていたよ。大体そういうのは見たら分かるんだ」
「なら尚更どうして…」
アトリは深くため息を吐く
「…私は君を見殺しに出来ないんだよ。君は命を狙われている。理由は分からないけどね」
「…」
「それに、君は魔法使いだ。それはナホが既に証明している。人が最初から完璧に何かをこなす事は難しいだろう?魔法も練習したらいつかは出来るようになるさ」
はたしてそれは本当なのだろうか。いや、本当だと思わないといけなかった
「あ、あともう1つあったな。理由」
アトリは立ち上がり、魔法で1本の短い杖を出した
「実はこの宿、元々は8人いたんだ。でもある日、魔法使いの襲撃によって男子が3人、女子が1人殺されたんだ。私達はその時運悪く街に出かけていてね」
杖の先が光り出す
「せめて私が残っていれば、守れたのかもしれないのに。私は大馬鹿者だよ」
「…なんで」
ショウは拳を強く握りしめていた。その手はプルプルと震えている
「なんで魔法使い同士で殺し合わないといけないんですか…俺は納得いきませんよ」
「…ここはこういう世界なんだ。数年前からすでに戦争は始まっているんだよ」
アトリの体から静かに魔法の力を感じる。何をしようとしているのか、検討もつかない
「極魔解放『覇』」
その瞬間、杖から巨大な光線が放たれ、森林を1部消し飛ばした。それは、ナホとは比べ物にならないほどの力だった。
「…!?」
アトリは、魔法使いの気配を感じていた。きっと、ショウの命を狙いに来た連中だろう
(逃げられた…おそらく瞬間移動系の魔法か)
アトリは舌打ちをして杖をしまう。そして恐る恐る尋ねた
「あの…一体何を…」
「ん?ああ、なんでもないよ〜気にしないでくれ」
(…?)
翌朝
目が覚めた瞬間、絶望した
「夢ならよかったのに…」
全て現実だ。もう受け入れるしかない
クローゼットを開けると、ショウ用と思われる服が掛けられていた。なんなら紙が1枚落ちており、そこには「ここにある服を使え!チョイスは適当だ!」と書かれていた。
(いつの間に…)
顔を洗い、着替えを済ませると、ドアをノックする音が聞こえた。
ショウが急いでドアを開けると、そこには2人の女性がいた。
「あ、ほんとにいた!君がショウだね!」
「?えっと…」
内の1人が笑顔で話してくる
「新しい仲間が増えて嬉しいよ!あ、私はリン!後ろにいる世界一可愛い子はシホ!」
「ショウさん、初めまして。シホです」
めっちゃ話しかけてくる元気な人はリン、後ろにいる大人しい人はシホ。だそう
「アトリさんが言ってたよ!君まだ魔法が使えないんだって?」
「はい。使えません」
「でも大丈夫!私が教えてあげるわ!頑張れば魔法マスターになれるわよ!」
魔法マスターとは一体何なのだろうか
どうやらリンとシホはアトリの頼みで派遣されたらしい
「教える…って、具体的に何を」
「う〜ん、まあ色々と。とりあえず魔法が使えるようになるまで猛特訓ね!」
適当だった




