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1:魔法使いの歴史
まだ国という形が曖昧だった頃。
森と川の恵みだけで人々が暮らしていた時代――
村には時折、“異質な子”が生まれた。
風の声を聞き、火の揺らぎを読み、
ときに未来の影を見通す子。
村人たちはその子を囲み、口々に言った。
「この子は神に選ばれたのだ」
「村を守ってくれるだろう」
「どうか、我らを導いてくれ」
魔法使いは畏れられ、同時に頼られた。
村の守り手であり、導き手であり、
時には村そのものを統べる存在となった。
しかし、文明が進み、村が集まり、
やがて“国”が形を持ち始めると、
魔法使いの立場は静かに変わっていった。
「魔法使いよ、我が軍に力を貸せ」
「国のために働け。拒むことは許されぬ」
武力と財力を持つ者たちが力を握り、
魔法使いは“利用される側”へと追いやられた。
戦の道具として、
国の威信を示す象徴として、
魔法使いは国々に囲われ、縛られ、
その数は次第に減っていった。
中には、そんな扱いに耐えられず、
国を捨てて森の奥へと姿を消す者もいた。
「もう戦のために魔法を使いたくない」
「静かに暮らしたいだけだ」
彼らは“国を捨てた魔法使い”と呼ばれ、
人里離れた地で、静かに、慎ましく暮らした。




