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「マジかよ……」
国から送られてきた元両親がやらかした税関連の内容に頭を抱えていた。
「いずれも国の法の穴を突いていたみたい。 領民税を利用するとはね」
アリスも書類を見てため息をついている。
ここ【サテライト王国】では、各領が領民から取る税金に関する法律が定められており、各種税金には最大でも10%という上限がある。
領民が潤い、支出に積極的になってもらうためでもあるのだが、どうもうちの元両親は、法律の規制対象になってない領民税に目をつけて、そこから法外な税金を徴収していたという。
「いくら税が領運営に直結する財源だといえねぇ」
「ミレイ義姉様とセイル義兄様が専属メイドさんと一緒に超過分を返していたみたいだけど、クレス君は胃痛で倒れたんだよね、その当時」
「ああ。 だから二人には迷惑をかけちゃったけど。 あの親バカだから俺達のおもちゃを買うための財源としてだったんだろうなぁ」
「あはは……」
法の目に留まらない領民税というカテゴリーを利用して法外な税を徴収していた元両親は、俺やミレイ姉さん、セイル兄さんのおもちゃを買うための財源として確保する予定だったんだろう。
アリスの欲しかったぬいぐるみを買い占める程だから、以後も買い占めるつもりだったという事だろう。
前世では税は財源じゃないと言ったりで情報が錯綜し、本当の所はわからなかったが、この世界では税が領の運営に直結する財源となっている。
「レオン兄様曰く、これからは領民税にも上限を課すって言ってたね。 多分最大で10%になると思う」
「あのバカ両親の時は30%だったし、それもやむなしだなぁ」
「ここ以外にもそこに目をつけて領民を苦しめた所もあるから、これからは厳しくなると思う」
元両親に関しては親バカの類だが、他の領の領主とかもこれを利用して私腹を肥やしていたと教えられた。
なので、これからは領民税にも負担上限額を課すと言う。
これも現在施行中の法に合わせて10%になる見込みだ。
「まずはその上限の10%で様子見かな。 そこから年月かけて5%まで下げよう」
「そうだね。 今は30%みたいだから、20%分ここに支払わずにすむだけでも領民の生活もしやすくなるよ」
「念のため、セイル兄さんとミレイ姉さんにも相談しておくよ」
「わかった」
アリスと書類整理しながら、まずはこれから定められる領民税の上限の10%で様子見する事にしようと考えた。
ミレイ姉さんとセイル兄さんに相談してから正式に決めるつもりだ。
アリスは、法外な徴収をされてきたから、20%分支払わずに済むだけでも、領民は生活しやすくなると言っているしね。
「あ、そうだ。 明日には王宮魔術師団からリーナさんの小隊が到着する見込みだよ」
「そうか、明日には到着するのか」
「クレス君の先輩達だから、信頼できるもんね。 私も王宮でお話したけど、いい人達だって思ったから」
話は変わり、アリスからリーナ先輩達が明日にはここエルディオン子爵領に到着するという。
王都からここまでは馬車で行くなら、片道一週間はかかる距離なのだ。
途中の襲撃も予想されるが、あの先輩達なら余裕で対処できるからな。
ちなみにアリスもリーナ先輩達とは王宮で会っており、会話した事があったという。
アリスからも信頼されてるリーナ先輩達はマジですごいよなぁ。
「明日に備えて、迎えの準備もしないとな。 フレアさんにも伝えておくよ」
「うん。 私も料理を手伝わなきゃね♪」
とにかく、リーナ先輩達の出迎えを今から準備しないといけないだろう。
その旨をフレアさんに伝える事にした。
アリスも料理を手伝うと言ってるし、本当に楽しみにしてるみたいだな。
(となると明後日から聞き込みかな。 今の領民の生活の実態はちゃんと知っておきたいし)
俺は、もう一度領民の生活実態を知っておかないといけないと考えながら、書類の整理を終えて食堂に向かった。
今日はアリスのおかげで胃薬は飲まずに済んだ。
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