ちゃぷたーⅡ 幼女、オオカミ男のために奮闘する
「あ! 達也はん。いやあ、助かったで。とりあえずは一件落着ってとこやな。これで町の皆も安心するやろ!」
「そうですね。とりあえずあいつの様子はうちで見ときます。問題は…」
「せやなあ。一応あいつワンワンなんやろ? やっぱりこのままやと保健所になってまうんかな…」
保健所って…。以前、飼い主に捨てられて、野良になるペットたちは最終的にどうなるの? と達也さんに尋ねて教えてもらったことがある。たいていは保護されて里親探しをするのだけれど、引き取ってくれる人が見つからなかった場合、保健所というところに連れていかれてそして…―――
「じゃあ飼い主を探しましょう」
隣でずっと黙って話を聞いていたセシルさんがそう言った。わたしは保健所に行ってしまうウルフドッグさんの行く末を想像してしまって震えていた手を、セシルさんは優しく握りしめてくれた。
「飼い主を捜すったってなあ、普通の犬とは違うからかーなーりー難しいぞ?」
「でも、保健所連れてく前にやることといったら飼い主探し、次に里親探しでしょ」
「なんかお前、いつになくやる気だな」
「先パイには負けるけどね」
「なんやなんや! 若いもんだけで盛り上がるなや~。俺も手伝うで! これでもご町内に顔は利くんや!」
セシルさんの言うとおり、達也さん達はさっそく分厚いファイル片手にパソコンを起動して、ファイルにまとめられたたくさんの情報を照らし合わせながら、迷い犬の保護・捜索情報を検索していた。
わたしはぽかんとしてしまいながらも、セシルさんを見上げると、彼は笑って「真綾ちゃんも手伝ってくれる?」と尋ねた。わたしは何だか嬉しくなって、ぴょんぴょんととび跳ねながら、ぎゅっとセシルさんの手を握り返した。
「手伝う! わたし何でもする!」
わたし達はパソコンを囲んで、画面に写された情報をうーんうーんと唸りながら見ていた。
「捜索情報はナシ、と。てえことは、やっぱり捨て犬か野良か。けど、マジで何処から来たんだろうな」
「この辺にあんなでっかい犬飼うてる人はおらんで。どっかから逃げてきたんちゃうか。あの怪我やと、やっぱり」
「虐待されてたんでしょうね」
ぎゃくたい。わたしはウルフドッグさんに押し倒された時に服にこびりついていた血と、森でウルフドッグさんを抱きしめた時の感触を思い出した。確かに、もふもふとはしてたけど、お世辞にも良い毛並みとは言えなかったし、何よりもなんだか、ごつごつしてた。今考えると、あれは浮き出た骨だったのかもしれない。ごはんも満足に食べられなかったのかな…。
「明石屋さんの言うとおり、こいつが飼い主から逃げ出してきた可能性もあります。野良にしても人間に対しての怯え方が尋常じゃない。図体でかいわりにはガリガリだし」
「ねー先パイ」
「何だよ」
「ただでさえ扱いが難しいって言われてるウルフドッグなのに、虐待されて警戒心バリバリのすぐ唸る・吠える・噛みつくのトリプルコンボを兼ね備えた大型犬(しかもほとんど狼)を飼おうという物好きが現れる可能性って何パーセントかな」
「お前本当に痛いとこばっかりチクチク突くよな!」
「……」
「ああ! お嬢ちゃん! 泣いたらアカン!!」
現実は時に牙をむくのである。




