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幼女とオオカミ男のお話  作者: 金剛陸奥
あくとⅤ  ちょっぴり怖くて意地悪なオオカミ男さん、やっと会えましたね
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ちゃぷたーⅠ  オオカミ男、飢える



ワンくんがお家にやってきてからわかったことが二つ。


まず、ワンくんはわたしの前で、というよりも人前でトイレをしたがらない。お部屋にトイレスペースがあるんだけど、わたしがお掃除をする為にトイレをチェックしても、そこには何もない。


ワンくんの体調管理を整えるため、小学校のある平日のお昼間に、ワンくんを預かってくれている達也さんいわく、トイレの時間になると博士のお部屋に引っ込んでしまうらしい。ワンくんのトイレをチェックする為に達也さんがお部屋に押し入ろうとしたんだけど、ワンくんに思い切り吠えられてしまって追い出されてしまったんだとか。


しかし、博士がワンくんのトイレをきちんと確認しているらしく、いつもボロボロの姿で達也さんに報告している。は、恥ずかしがり屋さんなのか、それとも博士が居る所をトイレと認識してしまっているのか…、…博士と仲が良いのかな。


二つ目が、一番厳しい。ワンくんは、普通に食事が出来ない。と、いうのも、



「…ふおお!? わ、ワンくん! ぺっしてぺっ! 飲み込んじゃだめ!!」

「…!…!!」

「ゆっくり、ゆっくりでいいよ! 吐いてもだれも怒ったりしないから、ね?」



食べたものをぜんぶ、こうして吐いてしまう。


このお家にワンくんがやって来てから2日。ワンくんは水以外の食べものを口にすることが出来なかった。


達也さんに教えてもらって、生の牛肉とウルフドッグの体に適したドッグフードを混ぜてご飯として出したんだけど、ワンくんは少し戸惑った様子を見せて、恐る恐るお肉を口に入れた瞬間、盛大に吐いた。ウルフドッグの食事中は見守るようにと本にも書いてあったので、初めての体験にワクワクしていたわたしはその盛大な吐きっぷりにしばらく固まっていた程だった。


あれだけ痩せてるんだから満足にご飯も食べて来れなかったんじゃ、むしろ食べ方を知らないんじゃ! と考えたわたしはドッグフードを食べやすいように砕いて、お肉も一口サイズに千切って出してみたんだけど、結果は同じだった。


口に入れた瞬間にワンくんは吐いてしまう。今みたいに飲み込むことも出来るときもあるんだけど、しばらくして戻すことがほとんど。もっと大変なのは、そのまま吐きださずに、無理やり飲み込もうとすること。おうとぶつを飲み込むのは危険と保健の授業で習っていたため、それはもう必死で吐き出させた。


ワンくんを保護してからも、ずっと警戒して何も口にしていなかったって達也さんも言ってたし、ただでさえ痩せ細っているワンくんの体がさらに痩せた気がする。



「うーんうーん。おかゆとかは食べられないよね。さすがに…」

「…」

「だ、だいじょうぶだよワンくん! ワンくんにも食べられるものぜったいあるよ!!」



でもやっぱり、はやく何か食べさせてあげないと2日間水だけは辛いはず。達也さんがワンくんを預かっている間に、栄養剤の入ったゼリーや胃に優しい老犬用のドッグフードも試してくれたんだけど、それもだめだった。


病院に行ってお医者さんがビタミン剤の注射を打とうとしたら興奮して暴れてしまうし、注射を見たときの嫌がり方がじんじょうじゃないと断念。病気では無いけれど、ストレスからのものである可能性が一番高い、そうお医者さんに言われた。このままずっと何も食べない状態が4日間続いたら入院して診た方がいいとも。



「ワンくんはがんばって食べようとしてくれてるもんね」

「…」

「よ、よーし!! 明日は学校もお休みだし、色んなご飯作ってみるね!!」



そう一人で意気込んでいると、ワンくんのお部屋の扉がノックされて、入ってきたのは、お盆を持ったお父さんだった。少し心配そうな顔をしたお父さんは柵の中に入って、様子をうかがいに来たんだと言って笑ってくれたけど、ワンくんはお父さんの姿を見るとすぐにケージの中に引っ込んでしまった。お父さんはお盆に乗せていた暖かいミルクココアをわたしに渡してくれた。



「ありがと、お父さん」

「いえいえ。やっぱり僕にはまだ警戒してるみたいだね。どうだい? ワンくんの調子は。相変わらず食べないかい?」

「うん…。今日も全部吐いちゃった」

「どれどれ…ああ、消化しきれてない上にほとんどが胃液だね」



ワンくんが吐きだしたものを確認したお父さんはうーんと考え込んで、頭隠して尻隠さずのワンくんを見つめた。



「食べる意思はあるみたいだから、お腹は空いているんだろうね」

「お肉見てお腹がきゅ~って鳴ってたのは聞こえたから、たぶん…」

「食べたいけど食べられないか…。食べ物に原因があるのか、それとも食事に何かのトラウマがあるのか…」

「と、とらうま!?」

「いじわるされていた様だからね。食べることに何かトラウマがあるのかもしれないね」

「どっどうしよう! もしそうなら、わたしどうしたらいいんだろう…」



ご飯食べるたびに思い出すトラウマって、克服出来るのかな…。食べ物に原因があるなら何とか出来る! って思ってたけど…。い、イヤイヤイヤ! だいじょうぶ! そこをどうにかするのも飼い主の役目なんだから! へこたれちゃだめ!! ちゃんと助けてあげなきゃ!!



「お父さん!! 宣誓します!! 聞いてください!!」

「はい、どうぞ。まーやさん」

「わたくし、白附真綾しらつき まあやは!! ぜったいにワンくんがご飯をお腹いっぱい美味しくいただける様にサポートすることを! ここに! 誓います!!」

「うんうん。承りました」










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