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妊娠を喜べない発言があります。
読む際は注意してください。
妊娠の知らせを受けたのは、もう諦めかけていた頃だった。
何度も体外受精での胚移植を繰り返し、そのたびに陰性の結果を手に帰宅した日々。笑うことすら義務のように感じていた。
だからこそ、医師の口から「おめでとうございます」と告げられた瞬間、喜びより先に戸惑いが胸を満たした。
ところが、その喜びは長くは続かなかった。
妊娠三ヶ月の定期検診で受けた遺伝子検査の結果、医師は慎重な声で告げた。
「お子さんは、単為生殖によって受精しています」
意味がわからなかった。体外受精でもない。私の卵子だけで生命が芽生えた――そう説明されても、現実感はなかった。
その日、家に戻っても夫の顔を見ることができなかった。先に口を開いたのは彼だった。
「……正直に言ってくれ。浮気したんじゃないのか」
吐き捨てるような声に、膝の上で指が強く絡まる。
「そんなこと、してない」
でも彼は信じなかった。テレビやネットで騒がれる“単為生殖ベビー”のニュースを持ち出し、「そんな奇跡みたいなこと、信じられるか」と言った。
やがて彼は、単為生殖に反対する団体の集会に出入りするようになった。
その背中を、私は遠くから見つめることしかできなかった。
お腹の中で、微かな胎動が始まっていた。
その小さな鼓動だけが、私の唯一の味方だった。




