9-2
ある夜、帰宅した健太は無言でリビングのソファに腰を下ろした。普段は明るく笑う彼が、今日は言葉少なで、ただ俯き加減に座っている。白石はその様子をすぐに見て取った。
「健太……」
母としての本能が、彼の言葉にできない苦しみを察した。目の奥にかすかな涙をため、肩を少し震わせている彼の姿は、まるで幼い子どものように見えた。
「無理に話さなくていいよ。いつでも、何でも、私はここにいる」
そう言って、白石は優しく手を伸ばし、ぎゅっと健太の手を握った。その温もりには、長年母として積み重ねてきた深い愛情と覚悟が込められている。
健太は言葉にしなくても、その優しさに心が少しだけ救われた気がした。どんなに不安でも、母の愛があれば一人じゃない――そう感じた。
母はただそばにいるだけで、全てを受け止めてくれる。白石の眼差しは静かに、しかし強く、健太の心を包み込んでいた。
健太は白石の優しい手のぬくもりに支えられながらも、心の奥底に溜め込んだ不安が限界に近づいていた。
静かな部屋の中で、彼はふと顔を上げ、震える声でぽつりと漏らした。
「母さん……もしかしたら、俺……早老症かもしれない」
言葉を発した瞬間、自分でも驚くほど胸が締めつけられ、涙がこぼれそうになった。
白石は黙ってその言葉を受け止め、優しく頷いた。
「そう思ってるのね……怖いよね。でも、怖がるだけじゃ何も変わらない。私たちには、できることがある」
健太の肩をそっと抱きしめ、母としての深い愛情と強い覚悟が彼の胸に染み渡った。
「一緒に向き合おう。どんな道でも、私はあなたの味方だから」
健太はその言葉に母の手を握り返した。言葉にしなかった恐怖も、少しずつ和らいでいくように感じた




