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健太は日々の暮らしの中で、周囲の視線や言葉が刺さるたびに心が乱れた。
「自分は何なんだろう……普通の人間じゃないのか?」
鏡の前で自分の顔を見つめるたび、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような虚しさが広がる。
「奇跡の子」と呼ばれ、研究対象とされる自分。
本当はただ、普通に生きたい。
友達と笑い合い、恋をして、家族と穏やかに過ごしたい。
それなのに、どこかで自分は特別な存在で、守られなければいけない「何か」に見られている。
そんな時、美咲がそっと側に寄り添った。
「私たち、違うかもしれないけど、同じように普通に生きたいよね」
美咲のその言葉に健太の心は少しだけ軽くなったが、それでも不安は消えなかった。
「このまま隠れて生きていけるのだろうか」
胸の内で問い続ける日々。
ある夜、二人で話しながら、美咲がぽつりと言った。
「もし、誰かに私たちのことを知ってもらえたら、何かが変わるかもしれない。理解してもらえるかもしれないよね」
その言葉に健太は驚いた。怖さもあった。
だが、次第に思いが溢れてきた。
「確かに…ずっと隠れているのはもう疲れた。僕らの存在を否定され続けるのは辛い」
二人の間に静かな決意が芽生える。
「一緒に戦おう。僕も、僕たちのことを知ってもらうために動く」
美咲は微笑み、健太の手を強く握った。
「怖いけど、私も一緒にいる。きっと大丈夫」
そうして、二人は自分たちの未来を自分たちの手で切り拓く覚悟を固めたのだった。




