1:牢屋にて その3
「用がないなら帰らせていただきます」
一向に話が進まないのに業を煮やしたソーコちゃんが実家に帰ります的な発言をすると、慌てて魔王が引き止める。もはやどっちが主かわからない。
「待て待て! 魔王城の見取り図を出すのだ!」
「……」
「出してくれ!」
「…………」
「出してもらえないか?」
「わかりました。しばらくお待ちを」
ソーコちゃんが一礼して姿を消した。多分、自分の中に入って探しているんだろう。どうやっているのか見当もつかないが。
「まだか……まだか……」
魔王がやきもきして待っているのは、ファミが好物の団子が焼けるのを待っているのと大して変わらないというのを発見したが、まあ、誰も見分けはつかないだろう。
と、数人の教兵が刺股を持ってやって来た。
「ようし、お前ら出ろ」
教兵が牢の鍵を開けて俺たちを呼んだ。
「お? 釈放か?」
「そんなわけがあるか! さっさと来い!」
とにかくここから出られるのは嬉しいので素直に従う。う~ん、シャバの空気だ。
「来い!」
他に数人の囚人が牢から出されて刺股に突かれながら歩いて行く。恩赦とかじゃないのは、囚人たちのいかにも極悪そうな面構えと体の傷でわかった。
「ジェイくん、お団子くれるのかな?」
ファミが期待にヨダレを垂らしているが、少なくとも団子じゃないのは確かだ。
「そこに並べ」と指示されたのは身の丈の倍以上ある鉄格子の手前だった。隙間からその向こうが我が見える。広場のような空間だというのはわかる。
それと斜め上方に壁の上にせり出した部分が見える。
そのバルコニーのように突き出した観覧席に誰かが知らないが人が進み出た。遠目でも派手な服を着た女の子のように見える。オレと同じくらいか。
「競技会の開催を、この私エリザベート・ル・ロンド=レンディアンの名の下に宣言します!」
エリザベートが両腕を広げると、周囲から歓声が沸き起こった。もう空気が震えたというか、爆発したというか、物凄い音だ。どんだけ人がいるんだ?
「ん? レンディア王国第2王女だよな。ってことは、問題のローネの妹?」
「なるほどな。灰汁が強そうな女だな」
「悪の妹なのですねー」
「なるほど。メディアと結託しておったか」
「傲慢よくない」
なんだか、想像したよりも数倍嫌な妹に、ローネに同情しか感じない。何としてでも助けてやらないと。
「さあ、愚かしくもメディア様を汚そうとしたみなさん、命を賭けて女神様を楽しませてくださいね! 勝ち残れば、私の名の下に救いを与えてあげるわ!」
「自分に酔っておるな」
「あいつを思い出すな」
辛辣な魔王。ツバを吐き捨てる勇者。
と、目の前の鉄格子がせり上がって、背後から刺股でドンッと押される。たたらを踏んで外に出ると、一気に視界が広がった。
「はあ? まさか、これは……」
「うむ! コロセウムのようだな!」
勇者が興奮した声を上げた。
血をたぎらせるなーっ! この脳筋勇者め!




