4:目的地はそこだったのか!
「人……?」
遠くに見える長い列を指さしたファミ。列は街道に沿って延々と伸びている。
よく見れば、人だった。
街道に沿って同じローブのようなものをかぶった人々がゾロゾロと歩いて、山道を登っている。なかなか壮観だが、薄ら寒いような光景だ。
「なんだ、あいつら?」
「えーっと、ファミ知ってるよー。なんか行列? みたいな?」
「ああ、名物屋台がこの先にあるんだな」
「そうそう! 売り切れないうちに並ぼうよ、ジェイくん!」
「あるかーっ!」
俺はファミに思いっきり突っ込んだ。
「ファミル、それを言うなら巡礼」
「ふみ~」
「巡礼ねぇ。この辺りにお参りするような場所があるのか?」
「オレの生誕の地とか?」
「勇者ってこの辺りの出身なのか?」
「いや?」
「違うのかよ! だったら、死んだ場所だな」
「それも違……あれ?」
勇者は急に考え込んだ。
「どうした?」
「オレ、どこで死んだっけ?」
「自分が死んだ場所くらい覚えとけ!」
「お前は知ってるのかよ?」
「俺はまだ死んだことないからな」
「ちっ……」
「魔王は?」
「我くらいになれば死んだ場所など死んだ後でも知っておるぞ」
「どこだ?」
「それは無論、魔王……城……だったと……思う……ぞ?」
「なんで不確かなんだよ?」
「いや、待て。確か、我は……死んだ……よな、勇者よ?」
「もちろん、オレが殺し……た……よな?」
「前も言ってたけど、殺しあったはずのお前らがなんで曖昧なんだよ?」
「死んだショックで忘れてるのかもしれんな」
「いやまあ、死ぬのはショックだろうけど……」
こいつら、本当に魔王と勇者なんだろうか。今さらながら疑問が生じてきた。
「あの服はメディーナ教の礼拝服だにゃ」
俺の肩に這い上がってきたニャオウが巡礼を見て答えを口にした。
「魔王よりも役に立つな、おまえ」
「そんな恐れ多いことは口にするにゃ」
「いいんだ。役に立ったヤツは褒める。ダメならとことんいじめる」
「ひどいヤツだな、おまえ……」
「魔王に褒められて光栄です」
「ジェイくんはひどいヤツなんだー」
「知ってた。ジェイトひどい」
「なんでだ?」
「ボクを弄んだ」
「いつ!?」
「生まれた時から」
「嘘はいかんぞ、セイル」
「うん、ごめん」
「秒でバレて謝罪!」
「セイルちゃん、潔よいねー」
「潔いじゃなくて、そもそもやるな!」
突っ込んだところで、ここまでの状況を整理しておく。
ローネを掠った連中が去った方角に向かっている。そして、何やかやと邪魔してくる集団。どうやらメディーナ教の連中らしい。そこでメディーナ教の巡礼を追っている。まあ、そんなところだ。
そして、巡礼の列を追っているうちに、国境となっている山岳地帯にたどり着いた。それほど峻険な山じゃないが、山は山だ。上り道はきつい。
「がんばるですよー! ジェイくん、ファイトー!」
「ジェイト、頑張って登ったらご褒美」
「またしっぽりとかそんなんだろ?」
「峠の茶屋でお団子ー!」
「おまえのご褒美かい!」
「えー、くれないのー?」
「だいたい、おまえらは魔王と勇者なんだから基礎体力が人間じゃないだろ! 特に勇者! 俺は一般人なの!」
「じゃあじゃあ、鎧着たら?」
あれは確かに力が出る。疲れもあまりない。しかし、問題がひとつあった。
「暑いんだよ、あれ!」
「それくらい我慢せんか!」
「汗が凄いんだよ! 着てると蒸れるし、臭いんだよ!」
「えー、臭いジェイくんやだー」
「ジェイトの男の匂い……」
「趣味の違いがわかってよかったよ……」
そんな会話を繰り返しながら山道を登り続け、ようやく峠が見えてきた。
「この峠を上り詰めたら、見えるはずだな」
魔王が心なしか緊張した声でつぶやいたのを俺は聞きとがめた。
「何がだ?」
「峠の茶店ー!」
魔王の代わりにファミが食い意地の張った答えを返してきた。答えたくないからファミに主導権を戻したのか、それともファミの食い気が勝ったのか。どっちもありそうなのが厄介だ。
代わりに勇者が尋ねる。
「ん? ヴァレンドルン帝国か?」
「いや、領土は見えるだろうが。せいぜい砦くらいだろう」
「だったら何が見えるんだ?」
「前に進めば見える」
「ファミ、頑張って歩く!」
「ジェイト、頑張る」
ファミルとセイルが俺を引っ張って猛然と歩き出す。ほとんど引きずられる罪人のような格好になってるんだけど。
「おまえらは元気だな……」
などとため息をついているうちに峠までやって来た。ファミとセイルが歓声を上げている。頼むからヤッホーとか勘違いしてやらかさないで欲しい。
俺もふたりの後から顔を上げて、ほーと小さく声を上げる。
峠から見下ろすと、広大な平原が広がっていた。
収穫前の穀物の畑が青々としており、それを貫くように街道が走っていた。街道を巡礼の列がゾロゾロと連なり、その行き着く先には巨大な建造物がそそり立っていた。
建物という表現じゃ足りない。人間が作ったとは思えないほど巨大で、そして、純白の美しい建物。
「なんだ、あれ……?」
我ながら呆けた声だ。
「メディーナ教総本山だ」
「なるほどな。あれがローネの連れ込まれたところか」
「言い方!」
勇者に突っ込んだものの、この距離からだと奇妙な形の宿に見えなくもない。女性の姿をした半裸の巨像なんか街道筋にあったら、まず勘違いするだろう。うん。
「違う……」
「え?」
「違う……あれは……我の城だ……」
ぼそっと魔王がつぶやいた。一瞬、意味がわからなくて聞き返す。
「なんて?」
「あれこそが! 我が物! 魔王ヴァルミドルグの居城! 魔王城なのだ!!」
魔王は怒りを抑えきれずに声を上げた。
すみません。今回の更新はここまで。
次回はいよいよ目的地に乗り込みます。
出来るだけ早く書きたいです。




