1:総本山は魔王城 その1
前よりは速いペースで更新できました。
11章だけですが、2、3日おきにアップ予定です。
「あれが魔王城?」
彼方にそびえる巨大な城を顎で示して訊くと、勇者が大きくうなずいた。
「うむ、オレが乗り込んだのもあそこだ。まあ、格好は……記憶と少し違うが」
「少しではない! あんなゴテゴテしたものに変えおって! 趣味が悪いわ!」
雪のような白い城を趣味が悪いと言い放つのは魔王の審美眼なのか。
「魔王のくせに純白の城って、おまえ実は夢見る少女なんだろ?」
「違ぁーうっ! どこの誰か知らぬが改装しやがったのだ!」
勇者にからかわれる魔王。しかし、はた目からはセイルがファミをいじっているようにしか見えないんだが。
「どこの誰かって、誰なの、ジェイくん?」
「つまりメディーナ教ってことか。信者から集めた金で魔王城を改装って、いいのか?」
「魔王を倒したお祝いでもしたんだろ」
「だから、ワレは倒されておらぬ!」
「誰も証明できねぇからな」
「貴様も死んだろうが!?」
「人間は100年もたたずに死ぬんだよ。魔王は違うだろうが? それが生まれ変わったってこたぁ死んだんだろ?」
「ぐ……」
魔王が勇者にやり込められている光景なんか見られるもんじゃないな。しかも脳筋勇者の方が言い争いで勝つなんて。
「メディーナ教の総本山が国境辺りにあると聞いた時から嫌な予感がしておったのだ。まさか、あの忌々しい教会が、我が城を乗っ取っておったとは!」
魔王は文字どおり地団駄踏んで叫ぶやら拳を振り回すやらで忙しい。それをやってるのがファミなもんだから、はっきり言って妖しげな踊りをしているようにしか見えないわけだが。
「ワレのいない間にいったい何が起こったのだ!」
「まあ、主がいなくなったんだから、誰がどう使っても勝手なような気もするけどな」
「ジェイくん、クールだー」
「ジェイト、冷たい」
「いや! 城なんてそんなもんだろ? 無人だと浮浪者とかゾンビとか住み着くぞ? それより誰かが使ってる方がいいだろ」
「魔族はどうしたのだ!? おい、ニャオウ!」
「は、はいっ! 魔王様!」
ニャオウがダッシュしてきてファミの前に直立不動で立った。
「ネコも立てるんだー。えらいねー」
「赤ん坊が立っちして褒めるような顔するにゃー!」
全力で抗議するニャオウだが、その姿勢がふらふらしてるのでは説得力は皆無だ。
「早く答えぬか!」
「気が短い魔王だな。1000年も待ってたんだから少しくらい待ってやれよ」
「1000年も待っておらぬわ!」
「あ、死んでたんだっけ」
「ああ、オレが殺した」
「殺されてない!」
自信たっぷりの勇者に反駁する魔王。そろそろこの話の決着もつけないと、いい加減に虚しくなってくるな。
「前にも言ったと思うんですにゃ、魔族はバラバラの流浪の民になったんにゃ。にゃので、各地に小さな集団があるくらいだにゃ」
「で、田舎の村長レベルが魔王を名乗ったと」
「ニャオウだにゃ! 魔王なんておこがましいにゃ!」
「そうだっけ?」
「そうだにゃ!」
ニャオウはガクブルしている。あんまり震えているので、これ以上いじるのはやめておこう。
「で、教団が魔王の本拠地をを我が物顔にしているのを誰も知らなかったってか? さすがに本拠地を」
「そこまで注意を払ってる余裕もなく……。1000年だと、比較的長生きする魔族でも数世代にゃので、忘れられた可能性も……」
「魔族は忘れっぽいんだねー」
「いや、俺も曾爺さんの時代のことなんて知らねーもんな」
「ん。ボクも知らない」
「そっかー。ファミもお母さんのこと知らないやー」
「それは知っとけよ!」
突っ込みの音がスパーンと響いた。
「とまあ、そう言うことで、魔族は魔王の死後――」
「死んでないというに!」
「えーっと、生死不明の間に、魔族はバラバラに逃走して、地方に引きこもりになったから、魔王城がどうなったかは知らんってことか」
「気に入らないまとめ方だけど、否定できないにゃ……」
「わからんことで悩んでても仕方ないから、訊いてみよう」
「誰に訊くの、ジェイくん?」
「そりゃ、信者だろ」
そんなわけで、信者を捕まえて情報を聞き出すことになった。
もうひとつ進行中の『派遣勇者は帰りたい~異世界召喚が多すぎて、僕の仕事が減りません』もよろしくお願いします~
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