3:女湯からの刺客 その3
「で、肝心のローネは?」
どう見ても、ひとり足らない。
「ローネちゃんが大事なんだ……」
「いやいや、第2王女の刺客なんだろ、こいつら? だったら、ローネが危ないだろ」
「そっかー」
「そっかーじゃねぇ!」
ファミが急に真顔になると、俺に思いのほか素早く接近して来た。
「そんなにローネが大事なんだな」
ファミの口調がおかしいと気づいた時には、すでにファミの両手が俺の兜を挟むように掴んでいた。
「邪魔する者には死あるのみ!」
「お、おい、ファミ!?」
魔王が本性現したのかと思ったが、だったら魔法使って一気に叩くはずだ。
ファミの腰に手を当てて引き剥がそうとしたがビクともしない。兜を掴んだ手が万力のようにがっちり離れない。
「なにっ!?」
「よくやった、リンナ! 覚悟!」
黒パンツの刺客がいつの間に自由になったのか、俺に迫る。
「来るな、黒パンツ!」
「私は黒パンツじゃなーい!」
「黒パンツなんですか、ボス?」
「殺すぞ、リンナ」
「すみません。調子乗りました」
「お前の弱点はわかっている。リンナ、このまま風呂に突っ込め」
リンナとかいうのに操られているファミは俺の顔を掴んで湯船に引きずり始めた。
あ、やべ……。この甲冑の明らかな弱点を突かれる。回避するにはこれしかない。
「裸が好きっ!」
叫ぶと同時に甲冑は俺の体から弾け飛んでどこかに消えた。兜を掴んでいたファミもその勢いで吹っ飛び、見事に湯船に墜落する。
これで一旦危機は去ったが、まだ黒パンツがいた。
「そ……その目が私のパンツを見たのだな! 潰す!」
もの凄い勢いで迫って来る。
いや、温泉でそんなに走ると危ないよと言われなかったのか。
天然掛け流しの湯の成分で滑りやすくなっている床に、刺客はズルッと足を滑らせた。いやもう、見事に滑って、そのままの勢いで俺に突っ込んでくる。足から。いや、大きく開いた股間から。
「今度ははっきり見えたな。というか、見せてくれたな」
「ひゃうっ!?」
刺客は股間を押さえておかしな悲鳴を上げたが、そんなことをしてもすっ転んだ体が止まるわけもない。そのまま俺の顔面に突っ込んできた。
「そんなに俺に黒パンツを見せたいのかっ!?」
さすがに2回も顔面に股間を押しつけられるわけにもいかない。吹っ飛んできた黒パンツを受け止め――るのは無理があるので、とっさにしゃがんでかわそうとする。
「ジェイくんに! なにするんですかーっ!」
いきなりファミの怒声がしたと思うと、横合いから桶が飛んで来て黒パンツの腰の辺りに命中した。おかげで軌道が変わって俺の横に転がり落ち、目を剥いて丸まった。意識飛んでるな。
「お? 意識が戻ったか、ファミ」
「ジェイくん、おかしなことされなかった? あの女に下半身をツンツンされたり、パフパフされたり……」
「戦闘中にそんな暇なことする敵がいるかっ!」
「パンツは見せた」
「こら、セイル、混ぜっ返すな」
「パンツ見せられたんですか? じゃあ、ファミは中身をみせちゃいますー!」
「脱ぐなーっ!」
水着に手をかけたファミを制止し、話題を変える。
「それで、ローネはどうしたんだ?」
「え?」
「一番、危ないのがローネだろ」
「多分、上」
セイルが女湯を指さした。




