3:女湯からの刺客 その2
「ジェイくん、上だよ!」
珍しくファミの緊張した声がどこからか飛んで来た。
「ん?」
見上げた兜のスリットに飛び込んできたのはパンツだった。
「なっ!?」
反応が遅れたのは、俺も正常な男子だという証拠だ。いや、そうでなくても思考が硬直するだろうけど。
兜越しの視界が真っ暗になった。誰か知らんが、顔に股を押しつけた、いや、顔にまたがったらしい。兜があって良かったのか悪かったのか。
「ジェイくんにまたがってる不埒な娘、刺客だから!」
「刺客!? 女が!?」
「女湯に襲撃に来たのだから当たり前だろう!」
俺の顔をパンツで覆ったまま、刺客が叫ぶ。
「意外とマジメなんだな」
「それ以外の人間に悟られたり、湯治の邪魔をするつもりはない!」
「しかし、ここは男湯だ! つまり、貴様はただの痴漢! あるいは痴女!」
「なっ!? 私が痴女だと!?」
「違うのか? ほらほら周りはおっさんやら爺さんばっかりだぞ?」
「うくっ……」
「それ以上に男の顔にパンツを押しつけている変態だって気づいて欲しいぞ」
「え? ああああああああ――っ!」
今になって気づいたのか、凄い声を上げて得物で俺の兜をガンガン殴り始めた。ううっ、耳に響くな。痛くないけど。さすが勇者の甲冑。
「みっ見るなっ! この変態め!」
「いや、パンツのせいで真っ暗でなにも見えないんだが」
「見るなっ言ってるだろ!」
「だからなにも見えねーって! いや、黒い中にもさらに黒い部分が――」
「いやーっ!」
ガンガン殴ってくるのがドカンガキンに変わった。さすがにかなりの衝撃でうるさい。何で殴ってるんだろう?
うるさくなってきたので刺客の腰の辺りを掴んで持ち上げる。掴んだ時に『ひゃうっ!』とか悲鳴を上げたが、しょせん刺客だ。かまうものか。
ようやく黒パンティが兜から外れ、光が見えた。刺客の顔を拝もうとしたら、先にそいつが振り下ろそうとしていた得物が先に飛び込んできた。
「なにそのハンマーっ!」
一抱えはありそうな大きさだぞ、そのハンマー!?
「殺す気か!」
「今まで死ななかったくせに!」
「ずっとそれで殴ってたんかい!」
ああ、勇者の甲冑でよかった。
「とりあえず、没収&拘束」
ちゃちゃっと刺客を後ろ向かせて腕を後ろ手にして引っくくっていると、ファミがやって来た。ようやくセイルとファミとニャオウが揃った。
なんかファミがにらんでいる。俺なんかやったっけ?
「ジェイくん、見たでしょ?」
「なにを?」
「刺客の女の人のパンツ」
「は?」
「動きが一瞬固まった」
「まじまじと見たんだ」
「仰ぎ見たらパンツが目に飛び込んできたら誰だって動きが止まるわ!」
「何色だった?」
「黒」
「やっぱりじっくり観察してたんだー!」
「今度は黒を履く」
セイルが宣言する。
「ファミも!」
おかしな対抗心を燃やさんでもいいだろ。
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VRゲーを完クリしたら魔王にゴリ推しされるんだけど、それより現実をコンプしたい
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