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4:深夜の逆襲 その1

「わーい、ベッドだー。久しぶりー」


 ファミが勢いよくダイビングしてガツンと派手な音がした。


「……ねえ、ジェイくん、ベッドが襲ってきた……」


 額を押さえたファミが泣きそうな顔で訴える。


「安宿のベッドがふかふかなわけないだろ」

「だって嬉しかったんだもん……ふみー」

「ああ、わかったわかった。泣くなって」


 ファミの額に手を当ててなでてやると、セイルがベッドの角の辺りをじっと見ている。


「セイルもわざわざ怪我しなくてもいいから!」

「ジェイトはそう言うと思った」

「この策士め」


 セイルも俺の脇に座ってくっつく。仕方がないのでセイルの頭もなでる。

 ローネは感心したような呆れたような微妙な目で俺を見ている。


「そうやって魔王と勇者を調教しているのか?」

「いや、昔からこうなんだけど。何かにつけてくっついてくるんだよな」

「いつからだ?」

「俺が3つくらいの頃だったかなぁ」

「おまえを親だと錯覚しているとか?」

「雛じゃあるまいし、そりゃないだろ」

「ううむ、謎だな」


 ローネは俺にもたれかかっているふたりを見て唸る。


「ところで、あれから襲撃がなかったな」

「さすがに王都が近くなれば襲撃もないだろう」

「となると、今日辺りが最後?」

「わかっていたか。そういうことだ。今夜……だろうな」

「んじゃ、そろそろ?」

「寝るまで待つかもしれんな」

「そうか。ちょっと面倒だな」

「ん? なにがだ?」

「ジェイくん、眠ーい!」

「ん……ボクも寝る」

「お前らは寝てもいいけど、魔王と勇者は動けるのか?」

「わかんなーい」

「返事がない」

「ジェイくん、バミちゃん起きたら起こしてねー」


 そう言うと、ファミはこてんと寝てしまった。寝つきは異様にいいからな。寝る子は育つ。ところで、バミちゃんって何だったっけと考えて思い出す。魔王の愛称だ。


「大丈夫なのか?」


 流石に不安そうにふたりを見るローネ。


「ま、なんとかなるだろ」


 ローネは不思議そうに俺を見る。


「ん? 顔になんかついてるか?」

「いや、不思議に思ってな。そのふたりと違って、おまえはなにかの転生ではないのだろう?」

「そうだと思うけどな」

「ただの村人とは思えない落ち着き様。判断力。私の側近におきたいくらいだ」

「単にものを知らないから適当なこと言ってるだけだって。まあ、お茶汲みくらいならできるぞ?」

「そうではなくてな……その……もっと側でも……」


 ローネの声は小さく消え入るようで、はっきりと聞き取れなかった。それ以上に聞こえてきた物音があったからだ。


「その話は後にした方がよさそうだ」

「そのようだな。気が利かんやつらだ」


 ローネは舌打ちすると剣の柄に手をかける。


「よし、行くぞ」


 そう言うと、寝ているふたりを両腕に抱え上げる。


「え?」とローネが俺を凝視した。

「何か変か?」

「ふたりを軽く抱えたな?」

「ああ、軽いもんだぞ?」

「いくら軽くてもそんなに簡単に――」

「まだ余裕があるから、ローネも運ぼうか?」

「い、いや、いい。持てないと言われたらショックだ」

「大丈夫だって」

「いや! 遠慮する! 行くぞ!」


 頑なに拒否られて、まだ信頼されてないんだなとちょっと落ち込んだが、今はそれどころじゃない。ふたりを抱えたまま、窓を蹴り開ける。広い窓でよかった。抱えたままバルコニーに出て、飛び降りる。


「ジェイト!?」

「大丈夫だぞ。まだここまで来てない」

「ではなくて、よくそれで平然と……いや、いい。おまえたちはみんなどこかおかしい」

「俺は至って平凡だぞ。勇者の鎧のせいだろ」

「脱いでるのにか?」

「なんか、力を分けてもらってる感じ?」

「まあいい。私も降りる」


 バルコニーからぶら下がって慎重に降りてくるローネを待つのに焦れた俺は抱えたふたりを地面に降ろす。


「ローネ、飛び下りろ」

「い、いや、いい」

「時間がもったいないだろ」

「そ、そうか。では、行くが、甲冑を着ているから重いぞ?」

「大丈夫だって。こっちも着るから。装着!」


 勇者の甲冑がいつものようにどこからともなく現れて俺の体に装着される。


「よし、行くぞ」


 飛び下りたローネを両手で受ける。勇者の甲冑のせいで重さなど感じない。


「大丈夫だっ――っ!?」

「ん? どうした? 大丈夫だったろ?」


 バイザーを上げているせいでローネの顔が真っ赤になっているのが見えた。


「い、いや、その……この抱き方がだな……」

「ああ! お姫様をお姫様抱っこしちゃったな!」

「や、やめてくれ! そんな可愛いもんじゃないのだから!」

「充分可愛いのになぁ」

「……そんなことを言うと……勘違いするぞ」

「いや、可愛いんだから勘違いじゃないだろ」

「そうではなくてだな!」

「グゴオォォォー」

「やかましいぞ!」

「ウゴオォォォー」

「ええい、なんだっ!?」


 ローネが苛々と怒鳴ると同時に、いつの間にか周囲を取り囲んでいたゾンビが声に反応して襲いかかってきた。


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