3:真昼の襲撃者 その2
「しかし、ここまでしてあんたを殺しにかかるって、第2王女ってのはよっぽどあんたが憎いのか権力の亡者なのか」
「第2王女というよりは、その母親だな」
「現王妃か」
「サロディアンナ王妃の父はレンディア王国の国教でもあるメディーナ教の総本山メディア教国の法王なのだ」
「宗教と国家の合体で強くなろうって魂胆か」
「そういうことだ」
宗教と国家が結びついて基盤を強固にするというのはよくあることだ。権力の裏付けが王家という伝統だけじゃ心許ないとなると、次には信仰の力を求める。宗教の方も権力と結びついた方が信者を集めやすい。
あー、ゲロが出るな。どうも、宗教ってヤツは生まれつき肌に合わない。
「メディーナ教とは女神メディアを奉じるあの連中だな」
魔王が忌々しげに吐き捨てた。ファミがこういう怒りを吐き出すのは見たことがないので新鮮と言えば新鮮。
「なんだ、魔王、知ってるのか?」
「あの連中のしつこさにはほとほと手を焼いたわ」
「そんな昔から信仰されていたのだな」
「昔から狂信的だった。問答無用で攻撃してきよった。まあ、武器も魔法も使えん連中だったから、石を投げつけてきたくらいだが」
「反撃したのか?」
「まあ、津波と地震を起こしたくらいだ。半分くらいは死んだろうな。思えば、我が何もしておらぬ頃から難癖つけて攻撃してきよった」
「難癖?」
「姿が邪悪だとか気味が悪いとか」
「あー! それは仕方がない」
「そんなに見た目が酷いのか?」
「勇者しか見たことないもんな」
「グチャグチャドロドロした触手の塊」
「セイル、よく平気だな」
「……吐く」
「お、落ち着け! 大丈夫か!?」
「胸さすって」
「それでいいのか? よしよし。これでいいか?」
「もっと下の方」
「下ってお腹か?」
「もっと下」
「セイルちゃん、赤くなってるよ?」
「病気だからもっと激しくしていい」
セイルが俺の手を取ってお腹の下に持っていこうとする。と、ローネが大きく咳払いした。
「おまえたちの脱線には慣れてきたのだが……真っ昼間の街道の真ん中で、こう、なんだ、男と女の営みをすることはなかろう!」
「ローネちゃん、真っ赤だー」
「わ、私には羞恥心というものがあるのだ!」
ローネは街道のど真ん中で羞恥心を叫んだ。
敵の襲撃で兵士のうち先行する3分の1が死に、馬車の半分が使えなくなった。残った馬車は物資を積みんで運ばなければならないため、指揮官であるローネも歩くしかなかった。しかも、甲冑姿のままで。
ファミとプンプンしながらセイルにからみ始めたので、そっちは任せてローネに声をかける。
「大丈夫か?」
「心配はいらん。いつもこの姿で過ごしているのだ」
「そうは言っても、長距離歩くことはないだろ?」
「次の町までくらい、なんとかなる」
行軍スピードは基本歩兵に合わせているので変わらないが、指揮官が徒歩では休憩の回数が増える。かといって、魔王に魔法を使わせるわけにはいかない。さっきのゾンビ殲滅については、王女の機転で油で燃やしたという設定にした。幸い、目撃者の生き残りはいなかった。
「ジェイくん、疲れたー」
「ジェイト、足が痛い」
おまけに魔王と勇者の生まれ変わりのセリフとは思えない泣き言を何度となく聞きつつ、ノロノロと行軍は続く。
3日で行ける行程を5日かけて進み、王都に近い村にたどり着いた。
村の規模は俺たちの村より少し大きいくらい。王都に近いこともあって宿屋もある。王女一行として俺たちは宿屋に、他の兵士は村の外で野営ということになった。




