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2:冒険者ギルドで初仕事 その2

 昼前に現地に到着。

 道中は特に何もなかった。ファミと魔王が交互に疲れただの喉が渇いただの文句を言うことをのぞけば。ひとり漫才と思えばおもしろいんだが、オチがまったくないのは聞いていても疲れるだけだ。


 麦畑の彼方に木々の生い茂る林が、まるで壁のように広がっていた。実際、ここから先には魔物が出没する。いわば境界線だ。だから冒険者に依頼することになるわけだ。

 林の際をざっと眺めて、めざす薬草を発見。


「お、結構生えてるな。これじゃ1時間もあれば終わるかな」

「じゃあ、終わってからご飯?」

「そだな。あの辺りの全部取ってくれ」

「わかった

「ファミもやるねー!」


 セイルと話をしていると、負けじとファミが勢いよく駆け出していく。


「じゃあ、パーッとやるかー」


 苦笑しながら、俺は荷物を置き、薬草採集に向かった。

 要は草摘みだ。根本からずぽっと抜けばいい。近くに小川が流れているおかげで、水分の豊富な柔らかい土だから抜くのも簡単。3人がかりなので、すぐに目標の半分は集まった。

 こりゃすぐに終わるなと気を抜いた。

 事件は得てしてこういう時に起こるんだよなと思い知る。


「キャーッ!」っとファミの叫びが聞こえたのは、オレとセイルが薬草を採って、まとめた束をファミが運んでいた時だった。

 小さなサルみたいな魔物が数匹、ファミに襲いかかるのが見えた。


「この下等な魔族が! 魔王の邪魔をするならば燃えつきてしまえばよいわ!」

「あっ、ちょっと待っ――」


 制止の声を上げるより早く、魔王は呪文を唱えて、そして、炎を吐き出した。広角に。

 魔物は一瞬で蒸発した。束にまとめておいた薬草もろとも。

 扇状に真っ黒になり、プスプスと白い煙をたなびかせている地面を見て、オレはファミを静かに呼んだ。


「……おい」

「ふむ。薬草というものは燃えやすいのだな。しかも、最近雨が降っていなかったのであろうな。葉が乾いていたのではないか?」

「……おい」

「バミちゃん、ごめんなさいして?」

「なんだと? なぜワレが人間の小僧ごときに頭を下げ――」

「バミちゃん、謝って!」

「なぜワレが――」

「……おい」

「バミちゃん……」

「うぐ……すまぬ……ことをした……」

「なにを?」

「いちいち説明せねばならんくらい、キサマの脳は――」

「バミちゃん!」

「……や、薬草をだな、無駄にしてしまったようだな」

「それで?」

「ほら謝って、バミちゃん!」

「……ぐ……」

「それで?」

「……す……」

「す?」

「……すまぬ!」


 魔王がオレを上目づかいで見る。ファミが悪戯した時と同じだが、その瞳には天然の媚びがない。ファミの場合はそれでついつい許してしまうのだが。


「お願い、ジェイくん……。バミちゃんも悪気があったわけじゃないの」


 卑怯だ。ファミに変わりやがった。


「仕方ないな。とりあえず、昼飯を食べるか。アレ? 昼食はどこに置いたっけ?」

「いやーっ!」


 初めて聞くセイルの絶叫が響き、慌てて駆けつけると、セイルは黒焦げになった地面を指さしていた。

 そこにひときわ黒い塊がひとつ。


「ん? 消し炭?」


 言うまでもない。食べられることなく終わった昼食が入ったバスケットのなれの果てだった。


「……オレの……人生初ピクニックが……」


 セイルではなくて勇者ががっくりと膝を折って地面を殴りつけた。


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