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2:冒険者ギルドで初仕事 その1

「町に来るのって、ずいぶん久しぶりだねー」


 ファミははしゃいでいる。親父と一緒に買い物に来たのは半年ほど前だ。あの時はファミとセイルも一緒だったっけ。


「これからどうするの?」と訊くセイルはいつもと同じく冷静だ。

「まあ、王都に行くにも食っていくにも金が必要だからな。確か、何でも屋みたいなのがあったよな」

「冒険者ギルド?」

「そうそうそれ」


 冒険者ってのはモンスターを狩ったり、旅人の護衛をしたりして暮らす連中で、ギルドはそういう連中を管理する組合だ。昔は結構な規模があったらしいが、世の中が平和になって、モンスターも激減すると、次第に冒険者も減ってきて、ギルドも衰退。今では草刈りだとか野良犬駆除、下水の清掃などなんでも請け負う何でも屋になっていた。

 まあ、おかげで俺たちでもこなせそうな仕事があるだろうってのが見立てだ。


「こんちわー」


 明るく声を上げて冒険者ギルドのドアを押し開けた。

 と、一歩踏み込んだところで建物を間違えたのかと戸惑った。なんというか雰囲気が半年前と違う。

 前はがらんとしていて、爺さんがひとりふたり。仕事依頼の張り紙がある壁には2枚ほどの紙が斜めに貼ってある。そんな感じだった。

 ところが、中には10人以上がいて、しかも、全員武器を持っていかにも強そう。壁の張り紙は争奪戦になっている。間違えたのかと思ったのも仕方ない。

 おまけにドアを開けた途端、ジロリとにらまれ、ガキかとツバと一緒に吐き捨てられた。殺伐としすぎだ。

 が、カウンターの奥に見覚えのある姿を見つけてほっとした。


「リリーさん、ご無沙汰!」

「あら、ジェイトちゃん。久しぶりじゃない」


 リリーさんは受付のお姉さんで文句なしの美人だ。金色のロングヘアはフワッと仕上げてあって、イイ匂いがする。おまけにカウンターの上に乗っかっている胸の膨らみは男たちの注意をそらしてちょっと不利な契約も結ばせてしまうという危険な香り。

 人呼んで《ヤバい谷間のリリー》――最弱のモンスター狩りのはずが、なぜか注意事項を見逃していたおかげでレベル上のモンスターと遭遇するという。


「冒険者ギルドに入りたいんだけど、どうしたらいいんだっけ?」

「ジェイトちゃん、入ってくれるの!?」


 なんかもの凄い勢いで食いついてきた。


「最近、若い子が入ってくれなくって寂しかったのよ。ジェイトちゃん、初めてよね?」

「ああ」

「だったら、お姉さんが優しく丁寧に手取り足取り教えて上げる」

「ファミも手取って足取って教えてもらうー」

「手も足もなくなってどうするの?」

「えー、セイルちゃん、怖いよー?」

「自分で言った」

「はぁ……。若くていいわねぇ……」


 かしましいファミとセイルの会話を聞きながら、リリーがため息混じりにぼそっと吐き捨てる。いつもの明るいお姉さん的な雰囲気とのギャップに思わずマジマジと見つめてしまった。視線が合って、バツが悪そうな顔をするリリー。


「なんでもないわ。じゃあ、この書類に必要事項を記入して。代表者だけでいいから」


 なんだか急に事務的になったリリーが差し出した書類に名前を書いて戻す。


「いいわ。えーっと、受けた仕事中に怪我したり、第三者に損害を与えてもギルドは責任持たないから気をつけてね」

「わかった。気をつける。で、仕事ある?」

「残念ね~。今、薬草採取くらいしかないのよ。ちょっとマシな仕事は全部取られてしまったから」

「そんなに忙しいのか? 前に話した時は依頼がなかなか減らないって泣いてなかった?」

「泣かないわよ! いやね~、それが、あの噂のせいでみんな妙に張り切っちゃってさ」

「あの噂って?」

「知らない? 魔王が復活したって」

「え?」

「ほう、もう知れ渡ったか。ワレの――」

「シッ!」

「なに、今の? ファミちゃんってこんな娘だっけ?」

「なんか最近芸風が変わったみたいで」

「そうなのー。魔王の物まねー! ワレにひれ伏せ~!」

「あはは、ファミちゃんおもしろいわ」


 リリーは笑いながらファミの髪をくしゃっとなでた。


「まー、そんなわけで、ちょっと前まではモンスター狩りの依頼をなかなか受けてくれなくて色々工夫したりしてねえ、苦労してたのに、今じゃ依頼が入ったら飛ぶようになくなっちゃうのよ」


 そう言ってリリーは壁の張り紙を指さした。

 なるほど、あのふたつ名には苦労の末の試行錯誤があったのか。

 感心しながら、ちらっとギルド内を見回すと、確かにここにいる連中は目が血走っている。魔王を退治するために強そうな同業者を探しているんだろう。まさか、ここに魔王そのものがいるなんて思っている様子はない。


「薬草採取でいいよ。いきなりモンスターもなんだし」

「ありがとうね。助かるわ。薬草は50本がひとつの単位。できたら100束欲しいわね」

「わかった。行ってくる」


 まあ大丈夫だろうと軽く考えて、俺はファミとセイルを連れてギルドを出た。


「ジェイくん、お腹すいたー」

「そうだな。よし、なにか買い込んで、仕事の途中で昼食にしよう」

「ピクニックだー」

「異議はないです」

「ピクニックとはなんだ?」

「お外でご飯食べるんだよー」

「オレは人生初ピクニックだ」

「……重いな、おい」


 そんなこんなで、よさげな店でパンや焼き鳥などを買い求め、バスケットに突っ込んで薬草がありそうな場所に向かう。

 薬草と言っても体力回復・魔力回復・治癒・精力回復など幾つか種類があり、今回の依頼は一番必要とされる怪我の回復用だ。草原から林に変わる際によく生えているため、まずは林を目指すことにした。


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