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第二話  朝から緊張! 本当に早理佳はやってくるのか?

(……うしっ)

 俺は意を決して玄関のドアを開けた。

 今日もいい天気だ。雨が降ってるとぬれて面倒だからなっ。

 俺は道路に出て早速辺りを見回してみた。

(い、いないみたいだな)

 いったん緊張はほぐれた。

(……でも。待ってたら会える、とか……?)

 この道通るとか昨日言ってたけど、続けて今日も通るんだろうか?

 このまま待ってたら、早理佳と二人で歩く時間を得ることができるのかっ?

 緊張する気持ちとやっぱ早理佳としゃべりてーという気持ちがごっちゃごっちゃに。

(うわ!)

 学校とは反対方向の道を眺めていると、あんな遠くでもわかる早理佳が登場した!

(遠くの早理佳を眺めるのはプロってますから!)

 心の中でニヤリと決めポーズしても、見てくれる人はだれもいないんだけどさ。

 あ、早理佳がちょっと小走りになった。俺はー……た、立って眺めることしかできなかった。

 小走りだった早理佳が、俺のところまでやってきてくれた。

「おはよう」

「お、おはー」

 真正面をこの近さで見ることなんて部活でもめったにないことなので、俺どっきどき。

「私を待っていてくれたの?」

「ぅえ?! あ、いやぁ~、昨日あんなこと言ってたから、今日も通るのかなぁ~? って?」

「つまり、待っていてくれたんだよね?」

「べ、別にぃ~? 見回したら早理佳がいただけだしー?」

「ふふっ、素直じゃないなぁ。いこっ」

 早理佳が歩き出したので、俺も歩き出した。


 左隣に早理佳がいる。仲は全然悪くないしむしろにこにこしゃべるけど、こう、せっかくだったらもうちょっと仲良くなりたいというか……昔はあんなに普通に遊んでたのになぁ。まぁその遊ぶっていうのも学校内でっていうだけだけど。

(でもさっ。早理佳の様子からしたら、緊張してんのって、俺だけだよな……?)

 今横を歩いている早理佳は明るい表情で歩いてるだけだ。しゃべりかけてくる様子も普通だ。昔より明るくなったかな? いや別に昔暗いってほどでもなかったけど。

「市雪くん」

「んはい?!」

 突然の声かけは緊張しますから!

「好きな食べ物は何ですかっ?」

「は、はぁ?」

 まさかのオーソドックスすぎる質問がやってきた。というか手でマイク作ってるぞ早理佳が。

「あ、あー、なんだろ。お茶漬け?」

「お茶漬け?」

「あ、ああ」

 早理佳的には予想外の答えだったのか、聞き返されてしまった。

「お茶漬けの魅力を教えてください」

 またマイクを向けられた。早理佳の手が近い。

「えーと。ご当地お茶漬けがあっておもしろい、です」

「あ、たまにご当地市とかで売っているのを見かけるよね」

「そうそう。他にも父さんが出張とかするときも買ってきてくれる」

「そうなんだ。お父さんお母さんとは仲がいいの?」

「ふ、普通じゃね?」

「そっか。お姉ちゃんとは仲がいいの?」

「どうだろー。悪くはないんじゃないか?」

「私のお姉ちゃんからね、たまに市雪くんのことを聞くんだよ」

「なんでそんな経由でっ。なんか変なこと言われてねーだろーなっ?」

 俺の姉ちゃん空元晴絵は、早理佳の姉ちゃん結本居ゆもとい 直織なおりさんと仲がいいらしい。ちなみにどっちも高校二年。同じ高校に進んだってさ。

「……冬休みのときに~、ラブレターもらったって、聞いたよぉ?」

「ちょおおお!! それいとこの子供だから! 親戚だから! 保育園児だから!!」

 早理佳笑ってやがる! かわいいけど!

「その子とお付き合い、しちゃうのかな?」

「しねえよ! てかラブレターじゃなく好きなアニメの一覧表だし!!」

「ほんとかなぁ? 縦に読むとラブレター、とかだったりして?」

「保育園児だっつってんだろーがぁ~!」

(姉ちゃんめ……許さん! でも早理佳めっちゃ笑顔だから姉ちゃん許す!!)

 早理佳が笑いながら俺としゃべってくれている。昔はこれが当たり前だった気がするけど、今こうして笑ってしゃべることができていると、なんていうか、うれしいというかなんというか……。

 そして、部活やクラスでも笑ってしゃべってる早理佳だが、今のここまで笑ってる早理佳は普段見られない気がするし……。

(俺今、やばいぐらい貴重な時間を過ごしてんじゃね!?)

「それじゃあ、他の女の子からラブレターをもらったことは、あるのかな?」

「ねぇ! ………………こともねぇ、か、な」

「えっ!? あるの!?」

 うおあ、早理佳がずいっと寄ってきたっ。

「吹奏楽じゃない、ひとつ下の学年の女子、から……」

「本当っ? その子と登校しないの?」

「つ、付き合ってない、し」

「なんで? あんまりいい子じゃなかったの?」

 早理佳ぐいぐいくるなぁっ。やっぱ女子ってこういう話したいのか?

「いや、いいやつだったとは思うけど……」

「けど?」

(ん、んぐぅぅ……な、なんでもいいからここは切り抜けねば!)

「や、やっぱ付き合うなら両想いで付き合いたいだろっ? そいつは友達にはよさそうだけど、お付き合いってなるとちょっと違うなって思ったっていうか、てかそもそもお付き合いとかよくわかんなかったし。そ、そんなのさ!」

「そっかぁ」

 早理佳は左手をあごに添えている。少しまじめな表情をしている。

「市雪くんは、ラブレターを受け取っても、好きじゃなかったら断っちゃうんだね」

「そ、そういうもんじゃないのか?」

「うん、市雪くんならそういう人だなぁって思って。もしかしたら好きじゃなくてもお付き合いを考えるのかなって、ちょっと気になっちゃった」

「ないない。でもそういう手紙をくれたなんてそいつだけだから、正直付き合った方がよかったんかなっていうのも、ちょっとは思うけどな」

 だってこんな俺なんかにさ。そこまで想ってくれてさ。もし俺だって、そういう手紙出して断られたら、ショック受けるだろうし。

「市雪くんは、好きなタイプの女の子って、どういう子かな」

「好きなタイプぅ?」

 んな話だれともしたことねーよっ!

(ん、まぁ質問者は早理佳だし。特別に考えてあげよう)

「んー、そうだなー……」

 ちょっと考える。

「……気の合うやつ、かな」

「気の合う?」

「ああ。一緒に楽しめるやつっていうか。しゃべってて気が合うっていうか。ずっと一緒にいててもずっと楽しいって思えるような、そんなの?」

「へぇー」

 早理佳の表情からして、この話は楽しそうらしい。

「そ、そういう早理佳は、好きなタイプとかあんのかよ」

「私? 私は~」

 俺、早理佳となんちゅー話をしてんだろう。

「……私も、楽しい人がいいかな。積極的に楽しいことを一緒にしてくれるような人」

 女子ってどういう男子が好みなのが一般的なのかとか全然知らないけど、早理佳は俺と似たような好みってことなんだろうか?

(そ、そもそも俺女子をそういう目で見たことない、と、思、う、けどさっ)

 早理佳がちょっとこっちを見てきた。

「どんなに一緒の時間があっても、どんなに離れた時間があっても、しゃべればやっぱりいつも笑い合えるような、そんな人がいいかな」

 てことはつまり。

「漫才師の人とか最強ってこと?」

「あはっ、どうなのかな。でも人を笑わせることができる人はすてきだと思うなっ」

「ふーん」

 俺は別にそこまで笑わせスキルみたいなのないしなぁ。津山みたいなのがタイプってことなのか? でもあいつはどっちかっていうと盛り上げるの中に笑わせるが入ってるようなやつだし……んーむ?

「それじゃあ市雪くん、また後でね」

「んあ、ああ」

 気づいたら曲がり角までやってきていた。ついつい早理佳との話が盛り上がってしまったぜっ。

(早理佳としゃべってると……楽しいな)

 また明日も早理佳としゃべることはできんのかな。



 今日は午後の授業の時間が体育館で部活紹介の時間だ。俺たち吹奏楽部の三年生は演奏頑張った。

 部活紹介の後も部活見学の時間があり、演奏したかいがあったのか、見学に来る一年生は昨日より増えたと思う。昨日に引き続いて来てくれた一年生もいて、露音の弟である隼人も来てくれた。


 帰りの点呼が終わり、楽器を片付けた俺は音楽室から出た。やっぱり早理佳はパートでおしゃべりしてた。

(べ、別に俺がサックスパートのみんなと仲悪いわけじゃないと思うけどなっ)

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