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飢えないだけじゃ生きられない(日・水・更新中)  作者: なるねこ


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29/89

29.会話が出来た

その瞬間、周囲が眩しい光に包まれて何も見えなくなった。


『挨拶が遅くなってしまったね。私は――いや、君は私を見ようと意識を向けて倒れたことがあったかな。詳しく紹介するのは止めておくね。私のことはエス、とだけ呼んで欲しい。ようこそ、()()()へ』


目を開けてみたはずだけど、真っ白な光に埋め尽くされて自分の姿も見えない中、頭に声だけが響く。

脳裏に何かが思い出されそうだ。最初のダンジョンで初めて鑑定に挑戦した時、見た?いや、見た、かもしれないナニカ。


『ここはね、君の認識でいうと”あの世”の1つに当たる場所だよ。君は、正確には死んだわけではないけれど、その予定だったから来てもらったんだ』


『あなたが、私をこの世界へ落としたの?』


『そうだよ。君があの日買い出しに行った店の陰にはね、とある男性が隠れていた。君は、そこを通ろうとして、背中から刺されて亡くなる予定だった』


彼女を刺した男はそのまま人通りがある方へ向かい、出会う端から襲っていって、4人目ともみ合っている途中で人が呼ばれ、逮捕される予定だった。

2人殺害1人未遂1人暴行の中の最初の1人が死亡から行方不明に変わった以外、その後の流れに変化はなにもなかったそうだ。


なお、他の被害者が居ないかと周囲を詳しく探された一環で、パソコンと部屋の明かりを点けたまま消えたチョーコは予想よりずっと早く行方不明として手配されることになったらしい。


死んで転生するという小説もよくあったけど。エス曰く、魂の状態でこの世界に落ちるのは通常通りの流れで、単純にこの世界の人間として誕生するだけ。そもそもこの世界の生き物は様々な世界で死んだ魂や力が零れ落ちてきたものから生まれているという。


この世界もまたもっと大きな循環の一部でね、まぁその話は今は置いておこうか。と。


落ちものとして、魂ではなく生きたまま連れてきてこの世界に合う身体にする必要があったから、直後に死ぬ予定だった彼女を選んだという。


『どうして、私をここへ落としたの?何も説明とか、何かをしてほしいって頼まれた覚えもないけど』


『君を呼んだ目的はね、もう既に達成しかかっているよ。うん……本当に君はとてもよい働きをしてくれているから、このまま好きに過ごして欲しい。

この世界は君も知っての通り、局所的には魔力と瘴気の繰り返しという巡りがあるが。全体的な流れを作るために、魔力を持つ生き物が色々な場所へ移動する必要があるんだ。

この世界にとって、好奇心や欲望が強く、様々な環境へ足を踏み入れられる適正を持つ人間種は、全世界を回る活動をするのにもっとも適していて。彼らが世界を動き回ることは、血管が身体に血を巡らせるに等しい重要な行い――だったんだ』


世界を作った当初は、魔獣や亜人に追われながらも人間は世界中を旅してくれて、うまくいっていたけれど。

全てが危険地帯で旅することに苦しんでいた人間のためにと、安全な地域を作ったのが間違いだったのか、そこを見つけた人間達は次々に定住して動き回ることを止めてしまった。


本来は、子育てなどが出来る安全な拠地を確保した上で、心置きなく人間たちが世界を行き来するようにと作ったつもりだったのだけど。木の粉しか食料が無い環境にも適応してしまった人間たちは、ほんの数日の探索すら危険だからと止めてしまうようになったという。


『死んだ後まで、ひもじい思いはしてほしくなかったんだよね……寝る場所と最低限の食べ物だけは、楽に確保できるようにと思っただけなんだけど』


ここ数百年で、人間の集落はどこもかしこも、楽で安全な引きこもり生活に落ち着いてしまったそうだ。


人間の住処が近くにないダンジョンは枯渇し始め、近いが人の訪れないダンジョンはダンジョンブレイクを起こし、新たな獲物の来ない地は枯れかけ、海は流れ込むままに腐りかけ、まだ見に行けていない地域でも様々な問題が起こりかけているという。


一度死んでしまった土地を復活させる、というのは死者の甦生に近い。

死んでしまう前に手を打たねば。急ぎ、彼らが再び世界を旅することを促すようにしなくてはと。


緊急措置として、人間たちの国の中で一番野心家の王の所へ隷属の石なんてものを落としてみたら、狙い通り世界の支配を決意したまではいいものの、すぐに出兵ということにはならなかった。

人間以外の人族も全て支配するために、人族の頂点に立つような人間を生み出せるようになってから、なんて大きすぎることを考えてしまった。


戦争目的でも構わないからすぐに動き始めて欲しかったのだけど上手くいかず。

しかし一つの国にだけ新たな落ちものを次々与えたり、複数の国に強力な落ちものを与えるのも後々を考えるとよろしくない。


なにか、この世界には何かもっと、新たな風が必要なのだと思った時。たまたまこの世界に接近していた君が居た世界、そこに今まさに死にそうな魂があることを知って、これだと思って落とした結果。


『想定以上だったよ、感謝している。君は――戦争のような一時的な行動に留まらないように王の意識を変え、人間たちの好奇心を大いに揺さぶり、外への興味を思い出させてくれたね』


そんな大それたことを考えてたわけではないけど、良い方向に向かっているならいいのかな。

『……このまま良い方向に流れてくれるならいいんですけど』


『さて君は、何をもって”良い”とするのだろうか?君の身体は既に、この世界に落ちてきてしまったから、戻すことは私の手をもっても出来ない。ただ、君がこの世界に生きていく上で望むことはある?』


少し考える。

パッと言われて思いつくことは特にない。この世界の人たちや、彼のこと。大事なものは出来たから、もう帰れないと言われても、この世界で改めて生きていければいいとは思ってる。


ただ。やっぱり


『日本レベルの美味しいご飯が食べられるのはどのくらい先になりますか……』


『ふふっ』

『ちょ、笑いごとじゃないんですよっ?!』


『そうだなぁ。正直全く同じレベルまでいつかは辿り着けるかと言われたら、分からないと答えるよ。でも夢として追うことは出来るし、そこに近付くことが君にとっての”良い方に進む”なのだとしたら、手助けはしたいと思う。

まず君が時々読んでる情報にもう少し食料関連を増やしておこうね。もう一つくらい、何か欲しいかな』


『世界を人間達が移動するって、テレポートで移動したとしても意味があるなら、魔力の少ない人間でも使えるような”転移門”とかがあるといいかなーって。各地で色々なものが手に入るようになるとしても、やっぱり日持ちしないものだってあると思うし、そういうのを私が全部運ぶとか絶対ムリなんで』


『あぁ、その発想はとても面白い、やっぱり君は新しい風なんだなぁ』

若干、エスの声が遠くなる。


そろそろ時間切れみたいだ。君と直接こうして話すことはもうないかもしれないし、またどこかで話せるかもしれない。でも、私はこの世界のどこにでもいて、何でも見ているからね。


君が向かいたい方へ行くがいい、自由に吹く風よ。


幸せになれ――


――ふと、手に持った石は綺麗な石のまま手の中にあって。

眩しいほどの光の中から戻ったにしては、目がくらんだりもしていなくて。


「えーっと、チョーコ?その石がどうかしたの?――ねぇ。ぼーっとしてるけど、大丈夫?」

心配そうな彼に抱えられた状態で、さっきより少し高度は下がってて海面が近い、というところまではいい。


2人の下にいつのまにやら、パンくずに集まる池の鯉や公園の鳩くらいの密集具合で集まっている数百人の魚人族たちが居て


思わず悲鳴を上げて手の石を投げてしまった。


――と。

海の中から鮮やかなスカイブルーの鱗を持つ魚の下半身をもった1人がイルカのように高くジャンプして石をキャッチ。


海中に波も立てずスルリと滑り込んだ後、足元の魚人たちがすーっと左右に分かれ、彼女が上半身を海面に出して、さっきの石を捧げ持つように両手で差し出してきた。


わらわはこの辺りの魚人族を統べている長です。この地を作りし尊きエスの吹かす風よ」

彼女の言葉に倣うように、左右の魚人たちも胸の前に両手を合わせる。


「え、え、拝まれてる?なんで?!」

「おふたりが妾たちの怨敵たる『巨栄の水獣』を見事打ち取る御姿を見ておりましたら、この石を手にしたところで尊きエス直々にお声を掛けられておりましたでしょう?殆どのお言葉は聞き取れませんでしたが。それだけは感じることが出来ました」


私が石を掴んだ瞬間を見ていた魚人たちも、テレパシーで何か聞いちゃったってことかな?


「チョーコがあの石を掴んだ瞬間。確かにチョーコの周りで魔力の爆発みたいなものが見えたけど。何があった?」

「えっとね。エスはこの世界の存続のためには、魔力の循環のために世界中をあちこち動き回ってくれる人が必要で。安全地帯に引き籠るようになっちゃった人間達の好奇心とか欲求を引き出すには新しい風が必要だと思ったから、私をここに落としたんだって」


ざわざわと魚人たちは興奮気味で、好意的に目を輝かせているが。


「それ初めて聞いたよな……今更なんだっていうんだ?」

オクティの表情が思ったより怒り寄りになってて、ちょっと驚く。

「えっ?えーと……私は私が思う方向に自由に吹いたらいいって。それで、今のところ世界にもすごく良い影響が出てるから感謝してるって」


オクティは何か考えに耽っている顔で、視線を合わせてこない。

「……オクティ?何か怒ってる?」


「たまたまじゃなくて、エスにはちゃんと意志があって、わざと落としたってことだよな?……それなのに、ここまで何も説明なしで放っておいた?チョーコは恨んだり怒ったりしないのか?チョーコがこの世界のために苦労しなきゃいけない理由なんて無かったよね」


「あ。うーんと。たまたま、ではあるみたいなんだよね。私、ここに落ちて来なかったら、通り魔に刺されて死ぬ予定だったんだって。丁度私の居た所がこの世界の凄く近くに来てたし、今死んで落ちてくるのならって、死ぬ前に私を呼ぶことにしたって言ってた」

「……」


「勿論それが本当かどうかなんてわからないよ?でも、この世界は他の世界で死んだ魂とか落ちてきたもので出来ていて。もしあの時に落とされなくてただ死んでたら、魂だけここに来て、何も知らない普通の赤ん坊として生まれ変わってたって。……だけど、それじゃあ私は”私”としてオクティに会うことは出来なかったってことだもんね。だから、あの時そのまま落とされて良かったんだなと今は思えてるの」


「……魔力の相性は魂の相性だっていうから。もしかしたら、俺と番わせるために産まされていた子供の1人になってたかもしれない?」


「うん……多分だけどね。どんな形だったとしても、私はきっとこの世界に来てオクティと出会うことは出来てたって何となく思ってるし。そうやって生まれ変わって出会ったとしても、オクティはきっとその私も大事にしてくれたんじゃないかな。でも、それって”私”にとっては、私じゃないの」


「そうやって生まれてたなら、何の説明もないのが当たり前だし……そう、だな。死んで生まれ変わらずに、そのままのチョーコが俺の所に来てくれたってことなら……それは、嬉しい」


「そうだよ。この世界のために働くって、都合の良いように使い倒されるような人生だったら絶対にいやだけど。いろんな便利な魔法も使える身体だし、私の好きに生きてくれとしか言われてないし。――たぶんちょっとトラブルに巻き込まれ易い体質だったりはありそうだけど、その時はオクティも助けてくれるでしょ?」


食い気味にぎゅっと抱きしめられる。

「死んでも助ける」

「いやいやいや、オクティは死なせないけど……ありがとう」


「尊きエスの風様とそのつがい様。妾たち水の一族は、世界を吹き流す大いなる旅路の一助になればと思っております」


はっ。めちゃくちゃ注目浴びてたんだった!

「あーっと、えっと、ごめんなさいっ。ずっと持たせっぱなしで!」

未だに差し出されたままだった石をようやく受け取った。

「ふふ、おふたりの仲睦まじさと尊きエスの御心の一端を知る栄誉を頂き、この上なき喜びですわ」


「はうう、えっとですね、恥ずかしいので!もっと気楽に接してくれるとありがたいですっ。とりあえず私の呼び名はチョーコでおねがいしますっ!」

「分かりましたチョーコ様。――して、陸に登っていた者たちから聞いたところによれば。数多の地を巡るにあたり、人間族と他種族との通訳として、我らの一族からエルフ種を借り受けたい、とか?」


「あっ、まだ思いついただけというか、人間の長に話を通してないんですけど、そうなんです!今、人間が他の人族とほとんど交流を持ててないのって、お互いの言葉が分からないせいも大きいのかなと思っててですね」

「確かにそれは大きい要因でしょう」


「せっかく色々な国を回るのなら、色んな人達と喋って、食材とか素材とか芸術品とかお互いの欲しいものを交易したいなって。そう思ったら、テレパシーの使える通訳が必要かなって思ったんです。でも、魚人の人たちって、ちょっとならともかくあんまり長く水場から離れるのはつらいですよね……」

数多あまたな種族との友好的な交易。それが本当に成されるならば、妾たちとしても望ましいことです。そういうことであれば『海の石』を集め貯めておきますわ。それを身に着けさせれば、水の魔力が少ない地での長旅にも耐えますし。火の地だけはあまり長くは居られませんけれど。まぁ多少は気合で乗り越えられましょう」


「き、気合い……えっと、ありがとうございますっ!ちなみに魚人の人たちって、人間と取引するなら何が欲しいとかってあるんですか? 例えば、こういう衣服とか、火の魔力で加工した食べ物とか……」

「火で加工した食べ物、それは是非取引したいですわね。衣服に関しては……そのひらひらとした見た目は優美と思いますけれど、なにぶん妾たちはよく泳ぐもので、布では少々具合が悪く……聞けば、美しい金属や宝石で出来た身に着けるものを人間は喜ぶそうではありませんか?それがとても気になりますわね。あとは、木製品は浮いてしまって煩わしいので、器や道具類は金属や石製のものに限ります」


言われてみれば、服着て泳ぐって大変だもんね。金属加工にも火は必要だし、彼女たちがわざわざ服を着ないのは、水中で着られるものがないしそれで特に困っていないからか。


「水の中でも使いやすいものと、火で加工した食べ物ですね」

「妾たちが出せるものはそこの砂浜に、少量ずつですが一通りお運びいたしますわ。そちらは全て差し上げますので、その中で取り寄せたいものがあればお言いつけ下さい。浅瀬でよく見るものは省きましたが、勿論それらが必要でしたら集めますわ」


「ありがとうございます!――あ、湖の魚人さんたちは、帰りは自分で戻れますか?送りましょうか?」

「おほほほ、そのように甘やかされては困りますわチョーコ様。どうぞこれ以上お心に掛けませぬよう。魔獣との戦いを避けるあまり水を涸らしかけるなど、愚かの極み。この者たちはしっかり鍛え直してから自力で湖へ戻らせますから」


ぴしゃりと女王様に笑顔で突っ込まれ、後ろでしょんぼり小さくなっているのが湖の人たちだろう。

「あ、あはは、わかりました」


荷物を運ぶと言われた砂浜を見ると……少量というわりには大きな山が出来つつあった。


「お世話になりました。通訳の件は、その時が来たらお願いします」

「尊きエスとチョーコ様の御心のままに」


びっしりと海中に浮かぶ魚人たちに手を振って見送られながら、お土産を持って自宅に戻る。


***


一方その頃、時は少し巻き戻り。


遠征隊はいつも帰還後丸1日の休暇、つまり街で2泊したらすぐにもう一度出発するのだが

魚人たちを連れ帰った次の日。休暇日の午後に突然、遠征方針の修正をするという伝令が出された。


『人族とはすべからく力と知恵を持ち貴き種族である。

 侮られてはならない、しかし敬意を持って接することを命ずる。

 武力制圧よりもまずは交易による永続的な利を生む手段を模索するべし』


これまでの武力を厭わず征服せよ支配せよ隷属させよという方針からいきなりそんな方向に。


「あの皇帝からこんな発令が?……いや、印も本物っぽいな。まじか?一体どうしたってんだ」

水色の髪をした冒険者組合の組合長は、巻物にされた文章を何度も読み、伝令と巻物を交互に見る。


顔なじみの伝令の青年は、ちょっと得意げな笑顔を浮かべた。

「えー、ここは非公式な発言とさせて頂きたいのですが?」

「おっ?さっすが!何か知ってるなら教えてくれよ」


「ほら、昨日連れてきた魚人の娘たち、綺麗な白の髪だったじゃないですか。皇帝が3人とも独り占めで囲っちまったんですが。どうもその中に魂の相性が合う子がいたみたいだってメイド達が話してました」

「ほう?」

「まぁ最初はいつもの調子で手荒に扱おうとしたんで、泣かせてどうにもならなかったらしいんですけどね。例の異国の冒険者から魚人の扱い方を聞いてその通りにしたら、コロッと懐いてたっぷりお楽しみになられたそうで」


「なるほど?んで、それがどうこれに繋がるんだ」

「遠征の再出発がもう明日なもんで、その子たちが居る席で報告やら相談やらすることになって。他の集落を見つけたら制圧やら隷属やらって話を聞いたら、その子たちが争いは嫌だ怖いって泣き出したそうで。他の種族と戦争しないで、仲良く平和な取引をしようよってお願いしたら、皇帝がアッサリ飲んでその声明文を出した――ってことらしいっすよ」


「そいつぁまた、すっかり骨抜き……だな?ちょいと信じがたいが、もし本当に魂の相性のおかげってんなら、正にエスの采配した運命ってやつかもしれねぇなぁ。他の人族を隷属させて奴隷になんて、無茶言うなよって話だったし」

「最終的に皇帝が命じたら聞くっきゃないので諦めてましたけどねぇ。傾国の美女ならぬ建国の美魚を見つけたって城じゃ評判ですよ」

「ははは、違ぇねぇ!あとはその子たちを傾国にしちまわないように、変なこと吹き込むやつが居ないか見張っとかねーとな」


「その辺は宰相がめちゃくちゃやる気出してましたし、なんとかなるんじゃないかね」

「あぁ、そいつは逆に、教育を厳しくしすぎてその子たちに嫌われないか心配した方がいいか」

「確かに……戻ったらちょっと伝えときます。では」

「おう!おつかれさん。今度一緒に()砂糖茶屋へ茶ぁ飲みに行こうぜ」

「うお、流石組合長、ご馳走になります!」

「俺の奢りかよ、まぁいいか!」


白砂糖の摂り過ぎは魔力暴走の原因になると貴族のみ使用制限付きとされていたのだが。量を適正に調整すると魔力酔いの症状で楽しく飲めると発見されて以来。

バーのような扱いで砂糖茶屋が開かれることとなった。


その発見のきっかけになったのは1人の男性。魔塔の交配実験の3代目として生まれたものの、基準値より魔力が少なく、娘ばかりで息子のいない貴族家に赤子の時点で養子として引き取られた彼は、後になって魔眼もちが判明。

しかし貴族として生きるなら使い道がないなと、ちょっとした特技程度に思っていた。


貴族家に連なるため、入手を許された白砂糖を家族で楽しんでいた際。魔眼で見ていると魔力酔いの適量の判別が出来ることに気が付いた。


砂糖を溶いたワンショットの茶を飲んでもらい、様子を見て、酔える量ギリギリの白砂糖を小さなピッチャーに入れて渡す。

客はそれを色々な飲み物に混ぜたりしながら飲み。砂糖の追加や他人とのシェアは禁止で自由に酔いを楽しむ。

これが大流行することになった。


白砂糖茶屋は貴族のみの入店制限で運営され、魔眼もちのマスターが必ず判断することを義務付けられているが

庶民の中でも『黒砂糖』を多く使った()砂糖茶屋が次々と増えた。

こちらは正確な診断が先に出来るわけではないので『酔っぱらったらそれ以上飲まない』というふんわりしたルールが敷かれて運営されている。


魔力暴走事故が起きたら正式に監査が入って営業規制されてしまうと言われているため、今のところは互いに注意し合って、安全に楽しまれているようだ。

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