⑦
それからの話を少ししよう。
王立学園の高等部に進学した姉を待っていたのは馬鹿王子とアリスの猛烈アタックだった。
「僕は今まで、悪魔に魅了されていただけなんだ。本当に愛しているのは君だって気がついた!俺の妻になってくれ!婿入りでもいい!君のためなら王座も捨てていい!」
ルーカスと姉は無事婚約を解消した。しかし解消を続行したのは姉の方で、ルーカスは再び姉と婚約してもらうために勉学、スポーツ、交友関係いろんなことを磨いている。俺にとっては違うのだが、彼が馬鹿王子と呼ばれることはもうない。立派な次期王と期待されている。
「はぁ?引っ込んでいてくださいルーカス様……。お姉様!お姉様!困っていることはありませんか?お姉様の安寧のためならルーカス様だって暗殺して差し上げます!どうかどうか、アリスを使ってください!」
本来の自分を取り戻したアリスは、自分を助けてくれた姉を「お姉様」と慕い、追い回している。勉学に勤しみ、その成績は努力をしているルーカスを凌ぐほどであるが、その心酔ぶりから学園では残念才女と呼ばれてしまっていた。
あの卒業パーティー以来、ルーカスとアリスは姉の美しさに心酔してしまった。子犬のようにまとわりついてくる二人に、俺は一つため息をついた。
「あの、二人とも……俺、ノアです」
姉の顔で、姉ではない話し方をしだす俺に、二人はあからさまにがっかりした表情を浮かべた。
二人の処理が面倒になると、姉は俺に制服を交換させて逃げていく。ああ、最後に自分のブレザーに袖を通したのはいつだろうか。
「ああ義弟よ!一体リリィはどこにいるんだ?!未来の義兄さんに言ってごらん。ほら、いつも言ってるだろ?義兄さんの胸に飛び込んでおいで。なんでも聞くぞ。主にリリィのことを」
「ルーカス様。義弟って呼ばないでください……」
「は?ノア様なの?!いつも言ってますよね?この学園でお姉様の妹は私だけでいいんだから。貴方は性別だけでお姉様ファンクラブから黙認されてるんだから。いい加減その紛らわしい女装はやめてくださいよ!」
「アリス、何そのファンクラブいつの間にできたの?」
姉は嫌がる俺に度々女装させて、二人の猛追からのらりくらりと逃れている。本当にもういい加減にしてほしい。おかげで俺はいつも、この二人を引き連れて、姉の格好で練り歩くことになってしまい、あげくのあてには変態三人衆なんて呼ばれてしまっている。
姉は、とんだ人たらし。もしかしたら善良な聖女でもなんでもなく、稀代の悪女なのかもしれない。これからの三年間を思うと、なんだか頭が痛くなってくるようだった。
End




